713 【真・結城編】みんなのおかげ
七百十三話 【真・結城編】みんなのおかげ
えー、皆さんこんにちはダイキです。
今日は待ちに待った結城と遊びに行く日で、ただいま映画に来ております。
それにしてもあれですね。 見栄やプライドを捨てるとこんなにも楽しいだなんて……
◆◇◆◇
オレたちが観ている映画のジャンルはホラー。
日本の幽霊たちが海外のゴーストたちに『根暗』と馬鹿にされた結果、格の違いを見せに向かうというなんとも斬新なストーリーとなっていた。
『ナ、ナンナンダYOUタチハー!! ゾンビ隊ダケデナク悪魔隊マデモガ……コンナ簡単ニヤラレルダナンテー!!』
『悪魔? ゾンビ? 知らないわねぇ。 【伝説の七不思議】と呼ばれる私たち……特に私、トイレの花子様をナメてかかるからこうなるのよ!!』
『ギャアアアアア!!! 逃ゲローーーー!!!!』
『あはははーー!! 逃がさないわよー! あーそびーましょおおおおおおお!!!!』
トイレの花子さんを筆頭に日本人形ちゃんや人体模型くんたちが勢いよくゴーストたちへ突撃。
そんな彼女たちの急襲を受けたゴーストたちは次々と彼女たちの手によって数を減らしていた。
「ふ、福田……くん。 どうしたの?」
劇場内に爆発音や叫び声などが響き渡る中、結城が小声でオレに話しかけてくる。
「ごめん結城さん。 あまりにも怖すぎて」
「そ、そうなんだ。 でもその体勢……ちょっと恥ずかしいな」
オレが結城にしていること、それは……
「ふ、福田……くん。 恐くて抱きついてくるのはいいんだけどその、おっぱ……んん、に、顔が当たってる」
「エ? なんて? ゴメン映画の音声で聞こえナイや」
「そうなの? じゃあ仕方ない……のかな。 でも福田……くん、顔を押し付けるのだけは、フニフニ……しないで」
あっひゃああああああああ!!!!!
こんなに堂々と結城にセクハラ出来る日が来るなんて最高だぜええええええ!!! 至高の感触……マシュマロすぎるんじゃあああああああああああ!!!!
ホラージャンルを選んでくれてありがとう結城!!!!
オレの変態ゲージは既に臨界突破。
今まではグッと理性を抑えて我慢してたからな。 オレは更なる変態行為を求めて次の欲望行為へと移行した。
「結城さん」
「な、なに?」
「怖いから手も握ってくれる?」
「手? う、うんいいけど……でも福田……くん、抱きついてるから握れないよ?」
「あー、確かにそうだね。 だったらそうだな、結城さんの手の温かさを感じれたら安心するから……頭を撫でてもらえたら嬉しいかも」
「頭を? う、うん。 こう……かな」
結城がゆっくりと腕を上げて手のひらをオレの頭部へ。
小声で「よ、よしよし……恐くない、よ」と囁きながらオレの髪を優しく撫でる。
ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!
女子小学生……JSの魅惑の感触を味わいながら「よしよし」されてるよおおおおおおおお!!!!!!!
まさに癒しのフルコース!!! こんなことしてもらえてるのは世界中……いや、銀河中で考えてもオレだけなんじゃあああああ!!!!
「福田……くん、どう……かな。 安心できてる?」
「うん安心出来てゆ」
その後オレは一応視線を横目ではあるがスクリーンへと向けながらドタバタホラーバトルコメディを堪能。
全年齢対象だったのにも関わらず所々結構怖いシーンなどが散りばめられており、その度に結城は身体をビクッと反応。 オレの頭をギュッと抱きしめていたので、数回オレは天へと召されていたのだった。
◆◇◆◇
「こ、怖かったね福田……くん」
「そうだね。 でもオレは結城さんのおかげで怖さ半減してたから助かったよ」
「わ、私も。 福田……くんがいてくれてよかった」
「うん。 それは本当に嬉しいんだけど、結城さん」
「なに?」
「そろそろ手、離してくれていいんだよ? もう映画館の外なんだし」
「え? あっ……」
そう。 結城はなぜか映画館の中から今に至るまで、ずっとオレの手を握っていたのだ。
オレの言葉を受けた結城はハッと我に返り、「ご、ごめんね暑かったよね!」と謝りながら手を離す。
「ううん、別にオレは構わないよ。 途中まではまだ結城さん、怖さの余韻が残ってるのかなーって思ってたから」
「あ、ありがと。 でもなんでだろ……、福田……くんの手を握ってたら安心してた」
頬を赤らめた結城が恥ずかしそうにオレから視線を外す。
「ーー……」
「ーー……」
おいおいなんだ、可愛いんですけど。
しばらくの間オレはそんな可愛さ満点の結城をガン見。 どうしてそんな勘違いしそうな言葉をわざわざチョイスしたのかを考えていたのだが……
ハッ!!
ここでオレの脳が反応。
もしかしてこれが……恐怖体験などで心拍数が上がり、それを脳が『恋』だと誤認識してしまうという伝説の【吊り橋効果】というやつなのではないか!?!?
改めて結城の表情を確認すると、未だに頬が若干赤い。
これはあれだ……真の恋人になることは叶わないが、この【吊り橋効果】という魔法が解かれるまでの間は恋人気分で楽しめるかもしれないぞ。
どうせ今後体験出来ない可能性もあるんだし、この状況を楽しんでもバチは当たらないだろう。
「ふ、福田……くん?」
ジッと固まっているオレを不思議に感じたのか、頭上にはてなバークを浮かばせた結城が首を傾げながらオレに顔を近づけてくる。
「どうしたの? なんか前にもこんなことあったような気もするけど……私の顔、何か付いてる?」
おおおお!!! 近い!!! 結城の顔が近いぞ!!!
ということはまだ結城は絶賛魔法にかかり中!!! 結城の反応を見つつ、魔法が解けそうな……然るべきタイミングで退けば問題ない!!!
オレは今日少しだけでも彼氏気分を味わってやると固く決意。 一度離れた結城の手を掴んでグイッとこちらに引き寄せる。
「え、えええ!? 福田……くん!?」
結城が目をまん丸に見開きながら掴んだオレの手を見つめる。
手を振り払わないってことは嫌がってないってことだよな!!
いける……いけるぞ!!!
魔法の効力を実感したオレは早速行動に移ることに。
こうしてオレの擬似恋人体験の時間が始まったのだった。
「ねぇ結城さん、結城さんは前にメールでお母さんが元気になったから思いっきり楽しみたいって言ってたよね」
「う、うん」
「じゃあこんなところでジッとしてたら時間が勿体無いよ! さ、あっちに雑貨屋さんがいっぱいあるから行こう!!」
「う、うん!!」
まるで側から見たら小学生のカップルなんだろうな。
オレは存分に結城との時間を楽しむことに。 そしてその最中、いろんなお店を回ったり結城と話しているその合間合間で色んな人から知識や経験をもらっていたことを実感していたのだった。
「うわぁー、見て福田……くん。 私も高校生とかになったら化粧とかするようになるのかな。 化粧品を持ち歩くのって憧れるよね」
結城が目の前に並ぶ化粧用品を指差しオレに笑顔を向けてくる。
「そうだね。 でもお願いだから結城さんはヤンキーにならないでよね。 前に……あれはいつだったかな、一瞬とはいえダーク化しそうになったことあったんだし」
「ダーク化?」
「い、いやこっちの話」
「でもあれだなー。 私、結構不器用だから化粧下手だったらどうしよう。 途中で化粧崩れても、上手く直せるのかな」
「あー、それなら『メイクキープミスト』ってやつをファンデーションに混ぜてから肌に塗ったらメイク寄れがなくなるらしいよ」
「そうなの!?」
「うん。 まぁ聞いた話だけど」
このメイクや化粧品に関しての知識は優香やギャルJK星のおかげ。
「そうなんだー。 混ぜて塗るだけなら私にも出来そう……かも。 教えてくれてありがと」
「うん。 ただアイライン引くときとかは器用さが求められるらしいから、結城さん練習しないとねー」
「むぅー。 今はファンデーションの話してたのに。 不安にさせないでよ」
この軽く煽って突っ込ませる流れを身につけさせてくれたのは三好のおかげ。
「あはは、ごめんごめん。 でも結城さんは元々が可愛いんだから、そんな化粧で悩まなくても大丈夫だと思うよ」
「えっ、私?」
「うん」
「そ、そんなことないと思うけど……その、ありがと」
「どーいたしまして……でいいのかな?」
「ふふ、うん」
こうやって女の子扱いしながら会話するスキルを身につけさせてくれたのは西園寺や茜のおかげ。
「よし、じゃあ次あっち行こうか。 ここはまだオレたちには早いよね」
「あっち? 何があるの?」
「本屋だよ。 映画館向かってる時に一瞬見えたんだけど……ちょっとエッチめの雑誌見かけたんだウヘヘ」
「え、ええええ!? エ、エッチめの!? そ、そんなの今日はいいよぉ……」
「とか言っちゃって。 結城さんも興味あるの知ってるんだから。 ほら、行こう!」
「ええええ、福田……くんーーー!?」
この絶妙に強引なエスコート術はエマのおかげ……エマと過ごしたことで身についたんだよな。
「ま、待ってよ福田……くん! わ、私は恥ずかしいからいい……!」
「えー? お願いっ!」
「や、やだよぉー」
「お願いっ!!」
「う、うぅ……そんな困った顔で見ないでよ」
はい、これは言わずもがな癒しの天使・エルシィちゃんやマドンナ・水島の【甘え顔】と、ドSの女王・小畑が無理を通そうとする際によく使う【何度もお願い】の複合技ですね。
「よーし! じゃあ決まり! だったら行こう! すぐ行こう!!」
「もう。 福田……くんは、どこでもエッチだね」
その後もオレは褐色少女・陽菜から学んだ終始笑顔に努めて相手を不安にさせないというスキルや、相手の話に相槌を打ちつつ話題を追加して更に膨らませていくという多田の相槌スキルも披露。
皆のおかげでそれはそれは楽しい時間となり、気づけば夕方……オレと結城はまだ遊び足りなさを感じながらも帰路に着いたのであった。
「じゃ、じゃあ私こっちだから。 今日はありがと、福田……くん!」
最寄駅に着いたオレたち。
オレとは逆方向の結城が小さく手を振りながら満面の笑みをオレに向けてくる。
「オレも楽しかったありがとう。 また誘ってくれたら嬉しいよ」
「え、いいの!?」
「もちろん。 あ、お母さんにもよろしく」
「うん、ありがと! バイバイ!」
早く今日の楽しかった出来事を母親に話したいんだろうな。
結城はオレに背を向けると元気よく家の方向へと駆けていく。
「あーあ、案外長く続いてたようだけど、明日には魔法……解けちゃうんだろうな勿体ねぇなー」
オレは結城の姿が見えなくなるまで見送った後、途中コンビニで優香とギャルJK星の夜食用グミやジュースを買い、家へと帰宅したのであった。
◆◇◆◇
「ただいまー」
玄関を開けるとちょうどトイレから出てきたギャルJK星と目が合う。
「おー、おかえりダイキ。 てかそれなんだべ?」
「これ? フフフ、これは星さんとお姉ちゃんが今夜も遅くまで勉強するかと思って夜食買ってきました!!!」
「おおおおお!!! マジかダイキ!!! ありがとーー!!!」
「うん。 夜でも外出たら暑いもん。 これで無駄な体力使わないで済むね」
「こりゃー先を越されるわけだわ」
「ん、何か言った?」
「んーにゃ、こっちの話さ! ほら、ダイキも暑かったべ!? リビング超涼しくなってるから一緒に極楽世界へ向かおうぜぇー!」
「うん!!!」
ていうかあれだな。 まず何よりも、この身体に転生させてくれた神様に一番感謝だぜ。
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