710 【真・結城編】オレ、動く!【挿絵有】
七百十話 【真・結城編】オレ、動く!
『中に入れられるって……どんな感覚なのかしらね』
朝のホームルーム前にエマの口から発せられたドエロい発言。
それだけでもハクション級なのだが、何故か結城までもが顔を赤らめながら振り返り頷いてきたもんだからオレの興奮は計り知れないものとなってしまっていた。
◆◇◆◇
「な、なんだと!? 結城さんが言い出したのか!?」
休み時間、エマから詳細を聞いたオレは騒がしい教室の中で小声で叫ぶ。
「シーっ! もうちょっとリアクション控えなさいよ! 他の子達に聞かれたらどーすんのよ!」
「そ、そうだな結構声量を抑えたつもりなんだが……すまん。 ていうかマジか」
「えぇ。 原因はダイキ、アンタにあるんだからなんとかしなさいよ」
「いやオレにどうしろと……」
どうやら……詳しくは言わないが、朝に教室内でエマ・結城・西園寺の3人がお互いの性癖について語り合っていたとのこと。
まずはエマと西園寺がそれぞれの癖を暴露してその流れで結城に話を振ったらしいのだが、そこで結城が口にした言葉こそ……
『私は一回でいいから中にいっぱい注がれてみたい……かな。 前に福田……くんに読ませてもらった漫画で知ったんだけど、それをされたら、熱くて気持ちよくて……幸せいっぱい、天にも昇るような感覚になるんだって』
中にいっぱい……ゴクリ。 もちろんそこはあえて聞かなかったぞ紳士だから。
でもおそらくはそう、熱々のコーヒーの中にミルクをこれでもかというほどに注いでみたいとか……そういうことなのだろう。
ミルクの冷たさでいい感じの熱さになり、舌触りもマイルドになって幸せいっぱいになるってことだよな? オレコーヒー飲まないから分からないけど。
あ、ちなみに補足するとエマから聞いた話では結城がそれを照れながら話していた時、まるで結城の背後に謎の紋章が浮かび上がり……その紋章内をどこか既視感のある真っ白な生物がゴール目指して泳ぎ回っていたんだとさ。
「な、なるほどな。 それがあってエマはボーッとそれについて考えてたのか」
「えぇ。 それから桜子がエマやノゾミに実際どうなのか聞いてきたんだけど、2人とも未経験だし知る由もないじゃない? エマも恋愛経験はダイキや桜子たちよりは上だと思うけど、そこまでしたことはないもの。 桜子の疑問を聞いて確かに……って思って考えちゃったのよね」
「そこのところ詳しく」
「そんなの決まってるじゃない。 『本当に注がれたら熱いのか』についてよ。 だって熱い飲み物を飲んでも胃の中って熱さを感じないし火傷しないじゃない? なのにそこは本当に熱さを感じるのかなーって」
「そうだな。 マイルドになってそうだな」
「ーー……何言ってんのよ」
「え? コーヒーにミルクを注ぐ話じゃないのカナ? エマは何のことを言ってるんダ?」
「セクハラで蹴り上げるわよ」
「すみません」
本来なら既に蹴られる案件だったらしいのだが、オレの精神が復活した記念としてエマは今回のことは見逃してくれることに。
しかしその代償として結城のその疑問の答えを見つけてくるというミッションを仰せつかったのだった。
「ーー……いやエマよ。 どうやってオレに調べろと?」
「そんなのダイキなら優香さんとか……ほら、美咲さんとかいるじゃない。 美咲さんなら経験ありそうだし聞いてちょうだいよ」
「無理だな」
「なんでよ」
「あのなエマよく聞け。 星さんも純潔なんだ」
そう真剣な表情で伝えるとどうだろう。
エマは信じられないといった表情で大きく瞬きをする。
「え……えええ!?!? そうなの!?!? あの見た目で!?!?」
「あぁ。 オレも初めて聞いたときは驚いたさ。 でもこれで分かっただろ、オレには知る方法が……」
「じゃあ蹴るけどいいわね?」
「頑張って探します」
期限は週末の金曜日まで。
とりあえず今日は放課後に三好との距離を縮めるとして、結城やエマの疑問解明は後日だな。
オレは休み時間を利用して小畑と何度かメールで打ち合わせをすることに。
そして放課後、オレは小畑とのやりとりをしたメールを見返しながら目的の場所へと向かっていた。
【受信・小畑さん】とりあえず佳奈、OKだって! 放課後、今朝の図工室前のトイレ前に呼んどいた!
【送信・小畑さん】ありがとう。
【受信・小畑さん】任せてって! んで、福田から合図もらったら私ら向かえばいいんだよね?
【送信・小畑さん】うん、よろしく。
「大丈夫。 オレは1人じゃない。 頼もしい味方もいるんだ……絶対成功させてやる」
よーーし、やるぞおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!
待ってろよ三好ーーーーー!!!!!!
こうしてオレはやる気MAX・緊張MAXで図工室前の女子トイレへ。
視線の先には三好の姿。 小畑たちが来ると思っているんだろうな……ポニーテールを可愛く揺らしながら自身のスマートフォンに視線を向けていた。
お読みいただきましてありがとうございます!!
もうすぐ三好との決着……そして……!!!




