707 【真・結城編】特別編・乙女の時間
七百七話 【真・結城編】特別編・乙女の時間
「ったく、なんなのよもう。 帰る時間30分も遅れたじゃない」
放課後になり突然校長室へと呼ばれたエマ。
そこでまさかのお願いをされたエマは怒りで手を震わせながら暑い日差しの中家へと帰っていた。
「ほんとなんなのよ、長い世間話の後にエマが写ってる雑誌取り出して『サインがほしい』だなんて。 言い回しがほんと下手で気持ち悪い……あの校長、職権乱用&セクハラで通報してやろうかしら」
スマートフォンで時間を確認すると、普段ならもう家に着いて妹・エルシィとかけがえのない時間を過ごしているころ。
「んあああああああ!!! ムカつくーー!!! 欲しいなら回りくどい方法をとらずに堂々と来いってのよ!! そしたら数分で済んでたはずなのに……ああああ、もう!!!」
頭をわしゃわしゃ掻きながら地面に苛立ちをぶつけていたエマ。
するとそんな中、対面からこちらに向かって歩いてくる……見慣れた人物の姿が視界に入った。
「ーー……あら、ノゾミ?」
「え、あ……エマ」
駆け寄り話しかけようとしたのだがここでエマは希の違和感に気づく。
希の目が少し腫れていて、鼻先が若干赤い。
「ノゾミ……何があったの?」
「あはは、実は……うん。 ちょっとね」
「その様子、ちょっとどころじゃないと思うけど……?」
「ーー……ごめん、言いたくない」
いつもは自身に満ち溢れた彼女が一体どうしたというのだろう。
詳しく話を聞きたかったエマであったが、本人が言いたくないのであれば無理に聞くわけにもいかない。
「いつでも話聞いてあげるから、言いたくなったらいつでも相談してきなさい」
エマは希の頬に手を当てながら優しく耳打ち。 希もそれに対して小さく頷き、このまま2人でいても気まずそうだったので早くその場から離れようとしたのだが……
「じゃあ今夜……電話してもいい?」
希がエマの手に自身の手を重ねながら尋ねてくる。
「え? えぇ、もちろんよ。 常識的な時間ならね」
「それでその……みんなには内緒にしてくれる?」
「当たり前じゃない。 もし誰かに口外した方が良さそうな案件だったら話は別だけど、基本的にエマのお口のチャックはダイアモンド並み……そう簡単には誰にも話さないわ」
「ありがと。 じゃあまた夜……寝てたら申し訳ないから一旦メール入れるね」
一体希に何があったというのだろう。
もし誰かの非道な行動によって傷つけられた……とかだったら自分の脳やその周囲の力を借りてでも、なんとしてでもその悪の芽を摘んでやる。
そんなことを考えながら、エマが妹の待つ家へと走った。
◆◇◆◇
「えええええ!?!? し、失恋ーー!?!? だ、誰に!?!?」
夜。 エルシィが眠った後自室で電話していると、開始早々希からの衝撃告白。
流石に相手の名前は言えないようなのだが、その結果にエマはあまりの驚きからベッドから滑り落ちた。
『な、なんか凄い音したけど、エマ大丈夫?』
スピーカー越しから希の困惑した声が聞こえてくる。
「あ、あははは。 えぇ大丈夫、ちょっと……というかかなりビックリしちゃったから。 ていうか理由聞いていい? なんでその……フラれちゃったの? ノゾミに告白されて断るような男子がいるとも思わないけど」
『うーーん、というよりも私から『ダメだって知ってる』って言ったからなー』
「え?」
『告白はしたよ? でもその人には他に好きな子がいて、その子に既に告白してることとか知ってたから……』
「ええええ!?!? そんなの負けゲーム……じゃあなんで告白したのよ! もし今がダメでも時期を待ったらワンチャンスあったかもしれないじゃない!!!」
まさかこんな簡単なことも気づけないほどに……我慢ができないほどに好きだったというのだろうか。
エマは希の恋愛力をかなり過小評価。 やはり小学生……駆け引きにはまだ早いのかなと考えていると、希が静かに話し出した。
『その……さ。 その人、最近元気が無くて……自分に自信がなさそうだったんだよね』
「そうなの?」
『うん。 その人、気になる子に告白したのはいいんだけど、された側の子が反応に困ってて……今までその2人、結構仲が良かったのにそれが原因で距離が出来ちゃってさ。 だったら今私が大好きなその人……彼にに出来ることは、自信を取り戻させてあげることなんじゃないかなって思って』
簡単にまとめると、どうやら希の想い人には他に好きな女子が。
そしてその女子に勇気を出して告白したのはいいものの、女子側は困惑……距離を開けてしまったことで彼の気力・自信も喪失してしまったらしい。
しかしそんな暗い彼の姿なんて見ていられない。 だからこそ希はそんな彼に自信を取り戻してほしい一心で負け確定の告白を実行した……とのことだった。
「なんというかノゾミ……あなた本当に小学生なの? めちゃくちゃ考え方が大人じゃない」
エマは希の相手のことを思っての自己犠牲の行動に深く感動。
薄っすら目に涙を溜めながら「でも失恋は相当辛いわよね……趣味でもなんでもいいから、それを忘れるほどの何かがノゾミにあればいいんだけど」と言葉を漏らす。
『趣味……忘れるほどの何か?』
「えぇ。 もちろんそれをやって完全に忘れることなんてあり得ないわよ? でも一瞬でも忘れられたり……少しでも和らげることは出来るのよ」
『エマも経験あるの?』
「うーーん、そうね。 詳しくは言えないけど、エマにも失恋の気持ちは分かるわよ? エマの場合は……そうね、好きだった男子が当時エマの恋愛事情とか全て知ってた親友と付き合ったっていう……」
『え……ええええ!?!?!? そうなの!?!? な、何年生の時の話!?!?』
希はエマがそんな壮絶な失恋を経験していたなんて思いもしていなかったのだろう。
スピーカー越しからでも分かる大きな声で、当時のことを詳しく聞いてくる。
「んーー、ごめんノゾミ。 これ以上はエマも言えないわ」
『そ、そうだよねごめん。 でもそっか……趣味、か。 それでエマはその辛い時期を乗り越えられたってこと?』
「そうね……学校で顔を合わせる度に憎しみや劣等感が凄かったけど、あの時暴挙に出なかったのはやっぱり他に集中してたってところが大きいかしら」
エマは希と通話しながら、当時の自分を思い出しあまりの恥ずかしさからその身を捩らせる。
「それでノゾミ、ノゾミは何か熱中してる趣味とか……そういうのはあるの?」
『熱中してる……うーーん、ないかな』
その後も希はしばらくそのことについて考えていたのだが、結局見つからず。 そこまで本気で取り組んでいる趣味等はないようだ。
『どうしよエマ……私、一応その人の前では笑顔でバイバイしたんだけど、今度会って平然とできるかな』
ここまで不安がる希も珍しい。
エマはそんな希の声を聞き、「仕方ないわねぇ」と小さく呟きながら口角をあげた。
「ノゾミ、いい方法があるわよ」
『いい……方法?』
「えぇ。 ここから一気に話が変わるんだけど、ノゾミの性癖……これをしてたら興奮しちゃうってシチュエーション教えてくれるかしら」
『ーー……ハ?』
「ちなみにエマはノーパンで学校に行ったりすることよ。 風とかで捲れて男子たちに見られたらどうしようって不安が返って興奮を掻き立てるの。 ノゾミはどう? そんなのないとか言わせないわよ? エマもノゾミのために暴露したんだから」
『ちょ、ちょっとどうしたのエマ……声のトーンがガチだよ?』
「いいから答えるの!! ノゾミの性癖は……エッチな気分になるシチュエーションってなに!?!?」
『エエエエエエエ!?!?!?』
ここから先は乙女の領域。
2人はお互いの性癖を夜遅くまでぶつけ合い、かなり盛り上がったタイミングでエマはこうアドバイスしたのだった。
「ノゾミ、それをしなさい。 きっとそれをすればマイナスの気持ちなんて一瞬で天に昇っていくわよ」
『で、でも誰にそれを手伝って貰えば……』
「そんなのダイキしかいないでしょ。 アイツ以上に変態な男子は周囲にいないわ」
『え、えええ、福田くん? で、でも福田くんは……』
「大丈夫。 ダイキは変態を前にしたらどんなメンタル状態でも一気に脳が覚醒するんだから。 そういうやダイキも最近元気なかったけど……まぁノゾミがそれを持ちかけたら喜んで相手してくれると思うわよ」
『そう……かな。 元気になるかな』
「なるなる。 ノゾミも最高なテンションになってダイキも変態脳でメンタル復活……お互いにWIN-WINでしょ」
『確かに。 じゃあちょっと……早速明日試してみるよ』
「えぇ! なんか話してたらエマもムラムラしてきたわ。 じゃあ……もう我慢できないからここでおやすみなさい」
『あ、うん。 おやすみ……?』
通話を終えたエマは「ふぅ……」と息を吐きながら右手を下腹部へ。
「ふふ、まさかノゾミがエマ以上の変態さんだったなんてね。 あ、そうだ。 明日は桜子にも性癖聞いてみようかしら」
あの希の変態欲求ならばダイキの変態脳がそれを充分に包み込んでなんとかしてくれる。
それから約30分。 エマは1人、乙女の時間を満喫したのであった。
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変態こそ正義ですネ!!!!




