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703 【真・結城編】特別編・小学6年生西園寺希、いろんな恋を知る


 七百三話  【真・結城編】特別編・小学6年生西園寺希、いろんな恋を知る



 修学旅行を終え、土日を挟んでからの翌週の平日・朝。

 希が彼女のファンクラブ・西園寺組の皆に羨望の眼差しを向けられながら登校すると、上履きの間に1通の封筒が挟まれているのを発見した。



「あ」



 またラブレターだ。 どうやって断ろうかな。


 

 そんなことを考えながらも希はその場で封筒を開封。

 中身を取り出した途端、思わず声が漏れた。



「ーー……ン?」



 封筒を開けるとそこに入っていたのはいかにもメルヘンチックな可愛らしい便箋。 男子にしては珍しい……妹や姉にでももらったのだろうか。

 そんな推理を頭の中で駆け巡らせながらも、希は書かれている内容に目を通したのだが……



 ====


 希へ。



 なんかメールだと伝わりづらいって思ったからさ。 放課後、校舎裏で待ってるね。



 佳奈


 ====



 ーー……え?



「ええええええええ!?!?!?!? 佳奈あああああああああああああ!?!?!??!」



 ◆◇◆◇



 一体佳奈はどうしたというのだろう。

 希は教室に到着するなり机の上に突っ伏す。



「あれって……ラブレターだよね。 でも佳奈って私と一緒で福田くんのことが好きだったはず。 なのになんで私のことが……?」



 今まで普通に異性の……男の子のことが好きだった女の子が、ある日を境に急に同性を好きになるなんてことがあるのだろうか。



 希が恋の奥深さについて頭を悩ませていると、それと同じタイミングで綾小路恵子が教室に到着。

 室内に入るなりすぐに希の席の前へ近づいてきて、満面の笑みで「おはよーー西園寺ーー!!! 好きーー!!!」といつもしてくる愛のこもりすぎた挨拶をぶつけてきた。


 

「あー……綾小路、おはよ」


「うん、おは……え、うおはあああああああ!? さ、西園寺が……初めて返事してくれた!! 今までずっと無視してたのにいいいいいいい!」



 恵子は思ってもみなかった希からのレスポンスに大興奮。

「こんなに西園寺が距離を近づけてくれたなんて……ビバ修学旅行マジック!!」と1人で舞い上がり始める。



 まったく、どれだけ私のことが好きなんだ綾小路は。



 希はシラけた視線を恵子に向けながらも、しばらくの間彼女のその嬉しさの舞を凝視。

 それにしても朝からなんてハイテンション……挨拶を返しただけでこんなにも喜んでくれるなんて。



「ーー……」



 ーー……好きだから、か。



 ぶっちゃけ同性同士の恋愛は理解できないが、もしかしたら佳奈のことを少しでも理解できるきっかけになるかもしれない。

 早速希が「ねぇ綾小路」と恵子に話しかけると恵子は秒で反応。「なになに西園寺!!! デートのお誘い!?」と目を輝かせながら顔を近づけてくる。



「あーいや、全然そんな話じゃないんだけどさ、聞きたいことがあって。 あ、あと声のトーン下げてくれる? 鼓膜破れるから」


「ウンウン!! なんでも聞いてなんでも聞いて!!」



 恵子から桃色のオーラが勢いよく噴き出され希を包み込んでいく。

 希はそんな桃色のオーラ……【好き好きオーラ】に圧倒されながらも、疑問に思っていたことについて尋ねることにした。



「綾小路はさ、私と……付き合いたいんだよね?」


「そんなの今更かよーー!! あったりまえじゃん!! アタシの将来の嫁は西園寺しかいないもん!!」



 周りに人がいるのにこんなに堂々と……。

 でもこれから聞く内容的に、ちょうどいいかもしれない。



「でもさ、仮にだよ? 仮に私が綾小路と付き合ったとしてその先に結婚したとするよ? だけどもし結婚しても、私たちどっちも女だから子供もできないし周りからも珍しい目で見られる……変な噂も立つかもしれない。 そういうことが分かってて付き合いたいのってなんで?」



 そう、私は同性愛というものがまだあまり分かってはいない。

 海外ではそういうものも認めようっていう運動や風潮が高まってるっていうのはネットニュースで見たことがあるけど、やはりそれは珍しいから……あまり共感・理解できない数奇なものだからこそ、ここまで取り上げられてるものだと思っている。



 そんな恋愛をしてもリスクしかないのになんで?



 希はそのことを恵子にまっすぐに質問。

 おそらくは返答なんて返ってこない……そう予想していた希だったのだが、恵子は希の手を優しく握りしめながらしゃがみ込むと、顔を真っ赤にさせながら耳元で小さく囁いてきた。



「そ、そんなの決まってんだろ……周りの声や目なんか気にならないくらい、西園寺のことが好きだからだし」



「ーー……!!!」



 なんだろう、この綾小路のいつになく真剣な表情と声のトーンは。



 不覚にも……一瞬でも胸を高鳴らせてしまった希は一旦冷静に戻るべく小さく深呼吸。

「ふ、ふーん。 じゃあ今度一緒に映画くらいなら行ってあげてもいいよ?」と視線を外しながら答えると、自分の顔が熱くなてきたことを察して素早く机に突っ伏す。



「ちょっ……ええええええええ!?!?!? 西園寺……マジいいいいいいいい!?!?!?」


「う、うるさい。 これはあれ……前に私をハメようとしてきた女子たちから助けてくれたお礼だから。 か、勘違いしないで」


「ブフッ……あーやば、あまりにも西園寺が可愛すぎて鼻血が……。 で、でもやったあああああああ!!! 絶対忘れんなよ!? 忘れたって言ったらぶっ殺すからね!!!」



 その後恵子は「やったーやたたぁーー!!」と謎の歌を口ずさみながら自身の席へ。

 希は机に突っ伏したまま、ラブレターをくれた相手・佳奈に誠心誠意……まっすぐ向き合って話を聞こう、想いを受け止めようと心に決めていたのだった。



お読みいただきましてありがとうございます!!

励みになりますので感想や評価・レビュー・ブクマ等、お待ちしておりますー!!!

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