702 【真・結城編】特別編・小学6年生小畑美波、恋の難しさを知る
七百二話 【真・結城編】特別編・小学6年生小畑美波、恋の難しさを知る
修学旅行の翌日。
美波が自室で彼女のお気に入りのアイドルグループ・ニューシーのライブDVDを楽しんでいると、麻由香からの着信音が鳴った。
『ねぇ美波!! とうとう佳奈が福田に好き……みたいなこと言ったらしいよ!!』
「ええマジ!?」
『うん! さっき電話きたもん!! なんか口滑らせちゃったらしいんだけど、どうやってその発言を誤魔化すか聞いてきたんだよね!』
「あー……い、いやいや、そこはもう行っちゃえじゃない!?」
『だよね!? 福田、今は佳奈ん家にいるらしいし、今日で幸せになっちゃえばいいのに……あーあ、ウチが行けたら手伝ったげるのになーー』
麻由香のこの発言に美波は反応。
「でも麻由香、ぶっちゃけ私は佳奈のこと応援してるけど、麻由香は大丈夫なん?」と先ほどよりも真剣な声で尋ねる。
『え、なんで』
「いやだってさ、麻由香がはっきり言ってないから間違ってたらゴメンなんだけど、麻由香って正直なところ福田のことちょっとだけ気になってたよね?」
『あーー、あははは。 バレてた? 夏休みにちょっとだけ福田に助けられたことがあってさ』
「なんだっけ、途中で麻由香がストーカーされてることに気づいて逃げてたら福田に会ったんだっけ?」
『そうそう。 そこからちょっとだけ気になってたんだけど……本当にちょっとだけだだからウチはいいんだよ、どうせ中学は私立受けて離れ離れになっちゃうんだから。 だったらウチなんか比べものにならないくらい福田のことが好きな佳奈に幸せになってほしいじゃん? だからウチはいい……それに今恋しちゃったら私立落ちちゃうかもしんないしね』
麻由香の声色からして嘘を言っているようにも聞こえない。
だとしたら、もうここで佳奈と福田をくっつけて麻由香の心をサッパリさせた方がいいのかな。
「じゃあ……私が今から行って佳奈のことサポートしてこよっか?」
『ええ!? それはウチも嬉しいけど美波は予定大丈夫なん? あと外めっちゃ暑いよ?』
「いいっていいって。 どーせDVD見るくらいしかやることなかったし。 それに親友の恋を成就させられたら……私も嬉しいしね!」
こうして美波は素早く家を出て佳奈の家へ。
途中佳奈の家前で不審者と出くわしたりと色々あったのだが、なんとか美波はそれを追い返して目的を遂行することに。
佳奈をダイキの前に突き出し、ダイキに告白をするよう促したのだが……
「三好いいいいいいいい!!!!! 好きだあああああああああああああ!!!!!!」
今までで一番男らしいダイキによる佳奈への告白。
美波はこれで佳奈が了承し、晴れて恋人同士になるものだと確信……しかし佳奈の反応は美波の想像していたそれとは全くの真逆を行くものとなっていた。
「ごめん福田……ちょっと今日はもう……。 返事は今度……どこかで絶対するから、時間くれる?」
え?
涙を流しながらダイキに帰宅を促す佳奈。
これは……なんでこうなった?
佳奈って福田のことめっちゃ好きなのに……。
美波が混乱している間にダイキは佳奈の要望通り帰宅。
そしてダイキが玄関の扉を閉めた音が聞こえたとほぼ同時……佳奈は美波に抱きつき、美波の胸に顔を埋めながら大きく泣き叫びだした。
「うわああああああああ!! 美波……美波ーーー!!!」
「ちょ、ちょっと佳奈!? なんで福田の告白OKしなかったの!? せっかく両想いが実るチャンスだったのに……!」
「えぐっ……ひぐっ……、だって……だってえええええ!! 私が好きなのは……でも……うわああああああん!!!」
まったく意味がわからない。
しかしこうなってしまった原因が自分にあるということだけは事実。
「えっと……な、なんか佳奈、ごめん……」
美波は佳奈が落ち着くまで静かに寄り添うことに。 そして佳奈が落ち着きを取り戻してからしばらく……佳奈から衝撃的な事実を聞くこととなる。
「も、もう美波には隠せないから言っちゃうけど……誰にも言わないでくれる?」
佳奈のいつになく真剣な目。 美波はそれに対し若干戸惑いながらもすぐに頷く。
「え? う、うんもちろん」
「あのね、確かに私は福田が好きなんだけど……」
え、なに?
「今の福田って昔の福田と違うの」
「ーー……は?」
「5年の時、福田って自分で歩道橋から飛び降りてから入院してたっしょ? 福田ってあれで意識を失って……病院で目を覚ましてから前の記憶がないらしいんだよね」
ーー……。
確かに福田ダイキ……彼が入院から復帰してきた時、何か……少し雰囲気やらが変わって別人みたいだという実感はあった。
でもまさか本当にそうだったとは……。
「え、佳奈、それマジで言ってんだよね?」
「ーー……うん」
まぁそうか。 誰が好きな男の子のことで嘘を言えよう。
「マジかぁー……そうだったんだ」
「それで、私が好きなのは今の福田……もしまた何か事故とか起こって前の福田に戻っちゃったとしたら……その福田は私は愛せない。 だから私、福田と付き合うのが怖いんだ。 もし付き合ったとしたらもっと福田のこと好きになっちゃうし、そんな中で急に前の福田に戻っちゃったなんてことがあったら……私耐えきれないと思うから」
「そ、そうだったんだ……ごめん、私全然そんなの知らなくて」
「ううん、美波は別に悪くないよ応援してくれて嬉しかったし……。 悪いのは今の福田しか好きになれない私だもん」
その後美波は佳奈からなぜかお礼を言われ、「じゃあ私、ちょっと福田の返事とか1人で色々考えたいから……」ということで家に帰ることに。
麻由香からの『どうだった!?』というメールにどう返信するべきか迷いながら帰路に着いたのだった。
◆◇◆◇
夜。 美波の自室。
【送信・佳奈】佳奈、ほんと今日はごめんね。
【受信・佳奈】だから大丈夫だって! 美波はホント気にしないでいいから!
【送信・佳奈】今日聞いた福田の話は絶対誰にも言わないし、私はこれからも佳奈の味方……いつでも力になるから。
【受信・佳奈】ありがと!
「はぁ……まさかすぎる。 私マジバカすぎんだけど」
勢いと努力だけでなんでもいけると思っていた自分が恥ずかしい……佳奈とのメールを終えた美波は、恋がそこまで簡単ではないことを今回のことで初めて実感したのだった。
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