70 マイシスター☆
七十話 マイシスター☆
運か実力か、第一次審査を通り抜けた三好たち3人!
そのままの勢いで最終審査も貰った!! ーー……と思っていたのだが。
◆◇◆◇
「あああああ!!! 悔しいいい!!!」
帰り道、小畑が頭を掻き毟りながら叫ぶ。
そう、結果は実らず。 これは相手が悪かったな。
「もおおお!! なんで読モが出てんのさ! 読モなら雑誌で人気になれっての!!!」
ーー……あ、読モってのは読者モデルの略ね。
「まぁまぁ美波落ち着いて」
多田が必死に小畑をなだめる。
「麻由香は悔しくないの!? 絶対私らの方が盛り上がってたじゃん!!」
そう。 確かに素人目のオレからしてもステージ上での輝きは三好・多田・小畑の方が断然上だった。
だがさすがは読者モデル。 見せ方に関してはあっちが一枚上手だったな。
上手くは説明できないけど、三好たちのステージを見るとたくさん練習したんだろうな……とか、3人とも本当に仲がいいんだろうな……とか感じるんだけど、読モの子のステージは他とはまるで違う。
ちゃんと自分たちの見せ方を分かっていたし、おそらくは事務所からのレッスンもあったんだろうな……オリジナリティみたいなものは全くなかったんだけど、とにかく元のダンスに忠実。 キレもよく全てが完璧だった。
ーー……まぁオーディションでの合格者は映画になんらかの形で出演するんだし、そこらへんちゃんとしてる子の方が製作者側からしてもありがたいのかもな。
ということでラブカツオーディションは夏のいい思い出となり幕を下ろした……とその時のオレは思っていたのだった。
◆◇◆◇
「ーー……で、なんでいるの」
自宅リビング。
オレの視界にはソファーに座って佇んでいる三好の姿。
「だってー! お兄にバカにされたくないんだもんーー!!!」
三好が口を尖らせながらブーブー愚痴を言う。
「てかお前あれなのな、その割には案外悲しんでないのな」
そう……あれだけ頑張っていた三好たちだったが、最終審査に落ちたと分かってからも誰1人涙を流していなかったのだ。
あの場面、お約束的には3人揃って号泣とかするのが正解だったと思うんだけどな。
「まぁそうだね。 負けたのは悔しかったけど、楽しかったからいいかなーって」
「そんなもんなんだ」
「うん、だって私は別にお兄を見返したかっただけだしね」
オレと三好が話していると部屋着に着替えた優香がジュースをオレたちのもとへ運んでくる。
「お疲れさま佳奈ちゃん。 結果は残念だったけど、佳奈ちゃんたち輝いてたよー」
優香は労いの言葉をかけながら三好にジュースを渡す。
「あああああ!! 優香さん好き!! ねぇ優香さん、私のお姉ちゃんになってよー!」
「えー? どうしたの急にー」
優香が少し照れながら三好の相手をする。
ーー……が、それは聞き捨てならんぞ三好よ。
「それは許さぬ」
オレは三好の言葉を一刀両断。
優香と三好の間に割って入る。
「ダイキ? どうしたの突然」
「三好、お姉ちゃんはあげない渡さない」
オレは優香の腕を握りしめながら首を高速で横に振る。
「えー、いいじゃん別に! 私にも優香さんに甘えさせてよー! そうだ、福田には私のお兄あげるから!」
「いらん!!」
「ぶーーっ!! じゃあどうしたら優香さん分けてくれるのーー!?」
しつこい奴だな。
三好は結構本気だったのか必死にオレに食らいつく。
「いいじゃんダイキ。 ダイキだって美咲の弟でもあるんだし」
優香がなぜか三好側に。
これはまずいぞ……もしかしてだが優香は妹が欲しいんじゃないのだろうか。 結城が家に来た時はいつも楽しそうだし多分そうだ。
てことはこのままだと優香を三好に取られかねん。
ここでオレが取るべき最優先行動は三好を諦めさせることだよな。 三好さえ攻略できればどうにでもなる……考えろ!!
優香を独占したいオレは必死に脳を回転させる。
ピッキーーーーーン!!!!
「ーー……!!!」
さすがはオレの変態脳! 素晴らしいアイデアが浮かび上がってしまったようだ!!
オレはニヤリと笑みを浮かべながら三好を見る。
「ん? どしたの福田」
「いいのか? お姉ちゃんの妹になるってことはお前、オレとも兄弟になるってことなんだぜ?」
「え」
三好が優香に視線を移す。
「そうなったら三好。 妹のお前はオレのいうことを聞かなくちゃいけないことになるんだぞ?」
オレはニヤついたまま三好の腕をツンツン突く。
なんだかんだでプライドの高い三好だ。 この煽りには絶対反抗して断ってくるはず……もし仮に妹を受け入れた場合でも、オレが色々とギリギリなお願いを連発すれば嫌になって逃げ出すに違いない!
オレは黙り込んで考えている三好に向かってせかすように同じ質問を繰り返した。
そして返ってきた三好の答えは……
「うん、いいよ!!」
「「え?」」
オレと優香の声がシンクロする。
「それで私も優香さんに甘えていいんでしょ!? だったら福田の妹になるくらい朝飯前じゃん!」
三好が鼻をフンと鳴らしながらオレに親指を立てる。
な、なんという選択。
三好、お前がいかに優香に懐いているのかはよくわかったよ……では教えてやるとするか。
兄の威厳を!!!
「三好……いや、佳奈。 兄のオレをどうして福田と呼ぶんだ? にぃたまだろ?」
オレは腕を組みながら三好を見下す。
「ーー……なっ!! にぃたま!?」
三好は顔を真っ赤にさせてオレを見る。
「ちょっとダイキ、あんまり意地悪しちゃだめだよー」
「分かってるって。 でもこれは三好……佳奈の妹テストだから」
「そうなの? じゃあお姉ちゃんちょっとすることあるから部屋に戻るけど、やりすぎないようにねー」
「はーい」
オレは優香がリビングを去ったのを確認して再び三好に向き直る。
「ーー……!!」
「どうした佳奈。 にぃたまの事恥ずかしくて呼べないのか?」
「な、なんでそんな言い方……! 別に普通にお兄ちゃんでいいじゃん!」
「ダメだ。 にぃたまだ」
「に……にぃたま」
ズキュウウウウウン!!!
同級生に『にぃたま』って呼ばれる……なんて最高なんだああああ!!!
オレは心の中で歓喜の涙を流す。
しかし……まだ終わらねえんだよなァ!!!!
「あー、なんか太ももが痛いわー。 佳奈、マッサージしてくれないか? 脚で」
「はぁ!!??」
「だってオレの妹になったんでしょ? だったらオレの言うこと聞かなきゃだめだよなー」
オレはその場で座り込むと三好に向けて足をのばす。
「い、嫌だし!」
「まったく言うことを聞かない妹だなー」
オレは三好の足を掴んでオレの太ももの上の乗せる。
フォオオオオオオオオオオ!!!!
ちっちゃい足がオレの太もも踏んでますよおおお!!!
テンションの上がったオレは三好の足を動かして上下左右に擦っていく。
スリスリ……スリスリスリスリ!!!!!
「ちょっ、なにやって……!!」
「おだまり佳奈。 今はオレの太ももの痛みを取ることだけに集中するのだ!」
「はぁ!?!?」
そんな感じでオレは太ももから三好の足裏の感触を堪能していたのだが、それは突然訪れた。
「あ、そうそう私思ったんだけど……」
部屋から戻ってきた優香がリビングの扉を開けてヒョコッと顔をだす。
「なに?」
「佳奈ちゃんってさ、誕生日いつなの?」
「え、6月だけど」
三好が頭上にはてなマークを浮かばせながら答える。
それが一体どうしたって言うんだ?
「じゃあダイキ誕生日9月だから……佳奈ちゃん妹じゃなくてお姉ちゃんだね」
ーー…え。
「「えええええええええ!!!???」」
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