675 【真・結城編】お泊まり会②
六百七十五話 【真・結城編】お泊まり会②
久しぶりに優香に会いに行った結城は30分後くらいにエマの家に帰宅。
「福田……くん、はい鍵、ありがとう」
「あーうん。 どうだった?」
「うん、びっくりしてくれた……ありがとう」
「そっか、それは良かった」
「うん。 会えてよかった……」
若干目が充血してるけど……そんなに優香に会えて嬉しかったのかな。
オレが心の中で『喜んでくれてよかったぜ』と感じていると結城がテレビ画面を見ていることに気づく。
「ん、どうしたの結城さん」
「ゲームしてたの?」
「うん。 エマが懸賞で当てたらしくてさ。 ちょうど終わったところだし、一緒にやる?」
「う、うん。 【魔獣ハンター】しかやったことないけど、大丈夫かな」
「大丈夫大丈夫。 てかそれよりも簡単だから」
こうしてオレたちは結城を含めた5人でゲームをプレイすることに。
「次、桜子の番だよー。 はいこれコントローラー」
「あ、うん。 ありがとう佳奈。 えっと……サイコロ振ればいいのかな?」
「そうそう! そんでそこからねー……あーうん! そうそう!」
しかしこの5人でのゲームで生まれた話題が、後にあんな影響を及ぼすことになるなんて……
◆◇◆◇
やはり結果はエルシィちゃんの圧勝。
勝利するごとにホウキの色がグレードアップしていくのだがエルシィちゃんのホウキは最終系の金。 ゲームを終えてお菓子を食べながら雑談していると、エルシィちゃんがまたやりたいと駄々をこねながらオレたちの腕を引っ張ってきた。
「だーめ。 エルシィ、そんな長時間やってると目が悪くなるわよ?」
エマがエルシィの身体を引き寄せ「メガネになっていいの?」と尋ねる。
「めがねー?」
「そう、メガネ。 確かにメガネつけてる人って格好良く見えたりするけど、いちいちかけるの大変だと思うわよ」
「そうなー?」
「そうなの。 だからゲームは時間を守ってやるのよ?」
「でもエッチー、ホキー、きんなのよー?」
「そうね、エルシィのホウキは金色だったわね。 でもそれはそれ、これはこれ。 ゲームの時間延長の理由にはならないわ」
「むー。 エッチー、ホーキュ、きんなのにー」
エルシィちゃんが頬を膨らませながらオレの膝の上に座る。
そしてこの様子を見ていた三好が突然「あははははーー!!」と笑い出した。
「おー? カナちゃ、どしたぁー?」
「あははは、ごめんごめん。 エルシィがちゃんと『ホウキ』って言えてないのがめっちゃ可愛くてさ。 『ホキー』だったり『ホーキュ』だったり……これマジで反則だわ!」
「はんそきゅ……なんなー?」
「あー、そっか難しいねごめん。 いやさ、エルシィが『ホウキ』って言えないのが面白くて」
「なんなーカナちゃ! エッチー、ホムキ、言えるのよー!?」
「あははははは!! 次は『ホムキ』!! あははははは!!!!」
エルシィのプンスカが三好へと移動。
最近日本語が少しだけ得意になってきていただけに先ほどの三好の発言が気に食わなかったのだろうな……プンスカモードのエルシィちゃんは『ちょっと、まってる、のよー!?』をオレの手を引きエルシィちゃんの部屋へ。 オレにマンツーマンで『ホウキ』と言えるまで特訓に付き合ってほしい旨をお願いしてきた。
「そういうことね。 いいよ! 三好やエマ、結城さんを見返してやろう!」
「やたー! ダイキ、ありあとー……んんー? ダイキ、どこ、みてるのよー?」
「あーごめんごめん。 エルシィちゃんの部屋って初めてだからさ。 なんていうか、ぬいぐるみいっぱいで可愛いね」
「そうなー? エッチー、ダイキ、いっぱい、ほめてくえるから、しゅきよー?」
ああん!!! やめて!!!
心が傷ついた状態でそんなこと笑顔で言われたら……本気にしちゃう!!!!
オレはエルシィちゃんに向けられそうなLOVEを必死の誤魔化すように『ホウキ』とちゃんと言えるよう練習を開始。
結果それは大体5分くらい繰り返したら言えるようになり、エルシィちゃんとともに満を辞してエマや三好、結城のもとへと向かったんだけど……
「あらエルシィ、ちゃんと言えるようになったの?」
「いえうーー!!!」
「ふふ、それは楽しみね。 あ、失敗してもダイキのせいだから気にしないでいいわよ」
「なんでだよ!!!」
あっちはあっちでオレやエルシィちゃんがいないのをいいことにガールズトークで盛り上がっていたようで、エルシィちゃんが現れるなりガールズトークのノリで「じゃあちょっと言ってみてくれる?」と軽い気持ちでエルシィちゃんに話を振ってくる。
よしエルシィちゃん、特訓の成果を見せてやれ!!
「ちゃんと、きいてるのよー!?」
「お、自信満々ね」
「これは見ものですなー」
「が、頑張って」
オレは心の中でエルシィちゃんにエールを送る。
エルシィちゃんは3人に見守られながら堂々と無い胸を張り、大きく口を開いた。
「ホーケ……ホーケー!」
なっ!
「ブフーーーーーーッ!!!!」
エルシィちゃんの突然の言葉にオレは心の底から動揺。 三好と結城がポカンと口を開けている中、エマは飲んでいたジュースをまるで霧のように吹き出した。
「ちょ、ちょちょちょっとダイキ!! あんたなんて言葉覚えさせてんのよ!!!!」
エマは顔を真っ赤にさせながらオレのもとへ。
顔を近づかせながら「変な言葉覚えさせてんじゃないわよ!!」と怒声を浴びせてくる。
「し、知らねーよ!! さっきまではちゃんと言えてたんだ……! オレだってビックリしてんだよ!」
「じゃあなんであんなワード出てくんのよ!!」
「そ、それは多分……あれだ! エルシィちゃんがちゃんと『ホウキ!』って言えたからオレが『オーケー!』って言って……それで2人で『オッケーオッケー!』って喜び合ったからもしかしたらそれが混ざっちゃったのかも……」
「ああああ、どうしてくれるのよー! あんな言葉学校で言っちゃったらおしまいじゃないー!」
「い、いや今のは偶然にもそうなっただけなんじゃないのか!? ほ、ほらエルシィちゃん! もう1回言ってみて!!」
「もっかいなー? ホーキィー!!!」
「ほら言えたほら良かった!! だからさっきのはやっぱり混ざってただけなんだって! もう大丈夫じゃんほら解決!!!」
オレはなんとかエマの理不尽な怒りから逃れることに成功。
ホッと胸をなでおろしエルシィちゃんと成功を喜び合っていたのだが、次は結城と三好のターン。 2人は頭上にはてなマークを浮かばせながらエマに「あのさ」と声をかける。
「ねぇエマ、ちょっといい?」
「どうしたの桜子もカナも。 難しそうな顔をして」
「「ホーケってなに?」」
「ーー……え?」
2人のまっすぐな視線がエマへと向けられる。
「ど、どうしたのよ2人とも。 なんでそんなこと聞くのよ」
「だってエマ、その言葉聞いて福田……くんに怒ってたでしょ? オッケーの言い間違いだったんじゃないの? 他にどんな意味があるの?」
「そうそう。 私も聞いたことない言葉だし……よく英語で言うファーキュみたいな?」
あーあ、オレしーらね。
オレは知らんぷりをしながらエマがどう説明するのか内心楽しみながら耳を傾ける。
その様子はまさに子供にアダルトな質問をされて困っている大人そのもの。 エマは言葉を詰まらせながら……たまに回りくどい説明をしながら2人に納得させるよう頑張っていたのだった。
「だからそれは……ほら、あれよ。 アレのことよ」
「「あれ?」」
「あー、だからその……ね。 殻の中に閉じこもってるっていうのかしら。 外に出てないのよ」
「殻の中?」
「外に出てない……家の中が好きとか福田じゃん」
「んー、まぁダイキも実際そうなんだけど……え、まだ分からない?」
「「うん」」
「あーもう! 言っちゃうと被ってんのよ!!」
「なにを?」
「ネコ?」
「え、佳奈……なんでネコなの?」
「ほら聞いたことない? ことわざだったかな。 猫を被るって……」
「え、そうなのエマ。 それがホーケってこと?」
「でもなんで猫被ってたらホーケって言うんだろ」
「だあああああもう!!! 2人ともそんなホーケーホーケー連呼しないで!!!!」
「あ、ホーケじゃなくてホーケーなんだ」
「ぐああああ、私もう頭混乱してきた。 そんで結局ホーケーってなんなん」
グサグサグサァ!!!!!!!!
もういいじゃねえかオーケーの言い間違いでよお!!!! 実際にそれで混ざって間違えたんだし!!!!
なんか別の意味で傷ついちまったよおおおおおおおお!!!!!!
ちなみのその数分後、耐えかねた三好が自身のスマートフォンで先の言葉を検索。
言葉の意味を知った三好と結城は顔を真っ赤にしながら口元を手で押さえていたのだった。
「桜子……私、今めっちゃ恥ずかしいわ。 連呼しすぎてた」
「私も。 まさかそんな意味だったなんて」
お読みいただきましてありがとうございます!!
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グランドフィナーレの真・結城編ゆえ、何気ない日常パートも省略せずに進めております!!
結城ちゃんとの進展もそうですが、このゆるい日常もお楽しみいただければと思います!!




