673 【真・結城編】お泊まり会①
六百七十三話 【真・結城編】お泊まり会①
さぁ、とうとうやってきましたお泊まり会当日。
「じゃ、行ってくるんねお姉ちゃん、星さん」
「うん、楽しんでおいでー」
「なんか盛り上がったら呼べよー? アタシらも混ぜろー?」
オレは優香の部屋で早めの受験勉強をしていた優香とギャルJK星に声をかけるとそのまま玄関へ。 階段を上り、勢いよくエマの家のインターホンを押した。
『はーい』
『あー! ダイキー? エッチー、でゆー!!』
しばらくすると相変わらずのロリ天使・エルシィちゃんが「ダイキー、いらしゃー」と満面の笑みで見上げながら登場。 オレの手をぐいぐいと引っ張り、リビングへと案内してくれた。
「いらっしゃいダイキ」
リビングに入ると私服姿のエマが小さく手を振りながらオレを出迎えてくれる。
「おう。 今日はよろしくな。 てか三好や結城さんは?」
「まだよ。 さっき連絡あって、2人でお菓子買ってきてくれるんだって。 だからちょっと遅れるそうよ」
「そうか」
「優香さんたちは受験勉強?」
「あぁ。 星さんと今日は2人でガチでやるんだと」
「じゃああれね、晩御飯はデリバリーにしようと思ってるんだけど、差し入れがてら多めに頼んじゃおうかしら」
「え、いいのか?」
「そりゃあね。 楽しさはシェアするべきよ。 それに口の中が幸せだと勉強にも身が入るってものよ」
あぁ、そうか。
エマの前世だった小山楓は当時高校2年生。 今の優香たちと同い年だったんだもんな。
さすがは優香たちよりも人生の先輩だ……そう感じているとエマが「まぁこれ、鬼マネの受け売りなんだけどね」と若干苦笑いで微笑む。
「ーー……あ、そっちか」
「そりゃあね。 だってあの時はずーっとレッスンばっかりで、勉強なんて全くやって来なかったもの」
「なるほどな」
「ていうかダイキ、そういえばあれ……ちゃんと用意してきたの?」
エマが思い出したかのように尋ねてきたのでオレはすかさず親指を立てる。
「おう! バッチリだ! リュックの中に入れてるぜ!」
「そう、よくサイズとか分かったわね」
「ちょっと助っ人にお願いしてな」
「助っ人?」
「まぁいいじゃねーか! これはお風呂前に渡すから、楽しみにしててくれ!」
「うーーん、なんかちょっとだけ嫌な予感もするけど」
それからオレはエルシィちゃんを膝の上に乗せながら三好や結城が到着するまでエマと雑談。
そして大体15分後くらいだろうか。 玄関のインターホンが鳴り、両手に大量のジュースやお菓子の入ったビニール袋を持った結城と三好が到着した。
「お待たせー! 遅れてごめんね、どのジュース買うかで桜子とめっちゃ話し合っててさ!」
全身汗だくの三好が「暑かったぁー!」と口にしながら袋をテーブルの上に乗せる。
「え、ジュース買うのでそんな話し合う事あるか?」
「あるよー! 例えば『炭酸系苦手な人いるかなー』とか、フルーツジュースにしても、『りんごジュースとオレンジジュース、どっちが喜ぶかなー』とか!」
「おー、確かに。 全然気にしたことなかったかも」
「まぁ福田はあんま友達いなかったからねー」
「あん?」
「あはは、冗談じゃん冗談。 真に受けないでよー」
三好が眩しい笑みを浮かべながらオレに「ごめんてー」と謝ってくる。
あぁ三好……お前はなんていい奴なんだ。
おそらくこの三好の言動はこの場の空気を一気に和ませるため。 そしてオレにあえてツッコミを入れさせることにより、オレの調子をよくしよう……とか考えてくれの行動なのだろう。
オレはそんな三好のさりげないフォローに感動し泣きそうになるも必死に我慢。
ポーカーフェイスを貫いたまま三好にツッコミを入れていると、とうとうきたぞ……結城が「あ、あのね、福田……くんっ!」と両手を胸の前で絡ませながらオレに声をかけてきた。
「な、なにかな」
オレだけじゃない。 三好とエマ……オレと結城の関係を知っている2人も静かに結城へと視線を向ける。
そしてオレたち3人の視線を浴びながら、結城はゆっくりと口を開いた。
「そ、その……まずは福田……くんに、言いたい事があって……」
「う、うん」
ーー……ゴクリ。
もしかして結城の方から「仲直りしたい」とか言ってきてくれるやつなのだろうか。
でもオレに話しかけてくるなんてそれしか考えられない。 オレは8割の期待を込めながら結城の声に耳を傾けたのだが……
「最初にね」
「うん」
「お、お……」
「?」
「お姉ちゃんに会ってきても、いいかなっ!!」
「「「ズコーーーーーッ!!!!」」」
思ってもみなかった言葉にオレやエマ、三好の3人が盛大に足を滑らせ尻餅を着く。
ま、まぁよくよく考えてみればそうだよな。
結城も優香と姉妹の契りを交わした身……お互いに会いたいって気持ちが大きいんだろうな。
「あ、あー……そういうことか」
「ふ、福田……くん?」
「あはは、うん、いいよ。 じゃああえてオレ、お姉ちゃんには伝えないから……サプライズで会ってきなよ。 はい、これ鍵」
オレが自宅の鍵を結城の手のひらに置くと、結城が不安そうな顔で「い、いいの?」と聞き返してくる。
「いいに決まってるじゃん。 多分お姉ちゃん滅茶苦茶喜ぶ……それに今は星さんもいるから、うるさいくらいに歓迎してくれると思うよ」
「う、うん! ありがとう福田……くんっ! じゃあエマ、佳奈、ちょっと行ってくる……すぐ戻るね!」
こうして結城は目を輝かせながら駆け足で1階下のオレの家へ。
楽しそうな結城の背中が見えなくなると、エマが笑いながらオレの背中を叩いてきた。
「な、なんだいきなり」
「ううん、まずはダイキよりも優香さんって……完全に脈なしね」
「ぐさっ!」
「まぁフラれてるんだしそうなるわよね。 でもよかったじゃない、早速話しかけてもらえて」
「そ、それはそうだけど……オレに関することではないんだよな」
「そこはこのお泊まり会中になんとかなるでしょ。 とりあえずまずは桜子が帰ってくるまで……ゲームでもする? そういえば最近懸賞で当たってゲーム機届いたのよ」
エマの指差した先には最近発売したものの品切れが相次いでプレミア化している最新ゲーム機&ソフト。
オレや三好は「おおおおお!!!」と興奮しながらも、結城が戻ってくるまでの間、早速最新ゲームを体験させてもらうことにしたのだった。
「うわー! 私これ知ってる!!! 【赤ずきん鉄道】だよね!」
「おお、三好も知ってるのか」
「うん! お兄が『気分転換にやりたいなー』って言ってたんだ! あれでしょ、日本中をマッチのホウキに乗って旅する人生ゲーム的なやつだよね!」
「そうそう! ビリになったら天使が迎えにきて寿命が縮むやつな!」
「うわーー! これやったらお兄に自慢できる……早くやろーよ! エマもエルシィも!」
普通の格闘ゲームやレーシングゲーム、アクションゲームなら自信があったのだが……おかしいな。
一番プレイ時間が短いモードで数回遊んでいたのだが、その全てを何故かエルシィちゃんが全勝してたんだ。
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