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668 【真・結城編】特別編・女同士の会話①【挿絵有】


 六百六十八話  【真・結城編】特別編・女同士の会話①



「佳奈ちゃーん、おはよー」



 ーー……ん。



 普段聞きなれない声で目を覚ます。

 そうだ、昨日私は福田の家に泊まって……



 いつもより約30分早い朝。

 佳奈は優香の作る朝食の香ばしい香りとともに目を覚ました。



「おはよーございます優香さん」



 目を擦りながら起き上がり優香を見上げると、優香がいつもと変わらない笑みを浮かべながら乱れた佳奈の髪を手ぐしで解いてくる。



「昨日はよく眠れた?」


「あ、はい。 このソファー気持ちよくて……ていうか優香さん、いつもこんなに早く起きて朝ごはん作ってるんですか?」


「そうだよー。 じゃないと間に合わないしダイキもお腹空いちゃうからね」



 この人は凄いな。

 お兄ちゃんは普通にママに何回か起こされてやっと起きて、用意されたご飯食べて学校行ってるのに……



 佳奈は自身の兄と優香を比べて改めて優香の凄さを実感。

 加えてこんなに美人なんだから、そりゃあお兄も好きになっちゃうか……などと考えながら朝の短い時間を過ごした。



「あ、佳奈ちゃん、もし今日使う教科書とか家にあるんだったらタクシー呼ぶから教えてね」


「あー大丈夫です。 私置き勉……ほとんど教室の引き出しに入れてるんで」



 ◆◇◆◇



 ダイキとともに登校するべく玄関を出ると、ダイキを迎えに来ていたエマとその妹・エルシィが佳奈の姿を見て驚きの声を上げる。



「ええええ! カナ、昨日ダイキの家に泊まったの!? 言ってくれれば遊びに行ったのにー!」


「へへ、急に決まったんだー。 ごめんね言うの忘れてた」


「カニャだぁー。 カニャー、エッチーと、おてて、つなぐのよー?」



 いつもなら親友の麻由香・美波と登校しているのだが、今日は違う新鮮なメンバー。

 佳奈は少し心を弾ませながら皆とともに歩き出した。



「カナは……ちなみに知ってるのよね?」



 登校中、先頭を歩くダイキとエルシィを見つめながらエマが小声で佳奈に話しかけてくる。



「えっと……うん。 福田のことだよね、昨日聞いた」


「どんな魔法使ったのー?」


「へ?」


「昨日と違って明らかにダイキの表情が明るくなってる。 何か心に響く言葉でも送ってあげたの?」


「え、いや……私なんにもしてないけど」


「そんなわけないでしょー。 多分あれはダイキにとって初めての失恋……そう簡単に立ち直るわけないと思うんだけど。 心当たりとかないの?」


「えー? 心当たり?」



 佳奈は「うーん」と昨日のことをざっと思い出していく。

 ダイキが元気になった心当たりがあるとすれば……



「あ」


「なに?」


「多分なんだけど、私が麻由香や美波とビデオ通話してた時にさ」


「うんうん」


「ーー……いや、多分違う。 なんでもない」


「ちょっ! なんで顔赤らめながらやめるのよ! 余計に謎が増えたじゃない!」



 エマの条件反射とも取れるツッコミが佳奈の胸部にヒット。

 ヒットといっても制服に掠った程度で止めてくれたのでダメージ自体なかったのだが、昨夜洗濯してもらった下着のトップだけが乾ききっていなかったため今の佳奈は上には何も着けておらず。 なのでエマの指先が触れた瞬間、佳奈はらしくもなく「あひゃふっ!」と変な声をあげた。



「えええ、どうしたのよ佳奈。 なによその魂の抜ける声は」


「わ、私だって知りたいよ」



 なんともスタートからドタバタな朝。

 その後佳奈は学校に着くまでの間にエマから桜子の現状を軽く聞き、クラスによって下駄箱の位置が違うため一旦正面玄関で別れる。



「そっか、桜子……エマにも福田を振った理由話してないんだ。 もしかして桜子、私のことを思って……?」



 これは近々桜子と話す必要があるかもしれない。

 佳奈は桜子に『時間があるときにでも話せないかな』とメールを送信。 その後上履きに履き替えたエマたちと合流し、何事もなかったかのように教室へと向かった。

 


 ◆◇◆◇



 教室へ入り自分の席に着いた佳奈。

 スマートフォンを確認してみると桜子からの返信が届いている。



【受信・桜子】うん、いいよ。 いつがいいかな、私から行こっか?



 桜子のやつ、こっちが気づいてないとでも思ってるのかな。

 


 佳奈はそれに対し『ううん、こっちから呼びにいくから大丈夫』と返信。 早速1時間目の休み時間にでも話そうかなと考え、とりあえず授業が始まる前にトイレにでも行っておこうと思い教室を出た……のだが。



「ちょっと佳奈ー、なんで昨日教えてくれなかったのー?」


「わわ、美波!?」



 教室を出たタイミングで美波が後ろから肩を回して顔を近づけてくる。



「い、いきなりどうしたの」


「あー、しらばっくれるんだー。  私ら知ってるかんね。 佳奈、昨日福田の部屋にいたっしょー」


「えええええ!?!?」



 美波の問いかけに佳奈の身体がビクンと反応。

 それでも「違う」と言い返そうとしたタイミングで後ろにいた麻由香が「誤魔化しても無駄だよー?」と追加攻撃を放ってくる。



「な、なんで」


「いや佳奈、ウチだって福田の部屋行ったことあるんだよー? 佳奈が話してるときに壁が映ってたんだけど、福田の部屋でしか見たことないアニメのポスター貼ってたもん」


「え」


「それを途中でウチ気づいて、通話中に美波にチャットで送ってみたの。 『ちょっと福田の話題出して探ってみよう』って。 そしたら佳奈、大声で話を掻き消しながら通話切ったっしょ? もう確定だかんねー」



 あああ、なんて洞察力。 上手く誤魔化せてたと思ってたのに。


 

 佳奈は素直に認めた上で「誰にも言わないで」と2人に念を押す。

 するとどうだろう……再度責められると思っていた佳奈だったのだが、2人の行動は全く違うものとなっていた。



「佳奈ー、頑張りなよー。 そりゃあ桜子も私らにとって大事な友達だけど、恋の応援をするってなったら佳奈一択だかんね」


「は、はぁあ!?」


「そうそう。 ウチも美波も佳奈の味方。 言ってくれればなんでも手伝うし」


「ちょ、ちょっと待ってって! なんでそーなるのさ!!!」



挿絵(By みてみん)



 本当に今日はなんなんだ。

 でもちょっと嬉しいな。 2人が何があっても自分の味方でいてくれるなんて……



 ーー……ん?



「ちょっと待って。 なんで2人は桜子と私を比べて……てか桜子が出てくるわけ?」



「「え」」



 佳奈の問いかけに2人の動きがピタッと止まる。



「ねぇ、なんで……もしかして昨日電話で言おうとしてたことって……」


「あー! 宿題忘れた! 麻由香見せてー」

「いーよ! んじゃ教室行こー!」


「ちょっと待てー! 美波、麻由香とクラス違うんだから宿題一緒なわけないっしょー!!」


 

 2人は佳奈から逃げるようにそそくさと教室へ。 佳奈はため息をつきながら当初の目的……女子トイレへと向かった。

 するとなんてタイミング……トイレに入るとちょうど手を洗ってる最中の桜子の姿を発見する。



「あ、桜子」


「佳奈」



 鏡ごしの桜子と目が合う。



 これは……今言ってもいいのだろうか。



 佳奈は周囲に人がいないことを確認。

 桜子の耳に顔を近づけると、小声であの件について尋ねることにした。



「桜子、あの件なんだけど……」


「あの件?」


「う、うん。 ほら、福田の……」


「!!」


 

『福田』という名を聞いた途端桜子の表情が固まる。

 


「さ、桜子?」


「ご、ごめん……なさい」


「え、なんで……」


「ごめんなさい……ごめんなさい」



 桜子の目から涙がポロポロとこぼれ落ちる。

 


「ちょっと桜子……!」


「ごめんなさい、ごめんなさい……!」



 流石にここで落ち着かせるには難易度が高い。

 佳奈は一旦桜子を連れて保健室へと移動。 その後同じクラスの麻由香と桜子と同じクラスのエマに1時間目の授業を休む旨のメールを送り、桜子が落ち着くまで側にいることにした。



【送信・麻由香】お腹痛すぎるから保健室行ってるって伝えといてくれる?


【送信・エマ】ごめん、桜子に福田のこと聞こうとして泣かせちゃったから保健室で落ち着かせとく。



 それからどのくらい経っただろう。

 1時間目のチャイムが鳴って少ししたくらい。 ようやく泣き止み落ち着きをみせた桜子が佳奈を見上げる。



「ーー……ごめんね佳奈、迷惑かけちゃって」


「いや、私はいいんだけどさ。 もう大丈夫なの?」


「うん、ずっと泣くの我慢してたから止まらなくて……もう大丈夫だよ」


「えっと……ごめんね、急にあんなこと聞いちゃったりして」


「ううん、大丈夫。 そっか、佳奈の耳にも届いてたんだ。 てことは……エマも知ってたのかな」



 桜子はそう小さく呟くと、腕で自身の涙を拭い改めて視線を佳奈の方へ。

「じゃあ……話すね」と柔らかく微笑んだ。

 


お読みいただきましてありがとうございます!!

感想や評価・いいね・レビュー等、お待ちしてます!!!


やはり三好・多田・小畑の3人ペアが好きすぎる……

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