661 【真・結城編】告白
六百六十一話 【真・結城編】告白
意を決して結城にオレの秘密……小5以前の記憶がないことを伝えたオレだったのだが……
『あれはいつだったかな。 ほら、前に私が福田……くんの部屋で『いじめノート』と見つけちゃった時、福田……くん、話してくれたじゃない』
あー、そんなこともあったような気がする。
確か結城を初めてウチに泊めた日……だったかな。(第27話『Tシャツの向こう側』より)
「ーー……そうだったかも。 結城さん覚えててくれたんだ」
「うん」
なんということだ。
三好が口を滑らせて結城にオレの秘密を言ってしまったと思ってたのに、まさかかなり前にオレから打ち明けていたなんて。
ということはオレにはもう隠し事など無いも同然。 じゃあ結城は何に対して体をビクつかせていたんだ?
『オレの話』で反応してたからそのことに関してということは間違いないと思うのだが……
「え、じゃあ結城さん、スペースジャーニーで三好と話してたオレの話って……どんな内容だったの?」
そう尋ねるもやはり結城は「だ、だからそれは言わないよー」と視線を分かりやすく逸らす。 その後余程オレがそのことについて執着しているを不思議に思ったのか、「どうして福田……くん、そんなに気になるの?」と逆に尋ねてきた。
「そりゃ気になるよ。 だってオレに関しての話なんでしょ?」
「う、うん」
「ーー……もしかして愚痴とか?」
「そ、そんわけないよ! 私も佳奈も全然福田……くんの悪口なんて言ってないよ!?」
結城は首を全力で左右に振り否定。「むしろ福田……くんには感謝してることしかないもん!」と続ける。
「そうなの?」
「うんっ! これは本当だよ!? 本当に私も佳奈もそんな話はしてない!」
「えー、じゃあなんだー? だったらオレのこと実は好き……とかそんな話もなさそうだしなー」
「!」
「ん?」
「え?」
え、なに、今の結城の反応。
軽い冗談のつもりで言ったはずが再び結城の身体がビクンと反応。 今の今までオレを見つめながら真剣に話していた結城が静かに視線を逸らしていく。
「ーー……え、結城さん。 今の反応って」
「え? なんのことーー?」
分かりやすい。 実に分かりやすぎるぞ結城。
でもそんなことよりも今は……
ええええええええ!?!? ガチイイイイイイ!?!?
まさかの展開!! これは完全に両想いフラグ!! とうとうオレにも春がキマシタアアアアアアアア!!!!!!
そうと決まればこうしてはいられない。
まったく結城のやつめ、オレのことが好きなら好きでもっと早く分かりやすい態度を取ってくれていればいいものを!!
待ってろ。 今、楽にしてやるぜ。
よし、言う。 言うぞ。
オレはコホンと咳払いをすると超イケメンな表情を作り結城を見つめ、心の中で何百回と練習していたあの言葉を言おうと口を開いた。
「結城さn……」
「あっ! もうあんまり時間残ってないね! ていうか私やっぱりもうお腹いっぱい……福田くんはまだ食べる?」
オレの言葉を遮るように結城がメニュー表を向けながらオレに話しかけてくる。
「え、いやちょっと待って。 今からオレ、結城さんに……」
「まだお腹空いてる? 空いてない?」
「あ、え? す、空いてない……けど」
「じゃあもうこのお店出よっ! この後は雑貨屋さんとかのんびり見てから帰ろうよ!」
結城は顔を若干赤らめながら立ち上がると伝票を手に持ちレジへ。
オレはそんな結城の焦ったような姿を後ろから眺めていたわけなのだが……
あ、なるほど。 結城のやつ告白されると察して照れてんな。
内面まで本当に純粋。 そうだよな、冷静に考えたら告白ってするにしてもされるにしてもシチュエーションが大事……だとしたらやはり別れ際とかそういう時に限るよな。
「福田……くん、早く行こっ」
「あーうん。 分かった今いくよ」
その後オレたちは結城のスマートフォンに高槻さんから連絡がくるまでショッピングモール内のお店を見て回ることに。
そして来たる運命の時。
「ここまで一緒に来てくれてありがと。 楽しかった」
高槻さんを迎えに結城とともに学校へと到着したオレ。
校門前で結城が「ここで大丈夫だよ、またね」とオレに小さく手を振ってくる。
「あ、うん。 オレも楽しかったよ」
「うん、またね、福田……くん」
結城はくるりとオレに背を向け職員室のある方へ一歩足を踏み出す。
言うなら……まさしく今だ。
待ってろよ、オレたちの正式な春!!!
オレは再び意を決して結城の名を呼んだ。
「結城さん!」
結城がいつもと変わらない純粋な表情でオレの方へと振り返る。
「なに?」
「あ、その、えと……」
「福田……くん?」
や、やばいぞ。 緊張で口が……喉が震える。 ここはもう一気に……一気に吐き出すしか!!!
オレは大きく深呼吸。 その後再び息を大量に吸い込み、そして……
「ゆ、結城さん!!」
「は、はい」
「オレ、結城さんのことが好き……大好き……です! だからその、付き合ってくれると嬉しい……です!!!」
よ、よし!! よし!! 言ったぞ!!! 言えたぞ!!!
オレの視界が、オレの告白を聞いたことで大きく目を見開いた結城の姿を捉える。
あとは結城の返事を貰うだけ。
オレはまっすぐ結城を見つめたままその時を待った。
「ーー……」
「ーー……」
沈黙の時間。
結城は頭の整理が追いついていないのかオレを見つめたままその場で立ち尽くす。
しばらくしてついに口が僅かに開かれ、オレは返事を貰えるものだと思っていたのだが……
「ーー……っ」
「え?」
大きく見開かれた結城の目にはうっすらと涙。 口をぎゅっと閉じてオレに背を向けると、そのまま職員室へと走り去ってしまう。
「ゆ、結城さん!?」
名前を呼んでも今度は振り返ってくれない。
これは……どういうことだ?
先ほどまで春が来た後のことだけを想像していたオレの脳も少しずつ冷静に。
そしてようやくオレはこの状況が『フラれた』ものだと認識していったのだった。
「え、ま……マジ?」
マジかああああああああああああああああああああああ!!!!!!
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