660 【真・結城編】魅惑の間接キス 〜パフェを添えて〜【挿絵有】
六百六十話 【真・結城編】魅惑の間接キス 〜パフェを添えて〜
「はい、あーーん」
結城が先ほどまで自身で使用していたスプーンにパフェを乗せ、それをオレの口元へ。
こんな神イベント、逃すわけにはいかない!!!!
オレは欲望のままに口をオープン。
結城から差し出されたスプーンをパクッと咥えると、パフェだけでなくスプーンについているであろう結城成分も全て舐めとっていく。
う、うめええええええええええ!!!!!
しかもこれ、久しぶりの間接キッスだあああああああああ!!!
あれはいつだったっけか……5年生の頃、絶賛いじめられていた時代の結城にリコーダーを貸した時以来だよな。
オレはパフェの味と結城成分をこれでもかというほどに堪能。 そうしていると、結城が「美味しい?」と微笑みながら尋ねてきた。
「あ、う、うん! 美味しい! 美味しかった! 次オレも頼むよ!」
「よかった。 じゃあ私も残り食べちゃお」
結城はそう言うと先ほどのスプーンで再びパフェをすくってそれをパクり。
「今度はフルーツパフェ頼もっかなー」などと呟いていたのだがオレの心の中では……
うわああああああ!!! オレが舐めまわしたスプーンを結城が口に!!!!
もはや間接キスの域を超えている……そう、まさしくこれはダイレクト☆キッス!!! マウスTOマウスそのもの!! やったあああああああああ!!!!
これは完全にオレの好感度が結城の中で高い証拠だろう。
普通は男女の友達程度の関係だったらスプーンの共有とかしないはず……てことはやはり結城はオレのことがす、好き!?!?
っしゃあああああ!! テンション上がってきたぜえええええ!!!!!
ドンドン☆パフパフ☆ドンドンーー!!!
オレがそんな心お祭り状態で結城のスプーンを見つめていると、再びオレの視線に気づいた結城が頭上にはてなマークを浮かばせながら見つめ返してきた。
「今度はどうしたの?」
しかし今のオレの心と脳はピンク色のため正常状態にあらず。
こういう時に自らを制することが出来る奴が恋愛マスターなのだろうな。 舞い上がってしまっていたオレは思わず口が滑ってしまい……とんでもない発言をしてしまったのだ。
「え、あーいや!! 結城さんはあんまりそこらへん気にする人じゃないんだなーって思ってさ!」
「そこらへん? なに?」
「ほら、そのスプーンさっきオレが咥えちゃったからそれで食べたら結城さん、間接キスになっちゃうわけじゃん? だから……」
ーー……ッハ!!!!
勢いづいてオレはなんてことを……!!!
気づいた時にはもう遅い。 結城はスプーンを口元に近づけた状態でピタッとフリーズ。 小さく口を開いて「か、間接キス?」と声に出す。
「え、あ、いやその今のは忘れて……!」
「福田……くんと、私が間接キス。 キス……、間接……」
「うわああああ!! いや、ちがっ! だから今のはその……!!!」
「キ……ス……」
スイーツでその辺のことなどあまり考えていなかったのだろう。
結城は静かにスプーンへ視線を落とす。 その後口元に指を当てながら一気に顔を真っ赤にさせていったのだった。
「ゆ、結城さん」
「ーー……っ」
ぎゃあああああああああ!!!! やっちまったああああああああああ!!!!!
◆◇◆◇
あれからどのくらい経っただろう。
実際には2・3分くらいだとは思うのだが体感ではすでに1時間は経過。 その間オレと結城は『間接キス』というワードで一気に恥ずかしくなり無言になっていたわけなのだが……
い、いかん。 ここは何とか話を変えて空気を取り戻さねば!!
オレは必死に話題の引き出しを詮索。
とりあえず一番新しい話題……昨日のデスティニーランドでのことを話すことに。 すると結城もオレと同様この空気を何とかしたかったらしく、少し言葉を詰まらせながらも「た、楽しかったよね」と話を合わせてきた。
「う、うんそうだよね! そういや結城さん、お土産ありがと! まだ中身見れてないんだけど帰ったらすぐに見るよ!」
「あ、うん。 そうだよね、昨日はすぐに私のところにお姉ちゃんと来てくれたんだもんね。 ほんとありがとう……、あ、ママにはお土産今日渡すつもりなんだ」
「そうなんだ。 結城さんが選んだお土産なんだもん、絶対喜ぶよ」
「うん。 そうだといいな」
それからオレは結城と「あのアトラクション面白かったね」やら「ご飯美味しかったね」やらで再び盛り上がりをみせ、先ほどの何とも言えない空気感を払拭することに成功。
「また行きたいねー」などと話していると、結城が三好の話題を……「そういや佳奈、体調大丈夫なのかな」と首を傾げながらスマートフォンを取り出した。
「三好?」
「うん。 昨日バスで帰ってからお母さんと病院行ってたでしょ? どうだったのかなって」
「あー、それを今聞く感じ?」
「うん。 気になっちゃって。 ちょっとメールで聞いてみるね」
結城が「もう元気になってたらいいけど」と呟きながら三好へのメールの内容を打ち込み始める。 オレはその様子を「確かにねー」などと相槌を打ちながら眺めていたのだが、ここで昨日三好と交わしたメールのやり取りを思い出した。
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【受信・三好】やっぱさ、怒った?
【送信・三好】なんでオレが怒らにゃならんのだ。
【受信・三好】だってさ、私……ちょっと記憶が曖昧なところもあるんだけど、桜子に福田の秘密……いじめが原因で飛び降りた福田と今の福田が別人格だってこと、言っちゃったような気がしてさ。
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そ、そうだった。
三好がオレの秘密を結城に話したかどうか、結局分からずじまいだったんだ。
おそらく今三好に聞いたところで返ってくる答えは『ごめん覚えてない』。
ーー……だったらここで直接結城に聞いた方がいいのでは?
オレはメールを打っている結城にそれとなく聞いてみることを決意。
早速「三好といえばさ……」と話題を振ってみた。
「なに?」
「ほら、結城さんって三好と2人で『スペースジャーニー』ってアトラクション行ってたじゃない?」
「うん」
「今思い出したんだけどあの時、結城さんも三好も泣いて出てきたじゃん? 結局教えてくれなかったけど、何があったのかなーってやっぱり気になっちゃっててさ」
そう尋ねてみるとどうだろう。
オレの問いかけを聞いた結城の身体が僅かにに反応。 オレへ視線を上げるもすぐに逸らし、「あー、そうだね」と唇をキュッと閉じて再びスマートフォンの画面へと向き直る。
ーー……何か隠してるな。
「教えてくれたりしない?」
「うん、流石にそれは教えない」
「三好には言わないから、ここだけの話!」
「言わないよー」
『言わない』ってことはおそらく2人はアトラクションではなく、2人の会話で泣いたってことだよな。
「じゃあ、ヒント頂戴ヒント!」
「だーめー」
「もしかしてそれ……オレの話にだったりする?」
「!」
うわあああああああ!!!! 結城、可愛いけど分かりやすいぞおおおおおお!!!!
その反応は確実に図星……オレ関連の話ってことじゃないかああああああああ!!!!
オレ関連の話ってことで三好のオレの秘密を『言っちゃったような気がする』は『言っちゃった』で確定。
しかし言っちゃったものは仕方ない。 どうせ後々告白して成功したら言うことになるんだ……だったら今言っても順序が変わるだけで問題ないよな。
オレは姿勢を正すと、改めて「結城さん」と声をかけオレのことを打ち明けることに。
5年生以前の記憶がないこと、だから以前の自分がどんな性格だったのかもまったく覚えてないことを正直に話してみたのだが……
「あ、うん。 それは知ってるよ」
「そ、そうだよね。 やっぱり昨日三好が……」
「ううん、佳奈じゃないよ」
「え」
「あれはいつだったかな。 ほら、前に私が福田……くんの部屋で『いじめノート』と見つけちゃった時、福田……くん、話してくれたじゃない」
「ーー……」
あれ?
お読みいただきましてありがとうございます!!!
では作者の心の声をば……
結城ちゃん可愛いんじゃああああああああああ!!!!
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