657 【真・結城編】終止符!!
六百五十七話 【真・結城編】終止符!!
陰陽師によるとやはり一族は呪われているらしい。
そしてそれはどう足掻いても消し去ることは出来ない……もしそれを強引に消し去ろうとすれば、逆に陰陽師側に呪いが伝染し多く犠牲が出てしまうという。
「そ、それは私の今腹の中にいる子も呪われるのでしょうか」
顔を真っ青にした妊婦・ハルの問いかけに男は迷わず頷く。
「はい。 おそらくは一族に関係する者が全て消え去るまでこの呪いは続くでしょう。 なのでもし仮にあなたがここから抜け出ようと考えていたとしてもそれは無意味なこと。 一度関係を持ってしまった運命は覆すことは出来ませんから」
「そんな……」
なんということ。 これにはハルを含めた他の女性陣も皆一斉に口を紡ぐ。
しかしそんな中、男は「しかしながら策はあります」と言葉を続け、ゆっくりと皆を見渡した。
「策……ですか」
「はい。 先ほども言いましたがその呪いは国中の陰陽師を持ってしても消し去ることは不可能……しかしその力を抑えることなら可能なのです」
男の話では抑えるといっても全てを抑え切ることは無理。 ただそれを実行すれば少なからず一族の血が後世へと続く可能性が出てくるといったものだった。
一族の血が続く……それすなわちハルのお腹の子に最悪の結果が訪れないということではないのだろうか。
皆の心に一筋の光が差し込む。
「それで……どうでしょう。 試してみる価値はあると思いますが」
「どうするのじゃ」
「やろう!」
「やりましょう」
「それで私の……この子が無事でいられる未来があるのなら」
結果、一族の皆は男の提案に賛成。
早速どうすればその呪いを少しでも抑え込むことが出来るのかを尋ねてみると、男は静かに口を開いた。
「その策とは……言霊です」
「「「コト……ダマ?」」」
「はい。 言葉には魂が……力が宿ります。 なのでその力によって呪いを抑え込む……というよりは守ってもらうのです」
男はそう説明し終えると今後この一族が続いて行くための方法と言霊の力を皆に告げた。
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1つは今後、人との繋がりを持って……助け合って生きていかねばならない。 そしてそのために現在は苗字を持たない一族ではあるが苗字を持つこと……その苗字に繋がりを強固なものにする『結』を入れること。
1つは新たな命が生まれる度に、男なら生命の力を強く感じさせる『大樹』にちなんだ名前を。 女ならその芽吹きを健やかに咲かせるよう四季の始まり……春にちなんだ『桜』の文字を入れること。
1つはこの地から離れた方が呪いの影響が若干ではあるが少なくなる可能性があるため、出来るだけここから遠い地へと移り、近づかないこと。
最後に先の3つを一族の絶対の掟として後世に語り継いでいくこと。
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「そうすれば、私たちはこの代で終わらないで済む……ということなんですか」
先日息子を亡くしたハナがそう尋ねると、男は頷き、「そのハルさんのお腹の子があなた方の愛した男たちの意志を……魂を繋ぐ最後の血。 何があっても絶対に諦めず守りきってください」と続ける。
「私の腹の子が最後の血……最後に残された希望」
「はい。 もしかしたらいずれ、この呪いを与えた何者かが許してくれる時がやってくるやもしれません。 それが何年先になるか何百年先になるか、はたまた果てし無く続くのかは到底分かり得ませんが、更なる呪いを受けぬよう、今後はより神仏を敬い人を助けることを心がけてくださいね」
男の話を聞き終わった頃には全員の気持ちが1つに。
この血を絶やしてはならない……その一心ですぐにこの地を離れる準備を始めた。
「ハルさん、お腹の子もハルさんも、私らがサポートするで、いつでも頼りぃね!」
「そうですね。 私も全力でお手伝いします。 力を合わせて私たちが愛した血を……一族を守りましょう」
数日後、老婆を除いた女3人は彼の地を離れて遠い西の方へ。
彼女たちは男の助言通りに苗字を『結』の文字の入った【結城】と名乗ることにし、生まれた子供の性別は幸いにも男……彼女たちは3人で話し合った結果男児を【樹】と命名。 結城の血を絶やさぬよう……そして更なる恨み・呪いを買わぬよう、熱心に愛情を込めて男児を育てたのであった。
◆◇◆◇
『ーー……というのが真相なのや! どうや、分かったのや? 流石に神、オニュシもビックリしたのやー?』
ロリ天使が説明を終えると周囲の映像は消え、再びオレの家のリビング内……いつも通りの景色に。
オレと美香の姿をした神様は無言でお互いの顔を見つめ合い、そして……
「ちょおおおおおおおおい!!! 神様ああああああああ!!! 結城や結城のお母さんのデスルート作ったきっかけ……神様じゃねえかああああああ!!!!!!」
『ぎゃああああああ!!! ワシじゃったああああああああああああ!!!!!』
確かに今思い返せばこの神様、茜のときや優香の時はなんだかんだで直接手助けをしてくれていたのだが、結城の時は基本的に助言だけ……直接助けには来てくれていなかった。
もしかして心のどこかで……結城があの時の憎き一族の末裔とは気づいてはいないながらも、何か感じるものがあったのだろうか。
まぁそんなことオレに分かるはずもないんだけどな。
ただ今言えるのはこの瞬間より結城の人生が変わること……神様が『うわああああ許す……許すのじゃあああ!!!』と宣言したことにより、結城一族が背負っていた呪いがさっぱり消えたということだ。
ということはこれで悪くなっていく一方だった結城母の病気の容態ももしかしたら……!!
ちなみにそのことをロリ天使に尋ねてみたのだが、返ってきた答えは『それは分からんのや。 呪いなどなくても人は病にかかるし事故や突然の別れも普通にあるのや』だった。
「えええ、そんなぁ」
『まぁでもあれかや。 あの時陰陽師はさりげなく言霊の力が強くなるよう術をかけてたのや。 だから偶然かどうかは謎なのやけど、あの美桜も『桜』の入った名を授かりし者……きっといい方向へ向かうんじゃないかや?』
「おお……おおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
お読みいただきましてありがとうございますー!!!
とうとう……とうとう結城ちゃん……!! ここまで来ましたあああああああああ!!!!