648 【真・結城編】特別編・修羅の温泉②
六百四十八話 【真・結城編】特別編・修羅の温泉②
男子の蔓延る大浴場脱出を試みることしたエマ・希・花江・美波・麻由香の5人。
まずは男子たちの行動を観察して隙があるかどうかを観察していたのだが……
「あー……これはダメね。 みんなおっきな温泉でテンション上がって走り回ってる……これじゃあどうしようもないわ」
エマが深いため息をつきながら「どうする?」と4人に声をかける。
「「「「ーー……」」」」
「ん?」
4人から返事がまったく返ってこない。
一体どうしたのだろうと思い視線を4人の方へと向けると、なんということ……作戦のことなど完全に頭から飛んでしまったのか4人は顔を真っ赤にさせながらそれぞれ股をキュッと閉じていて、何に対してなのかは分からないが感想をそれぞれ口にしていた。
「ウチ、こんなじっくりと初めて見た」
麻由香が目の前ではしゃいでいる小僧……いや、仔象を見ながら呟くと、美波が「確かに。 てかよく見るとあれだね、大きさはもちろんだけど、形とかもみんな違うんだ」と目を大きく見開きながら頷く。
「だよね。 美波って実際に見たことある?」
「ううん、麻由香とおんなじで蹴ったことくらいかな。 あれがおっきくなるんだよね教科書に載ってたみたいに」
「あ、見て美波! あっちの子、おっきくなってる!」
「ほんとだスッゴ!! てか形変わってんのエロくない!?」
「わかるー!!」
麻由香と美波は初めて実際に目にした野生の仔象に大興奮し、お互いに手を繋ぎながら感想を口にしあっている。
一方その頃花江と希は……
「西園寺さんは見たことあるのー?」
「うん、5年の時……荒ぶってた頃に何人かは。 水島さんは?」
「花ちゃんはお兄ちゃんいるから毎日見てるよー」
「そうなの!?」
「ちっちゃくて可愛いんだぁー。 ていうか西園寺さんどうしたの? お手洗い行きたいの?」
「う、ううん。 なんかたまにあるんだよね。 ここからヨダレみたいな汗出てくるの」
「え、西園寺さんそれって……」
ーー……あぁ、これはダメだ。
エマ自身ももちろんこのミニ動物園を目の前にして変な気分……高揚していないと言えば嘘になる。
しかし今はそんなことよりも自分たちのこと……女としての尊厳を守ることが何より需要だ。 そのために今出来る最善の方法とはなにか。
「ほら、みんな何見入っちゃってるの? バレたらおしまいなのよ!」
とりあえずこの4人にはもっと危機感を持ってもらわなくてはいけない。
エマはうっとり見入っていた4人のお尻を順にペチンと叩いていく。
ペチンッ
「え、あっ……やば、ウチとしたことが」
ペチンッ
「ちょっと待ってよエマ。 あんなの振り回してる方が悪いんじゃん」
ペチンッ
「むー、花ちゃんお話してただけなのにー」
ペチンッ
「ひゃふっ……、なんか出たっ」
なんとか仔象の動物観察から我に返ることが出来た4人。
エマはそんな4人に向けて今自分たちが出来うる最善の策を伝えることにした。
「もう分かってるとは思うけど、男子たちははしゃぎ過ぎてて脱出のタイミングがまるでないの。 だからここは待ちの姿勢……男子たち全員が出ていくまで、ここで身を潜めて耐えるってのはどうかしら」
花江の記憶によれば男子たちの定められている入浴時間は大体30分。
すでに男子たちが来てから半分の時間は経っていたため、残りの15分弱を何とか乗り切ろうと身を低くして待機していたエマたちであったが……
「おい! あのでっかい岩かっこよくね!? ちょっと行ってみようぜ!!」
「おー!! いいな!! なんか宝物ありそうでカッケー!! 髪洗ったらすぐ向かうわ!!」
「オッケー! じゃあ先行ってるなー!!」
「「「「「!!!!!!!」」」」」
それは突然。
エマたち5人の耳が捉えたのはバシャバシャとお湯を掻き分けながらこちらへと向かってきている1人の足音。
ここでバレてしまっては一巻の終わりだ。 5人は互いに目を合わすと小さく頷きあった。
◆◇◆◇
「よっしゃー! もし宝物あったら先に見つけた俺の……え」
単独で禁足地へと足を踏み入れた仔象。
そこで彼の視界が捉えたものは……
「え、だ、誰? なんでタオルで顔隠して……ていうか、え……じょ、女子?」
広がっていたのはまさに性……いや、聖域。
澄み切った土地にふっくら柔らかそうな魅惑の谷、余計なものが付いていない綺麗なデルタゾーン。 しかもそんな聖域が5つもあるのだから言わずもがな仔象は一瞬で興奮状態に陥ってしまう。
「お……おおおお」
これぞまさしく先ほど言っていた宝。 仔象は鼻を高く掲げながらそこに魅入っていたのだがそれは一瞬……タオルで顔を隠した1人が仔象の腕を掴み、5つの聖域の中心へと引き入れると耳元で小さく囁いてきた。
「友達をここに近づけないてはダメ。 じゃないこれ……無くなっちゃうかもよ」
何者かの指先が背後から自身の大事な宝物に触れる。
「ひぃい、変な感触だし」
「え、どんなどんな……うわ、本当に入ってんじゃん」
一体誰なのかは分からない。
しかし今言えるのは宝を期待して足を踏み入れたはずの自分が逆に宝を奪われそうに……狙われているという事実。
ここは……要求を呑むしかない。
「わ、分かりました言う通りにします」
「よし、いい子だね。 じゃあ早速声かけて」
仔象は小さく頷くと岩場から顔を出して絶賛髪を洗っている友達に「な、何もなかったわー! じゃあ俺、先に部屋に戻ってるなー!!」と報告。 その後入浴時間ギリギリまでそこで拘束され、近づいてきそうな男子がいるとそこから飛び出し驚かせて『何も面白いものないから戻った方が絶対いいぞ』と言わされていたのだった。
ーー……鼻を高く掲げながら。
◆◇◆◇
「いいわ、よく出来たわね」
「あ、はい。 ありがとうございます……」
「ていうかキミどこのクラスの男子? ウチ見たことないんだけど……隣町出身かな? にしてはおとなしいよね」
「えっと、ご、5組で隣町出身です。 確かに俺、最初はイキってましたけど西園寺組に入ってから心入れ替えたんです」
「ーー……っ!!」
「あーははは、だって! すごいね西園寺組! なにかご褒美あげたら!?」
「あー、キミ、今喜んでるでしょー? ねぇみんな、多分これもうすぐ噴火するよー」
身も心も癒す温泉・大浴場。
その日の夜、1人の仔象が新たな境地を開いたのは言うまでもない。
一方で花江を除くエマ・希・美波・麻由香の4人はここで初めて火山が噴火する瞬間を体験……目の当たりにして大人の階段を1つ上ったのだった。
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5つの聖域……是非とも拝みたいものですな!!!!