647 【真・結城編】特別編・修羅の温泉①
六百四十七話 【真・結城編】特別編・修羅の温泉①
ダイキたちが当日帰省の『デスティニーランド』を満喫しすでに帰宅した時間。
その頃一泊二日の『海』を選んだ女子たち……エマ・ベルナール、西園寺希、小畑美波、多田麻由香、水島花江は海に隣接しているホテルの温泉に浸かりながら女子トークで盛り上がっていた。
今話しているのは『理想の恋の発展はどちらかが先に片想いとかしてるんじゃなくて、お互い同じタイミングがいい』という議題。 皆が「「あー、あり!」」と頷いている中、いち早く美波が手を挙げ口を開く。
「分かる!! 床に落とした消しゴムを拾おうとした時に手が重なるのとか、そういう偶然ってか必然系憧れるよねー!!」
この美波の発言には皆意外だったようで一瞬の静寂が流れる。
そんな状況を見た美波は「ちょ、ちょっとなんで無言なわけ!?」というツッコミをし、エマが冗談ぽく笑いながら「ごめんごめん」と謝罪を入れた。
「ちょっと意外だったのよ。 ミナミってもっと『私のこと好きになれー!』なタイプだと思ってたから」
「えー、エマひっどー!! みんなもそう思ってたわけ!?」
美波が周囲をぐるりと見渡すと希、麻由香、花江が同時にウンと頷く。
「ほらみなさい」
「はあああ? なんでそうなるのさ!? 私だって普通に女の子女の子してんだからね!!」
ここから話題は一気に路線を変更。
先ほどの美波の『女の子女の子してる』に対しエマが「例えば?」と尋ねると、美波は恥ずかしげもなく最近心が女の子してた瞬間を例にす。
「例えば最近で言ったらアレじゃん! 保健でゴムの授業してたっしょ!? 私あれ先生が模型に着けてるところ、恥ずかしくて目ぇ逸らしちゃってたもん!」
美波が性の話題を出したからなのか偶然なのかは分からないが、希・エマの2人がほんのり顔を赤らめながら2人揃ってキュッと股を閉じる。
「ん? エマも西園寺さんもどうしたの? 姿勢正しちゃって」
「べ、別になんでもないわよ。 ねぇノゾミ」
「う、うん。 ちょっとムズムズしただけだから」
異性に関する下ネタトークほど盛り上がるものはこの世にないのだろう。
中身が高校生のエマとネットや漫画で知識を得た麻由香意外はさほどそれらに関しての知識のない者たち。 話す内容はまさに小学生レベルとなっていたのだがやはりそこは異性の秘密……少しのキーワードだけで話がどんどん膨らんでいく。
「でも男子ってかわいそうだよね。 わかりやすいところに弱点あるし。 ウチ同情するよ」
「だよね! それにちょっと興奮しただけでバレちゃうってのもかわいそうかもー。 自分で抑えられないのかなアレ」
「いや小畑さん、流石にそれはムリじゃない? 自制効かせられるんだとしたら、福田くんワザとじゃない」
「まぁ確かにダイキならあえてやりそうね」
「え、エッチに目覚めた男子って女子と話すときおっきくなるんじゃないのー? 花ちゃんと話す男子、ほとんどがおっきくしてるよー」
この皆の話している『大きくする・なる』という意味は心のことなのだろう。
それからも5人は自分にはない男子の話で大盛り上がり。 一応周囲にも配慮して巨大温泉の隅……人工的に作られた岩場の裏に場所を移して再びコソコソと盛り上がっていたわけだが……
ここは温泉。 この小五転生において『お風呂』はかなり縁が深く、もちろん何も起こらないわけがない。
それは美波が半分ふざけながら「でもあれだよね、一回でいいから女子だって堂々と言ってみたくない? 男子が『パンツ見たーいとか胸みたーい』とか言ってるみたいにさ、『アレ見たーい』って」と発言してすぐのことだった。
なにやら周囲が先ほどと違って騒がしい。
気になった希が岩場から顔を覗かせる。 しかし……何を見たのだろうか。 すぐに顔を引っ込めてものすごい勢いで顔を紅く締め上げていく。
「ん、どうしたの西園寺さん」
「ノゾミ? なにかあった?」
気になったエマと美波が頭上にはてなマークを浮かばせながら希同様に岩場から顔を覗かせる。
すると……どういうことだろう。
先ほどまでそこにいたはずの女子たちの姿は一切確認されず、何故かそこにはスッポンポンの男子たちで溢れているではないか。
「え、え? どゆことエマ!」
「エマに聞かないでよ分かるわけないじゃない!!」
意味の分からなかった皆はとりあえず岩場で息を潜めることに。
すると男子たちの会話からとんでもない事実が聞こえてきたのだった。
「ていうか俺らラッキーだよな! まさか女子たちの後に温泉入れるなんて!!!」
「あぁ! 時間遅らされてて最悪だったけどいい匂いするなー!!」
「バーカ、それはシャンプーとかボディソープの匂いだろ」
「おい、金色の毛落ちてたら俺にくれ」
◆◇◆◇
「ーー……え、ここってずっと女湯じゃなかったの?」
麻由香が信じられないような表情で皆を見渡す。
「う、うん。 私は少なくとも女湯だって思ってたよ?」
「ノゾミも? エマもよ」
「ええええ、どうなってんのーーー?」
希・エマ・美波は麻由香と同じく分かっておらず、今発言していないのは5人の中で花江だけ。
4人の視線が一気に花江へと集まる。
「え、どうしたのぉー?」
「ハナエはどう? もちろんここが女湯だって思ってたわよね?」
「ううん、花ちゃん知ってたよー。 先生言ってたじゃん『ここの大浴場は時間制で男湯と女湯が入れ替わるから、時間になったら男子入るから早めに出なさいよー』って。 それでちょっと前にみんな出て行ったのにエマちゃんたち出て行く気配ないから、大丈夫なのかなーって思ってたんだぁー」
「「「「えええええええええええ!?!??!?!?!」」」」
4人は花江の言葉に驚愕。
この瞬間、『ミッション:大浴場から脱出せよ』が開始された。
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