645 【真・結城編】特別編・その時少女たちは②
六百四十五話 【真・結城編】特別編・その時少女たちは②
好きなんだけど好きになる資格なんてない。 付き合いたいと思わない。
この言葉の意味が理解できなかった桜子は意を決して佳奈に尋ねてみることに。
すると佳奈は自虐を込めたような……少しばつの悪そうな笑みを浮かべた。
「いやだってさ、桜子も知ってると思うけど私、福田をイジメてた側の人間だったんだよ? なのに好きになっちゃいました……だなんて都合が良すぎるにもほどがあるっしょ」
「そう……かな。 私はそれでもいいと思うよ? だって佳奈と福田……くんのやりとりを見てても2人とも楽しそうだし」
「楽しそう?」
「うん。 お互いに信頼しあってないとあんなに堂々と言い合いとかも出来ないよ。 今の佳奈や福田……くんを初めて見た人がいたとしたら、『過去に佳奈が福田……くんをいじめてた』って誰かが言ってたとしても信じないと思うな」
「そりゃあそうだよ。 だって今のあいつは……」
「?」
一体何を言おうとしていたのだろう。
途中まで口にするも、佳奈は突然ハッと我に返ったかのように口を紡ぐ。
「佳奈?」
「ご、ごめん。 なんでもない」
「え、でも……」
「ううん、本当にごめん。 それ以上は言えない」
よく分からないが何か深刻な事でもあるのだろう。
これ以上は詮索しないでほしいという空気が佳奈の表情から伝わってくる。
「そ、そうなんだ。 ごめんね佳奈」
「ううん、謝るのは私の方。 変な話題振ってごめん」
それから2人は会話をやめて手を繋いだまま宇宙の旅を楽しむことに。
しかし最後の惑星……周囲を明るく照らす太陽に到着した途端二人の口から「あっ」と声が漏れた。
「えっ」
桜子が佳奈の方へ視線を向けると、佳奈が「あはは、私ら同じこと考えてたのかもね」と恥ずかしそうに微笑んでくる。
「も、もしかして佳奈も?」
「うん。 多分桜子と一緒。 桜子もあの太陽を見て誰かさんを想像しちゃったんだよね」
「ーー……うん」
答えはお互いに言わずとも分かる。
福田ダイキ。
太陽エリアが終わると空飛ぶトロッコの向かう先には旅の終了を知らせる大きな扉。
扉を抜けトロッコから降りた2人はすぐにダイキのもとへは向かわず、出口扉の少し手前辺りで静かに向き合いアハハと笑った。
「ちょっと桜子まだ涙流してたのー? さっきまでは暗かったからそこまで分からなかったけど、めっちゃ目ぇ赤いよー。 福田にどう言い訳すんのさー」
「そ、それを言ったら佳奈もだよ。 佳奈も目、赤くなってるよ?」
「私はいいの。 きっとあいつは私らの顔見るなり桜子のことは心配するだろうけど、私のことはイジって終わりだから」
「そうなのかな。 心配してくれると思うけど」
「いやーやめてよー。 心配されてるところ想像するだけで鳥肌が立つ……まぁもし仮にそうなった時は桜子をダシにして私は逃げるわ」
「えー、ちょっとは私もフォローしてよー。 私、佳奈みたいに立ち回り上手じゃないんだから」
時刻はお昼時間を少し過ぎた頃。
桜子のお腹がグーッと鳴いたのを合図に佳奈が「そろそろ行こっか」と出口の扉を指差す。
「そうだね、福田……くんもお腹空かせて待ってるだろうし」
「んなこと言っちゃって。 ほんとは桜子のお腹がもう限界なんじゃないのー?」
「そ、そんなことないもん。 か、佳奈だってお腹空かない?」
「あー、私はこう見えて低燃費だからさ。 とりあえず福田に桜子がお腹空いてるって伝えてあげるね」
「もー! 佳奈ぁー!」
「あはははは。 ほっぺ膨らませてる桜子可愛いー」
こうして桜子は佳奈に腕を引っ張られながら外へ。
しかしいざ出口の扉を抜けダイキの顔を見た瞬間、先ほどまでの2人の明るいやりとりは何処へやら……再び涙が自然と溢れてきたのだった。
「おおおおおおおい!!! どうした大丈夫か、なんで泣いてんだ!? 中で何かあったのか!?」
こちらに気づいたダイキが驚いた様子で駆け寄ってくる。
「べ、別になんでもない。 感動しただけだし」
まさか初っ端自分に来ると思っていなかったのか、佳奈は若干戸惑いながらもダイキの言葉に反応。
唇を尖らせながらダイキから視線をそらす。
「そ、そうなのか? なら別にいいんだけど……でも三好たちが乗ったのってトロッコで宇宙の旅に出る的なやつだったよな。 どこに感動したんだ?」
「いいじゃん別に。 それよりほら、これ終わったらご飯行くって言ってたっしょ。 早く行こうよ」
「え、あ、あぁ……そうだな。 じゃあ行くか」
お読みいただきましてありがとうございます!!
三好ちゃんがダイキと付き合いたくない理由は……ここまで続けて読んでくださってる皆さんならもうお分かりですよね!!
共通ルート終了の444話から【真・結城編】に来られた方は、是非【三好編】をご覧ください! そこに理由が明かされておりますっ!




