639 【真・結城編】降臨!?【挿絵有】
六百三十九話 【真・結城編】降臨!?
エマから聞いた話では、昼休みに女子トイレで起こっていたことは完全なイジメ。
小畑たちの報告により教師たちが迅速に動き、加害者側の女子たちは全員自宅謹慎が決定……校長からイエローカードを言い渡されていたとのことだった。
「そういやミナミ、ルンルンだったわよ。 これで武勇伝1つ出来たって」
「さ、流石すぎるな」
「あの貪欲さがセンターに必要なものなのかもね」
「なるほど」
「それにしてもどうしたのダイキ。 さっきからスマホの画面越しに自分の顔なんか確認して。 ニキビでも出来たの?」
エマが「どこに出来たの? おでこ? あご?」と尋ねながら顔を覗かせてくる。
「なぁエマ」
「なによ」
「オレって……格好つけたとき、痒そうな顔になってんの?」
「は?」
かなり真剣に聞いてみたのだがエマは答えてくれず。
オレは悶々とした気持ちで残りの授業を過ごし、放課後には優香から届いたメールとにらめっこをしながら買い物ミッションを無事成功させたのであった。
◆◇◆◇
それからあっという間に1日が過ぎて翌日の放課後。
指定された駅の改札口付近で待っていると、「ダイきちくーん!」とオレを呼ぶ声。 振り返ると茜が手を振りながら小走りで駆け寄ってきていた。
「おー茜、時間より早かったな」
「それを言うならダイきちくんもだよ。 どれだけ早く来てるの? まだ待ち合わせ時間まで30分あるんだよ?」
「学校終わってすぐ向かったんだ仕方ない。 それに来たことない駅だったから早めに着いて安心したかったんだよ」
「そっか、ありがとねダイきちくん。 じゃあ行こっか」
「お、おう」
行き先を伝えられていないオレはただただ茜の後ろを歩いてついていくことに。
駅の規模的にはかなり小さめで、駅を出て周囲を見渡しても大通りどころか商業施設もあまり見当たらないことから遊園地とかそういった類のものではないのだろう。
一体どこに向かってるんだ?
なんとかして周囲の景色からヒントを得ようとしていたオレだったのだが結局答えは見当たらず。
そうこうしていると茜が「ここだよ」と立ち止まり、指差した先へと視線を向けたオレは「えええ?」と驚きの声をあげた。
「えーっと……ここは、神社?」
「そうだよ」
オレの視界に広がっているのは少し大きめの神社。
独特の静けさ漂う神聖な雰囲気を放っており、周囲にはたくさんの緑が広がっている。
「でもなんで神社……それも親とじゃなくてオレなんかと……」
オレは少しの間そこで腕を組みながら考えることに。
そして答えが閃いたのは神社の景色から茜に視線を移した時……茜の顔を見た瞬間にオレは全てを理解したのだった。
「あ、あああああ!!! そうか、ここ……前に茜がちっちゃい頃に初詣に行ってたっていう神様の神社か!!」
「うん、そう! よく分かったね! 今日は改めて神様にお礼を言いに来たかったんだ。 ほら、手紙にも会いに来て欲しいって書いてたでしょ?」
なるほどな。 そういや茜のやつ低学年の頃にはこの辺に住んでて初詣にも来てたって言ってたし、先ほど茜が言ったように最後に神様からもらったオレと茜宛の手紙には『もし可能ならまたあの神社に会いに来て欲しい』的なことも書かれてたような気がする。(第284話『ドッキドキなトーク!』・第307話『メッセージ!!』より)
「すげぇな、ちゃんと覚えてたんだ」
「もちろんだよ。 1日たりとも私は神様のことを忘れた日なんかない……。 ずっといつ行こうかなって悩んでたんだけど、ダイきちくんと再会出来て、今がタイミングなのかなって思ったんだ」
こうしてオレと茜は神社に入り本殿へ向かうと、お賽銭を入れ各自神様への感謝の気持ちを伝える。
もちろんそこでは神様は姿を現さず、オレは参拝ついでに結城母へのお守りを購入して神社を後にしようと敷地内の長い階段をおりていたのだが……
「んーー」
「どうしたのダイきちくん」
とある考え事をしていたオレが無言でお守りの入った小さな紙袋を見つめていると、茜が不思議そうに首を傾げながらオレを見てくる。
「いやさ、茜まで来てるのに神様来ないんだなーって思って」
「そりゃあそうだよ、神様の現世用の身体は私がもらったんだもん。 手紙にも『もう視えないかも』って書いてたし」
「でもさ、仮にも神様だろ? 霊体の姿……あのおじいちゃんの姿で出て来てくれても問題ないだろ。 茜はちっちゃい頃にその姿で出会ったわけなんだしさ」
「それはそうだけど……」
あの神様の事だ、茜とは絶対に話したがっているに違いない。
出てこなかった理由として考えられるのは……他にも僅かだけど参拝者がいたからではないのか?
そう考えたオレは何か良い案がないか一気に脳を回転させる。
すると、入院中の前の姿の茜と話していた時の会話を突然思い出した。
『私がトイレを我慢できなくて茂みに隠れてしようとしてたら、少し離れた木の隙間からこっちを覗いてたんだ』
ーー……!!!!!
これだあああああああああああああ!!!!!
閃いたオレはすぐに茜の方へ体を向けて茜の手をギュッと握りしめる。
「ど、どうしたのダイきちくん」
「茜、オレ……いい事思いついてしまった!!!」
「い、いい事?」
「あぁ、上手くいけば神様と直接会って話せるぞ!!!」
「えっ!」
茜の目が大きく開かれる。
茜もなんだかんだで神様に会いたかったのだろう……小さく深呼吸し気持ちを整えてると、改めてオレに「それで……どうしたら神様と会えるかもしれないの?」と尋ねてきた。
「茜、よく聞いてくれ」
「うん」
オレの静かな問いかけに茜は真面目な……しかし少し緊張したような表情で頷く。
「今から茜は……」
「ーー……ゴクリ」
「前と同じか似たような場所……そこでトイレをすれば会える可能性があるかもしれないぞ!!!!」
「え……、ええええええええええええええ!?!?!?!?」
オレの天才すぎる発案に茜はしばらくの間絶句。
しかし数分後、茜から返ってきた答えは「この年になって茂みでトイレするのは流石に恥ずかしいよ」という却下の言葉だった。
「ええええ!?!? なんで!?!?」
「だって私もうそんな小さくないんだよ!? 会いたいよりも、恥ずかしさの方が勝っちゃうよ」
「くそー、ダメか」
オレは茜の意思を受け取りつつも、先ほどオレが出した案にはかなりの自信があったため、「じゃあトイレしなくていいからせめてその場所でパンツ脱いで置いてみて!!!」と別の方法を提案しながら頭を下げる。
「パンツを!? 置くの!?」
「そう!! 置くの!!!」
「その場で脱いで!?」
「そう!! その場で脱いで!!」
オレの熱量に負けたのか、はたまた野外でトイレをするよりはマシだと思ったのか。 茜は「じゃあ……それならいいけど、3分だけだよ」と時間制限を設けて了承。
その後オレたちは茂みに入り当時の茜の記憶を頼りに進んでいくと、円状の……周囲を木々で囲まれた不自然に開けた場所を発見した。
「なんだここ。 ここだけ木が生えてないな」
「そうだね。 それとダイきちくん、ちょうどここら辺が私がトイレしてた場所だよ」
「なるほどこの辺りか。 じゃあとりあえず頼めるか?」
「う、うん。 本当にこれで会えるのか信じがたいけど」
茜は早速パンツを脱ぐと、それをそっと円状の空間の中心に置く。
ふむ、純白な真っ白パンツ。 良い趣味してるじゃないか。
「ちょっとダイきちくん、恥ずかしいからあんまり見ないでよ。 ほんとエッチだよね」
「なんだよく分かってるじゃないか。 ならもっと凝視しても問題ないな」
「もー。 本当に3分だけだからね」
オレがパンツに見惚れているとどうだろう、どこからともなく鈴の音が鳴り響き出して……
「あ、上だ」
「え?」
オレたちの頭上……神々しい光とともに華やかな衣装を身に纏った美香の姿をした神様が姿を現し、その大きな羽織を優雅になびかせながら静かに地面に降りてきたのだった。
「ほら、やっぱり来た」
「えええ……」
神様……美香は静かに地面の上に降り立つと、「おぉ」と呟きながら置かれていた茜パンツを手に。
その後それを大事に握りしめながらオレたちへと視線を向けた。
「茜、ダイキ、久しぶり。 そしてこのパンツは神への……美香への捧げ物とみた。 だから美香がもらう」
「おう、久しぶりだな神様……てかまたその姿なのか」
「ちょっ……え、ええええええええええええええ!?!??!?!」
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