637 【真・結城編】想像力が足りない
六百三十七話 【真・結城編】想像力が足りない
結城のお別れ会も無事に……ではないが盛り上がったまま終了。
そしてその翌日、オレたちは結城と高槻さんを見送るため、マンションの外へ集まっていた。
「それじゃあお姉さんも福田くんも、エマちゃんもエルシィちゃんも……そして昨日知り合ったばかりですが美咲さんも、短い間でしたがお世話になりました」
迎えにきた軽ワゴンの前で高槻さんがオレたちに頭を下げる。
「うう……桜子ーーーー」
このお別れには優香が一番大号泣。
結城を強く抱きしめると、「また遊びにきてね」と胸に顔を擦り付けながら懇願。 そんな優香に結城は「ありがと、お姉ちゃん」と優香の頭を優しく抱きしめた。
「ちょっとゆーちゃん、みんな泣いてないのになんで一番お姉さんのゆーちゃんが泣くかなー。 釣られてアタシまで泣きそうになんじゃん」
「だってダイキたちは学校で桜子に会えるけど、私はもうほとんど会えなくなるんだよ? そんなの寂しい……こんなにも仲良く家族みたいに親しくなったのに……!」
そうか、確かにオレたちはまだ学校で会えるって気持ちがあるから耐えられてるけど優香はそうじゃないんだもんな。
優香と結城は姉妹の契りを交わしたほどの仲……いわばもう姉妹だ。 妹が遠くに行ってしまうんだからそりゃあ辛いか。
「忘れ物はない? あったらいつでも連絡してね、すぐにお姉ちゃんが届けに行くから」
「お姉ちゃん、もう私引っ越すんだから忘れ物なんてないよ。 今日家の中にあったのだって布団だけだし、それももう車の中に詰め込んだんだから」
「あ、でもまだ昨日の洗濯物あるよね! じゃあそれ近いうちに持っていく……」
「ううん、それはまた私がお姉ちゃんや福田……くんの家に泊まる時のために置いといてほしいな」
「ーー……!!! うん、そう、そうだねそうするよ!! 桜子ーーーー!!!!」
こうして結城と高槻さんは結城母の入院している病院近くの家へと出発。
見送った後エマたちとはそこで解散し、オレは昨日のパーティーの後片付けを……ギャルJK星は家に戻ってからも泣きじゃくる優香をなだめていた。
オレが何を言っても無意味だからな。 ここは優香のことを一番よく知っているギャルJK星に任せるぜ。
「ほらゆーちゃん、そんな泣いてたら顔がぐちゃぐちゃなっておばあちゃんになるよー?」
「いいもん、私おばあちゃんで」
ふてくされるように机の上で突っ伏す優香の顔をギャルJK星は丁寧に持ち上げ顔を近づける。
「そんな子供みたいなこと言わないでさー。 もう十分泣いたんだから次のフェイズ行こうぜー?」
「次の……フェイズ?」
「だべ。 ゆーちゃんはもっと桜子と一緒にいたいんだべ? だったらそうするにはどうするかを考えるのだ」
「どうするかって……そんなのどうにもならないに決まってるじゃない」
優香がプイッと視線を逸らすとギャルJK星は更に顔を近づけ「ノンノンノン」と首を左右に振る。
「あまい、あまいぞゆーちゃん。 想像力が足りないにゃー」
ギャルJK星はニコッと微笑むとスマートフォンで何かを検索……その結果を表示させた画面を優香に見せた。
「ーー……なにこれ、これがどうしたの?」
「アタシからはこれ以上言わん。 ただここには何が映ってる?」
オレもかなり気になったので覗き込んでみると、ギャルJK星のスマートフォンの画面に映し出されていたのは何やら地図。
そこには病院を中心とした周辺施設が映し出されていて……
「ーー……そっか。 そういうこと? 美咲」
小さく呟いた優香が確認をとるようにギャルJK星を見上げると、ギャルJK星は静かに頷く。
ーー……え、どういうこと?
まったく意味がわからないオレを他所に2人の会話は続く。
「んじゃ、ゆーちゃんはこれから何するべきか分かったかにゃ?」
「うん。 勉強する」
「お、いいね。 んじゃアタシもバイト来月で辞めて一緒に勉強するべ」
「美咲も……いいの?」
「もちろん、アタシとゆーちゃんはこれからもずーっと友達……ズッ友だべ?」
「ありがと美咲」
「いいってことよ」
んんんんん???
それからの優香の行動は早く、オレとともに昨日の片付けを一瞬で終わらせると「参考書や問題集買ってくるね」と外へ。
ギャルJK星と留守番することになったオレは、先ほどの件について尋ねることにした。
「ふっふっふ、ダイキもまだ想像力が足りないようだにゃー」
「ええええ?」
ギャルJK星はニヤリと微笑むと再び先ほどと同じ画像をオレの前へ。
「ここに何が写ってる?」と今度はオレに尋ねてきた。
「え? 病院」
「だよね。 もちろん分かってると思うけど、ここは桜子のママが入院してる病院だ。 んで、その周辺に目立った施設何がある?」
施設?
未だに分からないオレは目についた施設名を読み上げていくことに。
そこでオレはあることに気づく。
「病院、老人ホーム、ガソリンスタンド、コンビニ、ファミレス、保育園、幼稚園、中学校、高校、大学……あ、あああああああああ!!!!!」
なるほど、そういうことか!!!
オレが目を大きく見開きながらギャルJK星を見上げると、ギャルJK星は「お、ダイキも分かったようだにゃ!」と親指を立てる。
「うん分かった!! そういうことだったんだ!!」
「そう、桜子はママの近くに居たいから引っ越した……ということは、中学はその病院から一番近いここの私立を選ぶ可能性が高いよにゃ。 そしてここの中学は中高一貫で近くに大学。 この大学にさえ受かれば、再来年から桜子の近くにいれて……かつこの家に泊まりにくることがあれば一緒に来れるってわけさ!!!」
「おおおおおおお!!!!!」
大学名を調べてみると、どうやらなかなか高い偏差値。
ギャルJK星曰く優香の成績はお世辞にも優秀というわけではない……だからその大学に受かるべく今から準備を始めるということだったのか。
「さすがは星さん……天才すぎる!!!」
「だろー? アタシもそう思った!! 学力はゆーちゃんよりも下だからこれからアタシも頑張らなきゃだけどにゃー!!」
これは……オレも全力で応援するしかないぜ!!!
ぶっちゃけ脳裏では結城母の『多分私はもう長くはない……』の発言が浮かんだのだが、あえて今教える必要はないだろう。 茜の写真効果で良くなっていくはずだしな。
オレは優香とギャルJK星のサポートを全力でしていくことを決意。
これからの勉強の日々で何があったら嬉しいかを早速尋ねる。
「んーなんだろ、多分来月の終わりくらいからアタシも週末とか泊まり込みで勉強することになるとは思うんだけど、別に思いつくものなんもないなー」
「え、そうなの?」
「うん。 強いていうならお皿洗いやお風呂掃除……洗濯物干しくらいじゃない? そしたら毎日のゆーちゃんの負担グッと減るはずだし」
「なるほど分かった!! ありがとう星さん!! オレ、全力でお姉ちゃんや星さんのサポートするよ!!」
「おーおー頼り甲斐あるねぇ!! んじゃ頼むぜダイキー」
「任せてよ!!!」
こうしてオレは日々の簡単な家事手伝いをすることに。
最初は慣れないだろうがいずれプロ級に育ってやる……安心して勉強に集中してくれな優香にギャルJK星!!!
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