634 【真・結城編】どうしてここにいる!?【挿絵有】
六百三十四話 【真・結城編】どうしてここにいる!?
あれから数日。
あー、モヤモヤするぜ。
「ねぇ福田」
「なんだ三好」
「なんか美波、最近めっちゃ機嫌いいんだけど何か知ってる?」
「ーー……し、知らん」
「そっかー」
1つは今三好と会話している通り、最近オレだけが知ることとなってしまった小畑が来年アイドルとしてデビューする件。
同じメンバーだった2人は数日前に電撃デビューしたらしいので、追加加入という形になるとのことだ。
本当にあれはオフレコ……誰にもまだ言ってはいけない機密情報らしく、小畑は親友の三好や多田にもこのことは言っていないっぽい。 流石にエマはメイプルドリーマーのリーダー・ユウリと繋がりがあるだけあって知ってるっぽい顔はしていたが……まぁエマも口を滑らすことはないんだろうな。
そしてもう1つオレがモヤモヤすることとは……
「ちょっとダイキ、何あんたそんな顔してんのよ」
放課後。 エマと2人で帰宅していると、エマがオレの背中をバシンと叩いてくる。
「だって……だって……」
「だってなによ」
「だって明後日には結城さん……引っ越ししちまうじゃねえかあああああああああ!!!!!!」
そう、結城がとうとう2日後の日曜日に引っ越してしまうのだ。
学校は変わらないためそこはとりあえずよかったのだが、もう今後一緒に学校行ったり帰ったりが出来なくなるのはかなり寂しいんじゃあああああああ!!!!
オレは絶望マックスの顔でうずくまると、エマが「仕方ないでしょ、これも桜子のため……桜子が選んだことなんだから」と優しく声をかけてくる。
「それは……そうだけど」
「それに桜子のママ、最近かなり危ない状態が続いてるんでしょ?」
「らしい。 最近は結城さんもお話できる時間少ないんだって」
「だったら桜子も少しでも多くの時間をママと一緒にいたいはずよ。 これはエマだから言えることだけど、会いたいときは会っといた方がいいわよ」
ちくしょう……エマが言うとかなり説得力が増すぜ。
「ーー……そうだな。 せめてお別れ会くらい盛大にやって送り出してやるか」
「その意気よ」
実は数日前からエマや優香たちとお別れ会の準備を少しずつしてたからな。
お別れ会は結城の引っ越す前日の土曜日……つまり明日。
明日だけは結城母の体調が落ち着いていてほしい。 そう天に願いながら帰宅したのだが……
「んあああああああ!!! やっぱり明日開催出来るのかどうか気になる……!!! 今はまだ結城、病院にいるよな!?」
【送信・結城さん】結城さん、今どこいる?
【受信・結城さん】今? 病院だよ。 ママの部屋。
【送信・結城さん】お母さんの体調、どんな感じ?
【受信・結城さん】今は落ち着いてるよ。 だからママとちょうど話してたところ。 ママが今だったら福田くんと話せたのになって残念がってるよ。
このメールを見た瞬間、先ほどのエマの言葉が脳裏で再生される。
『会いたいときは会っといた方がいいわよ』
これってあっちサイド……結城母サイドからしても同じことだよな。
結城母はオレに会いたがっている。 だったら行くしかねーだろう!!
【送信・結城さん】今から行く!! もし都合が悪かったり疲れて寝たいってなってたらまた連絡して!!!
オレはランドセルを部屋に投げ込むと再び家の外へ。
「こういう時にお金の出し惜しみはしない方がいいよな……」
マンションを出たところでちょうど近くで止まっていたタクシーを発見。
オレはタクシー運転手さんにお願いし、病院まで向かってもらうことにしたのだった。
「ボク、急いでるようだけど、身内に何かあったのかい?」
タクシー運転手さんがセンターミラー越しにオレに尋ねてくる。
「いえ、身内じゃないんですけど入院している友達の親に会いに」
「友達の親? そんな家族ぐるみで仲いいのか。 今時珍しいな」
「実はそこまで面識ないんですよね。 でも向こうがオレに会いたがってるって聞いたんでこれは行くべきかなと」
「感動した!! この時代にまだそんな人としての心を持った少年がいたなんて!! じゃあそんなボクのために法定速度ギリギリダッシュ向かうよ!!!」
「いやギリギリて!!! お願いなので目をつけられない程度でお願いしま……って、運転手さん!!! 超えてます超えてますううううう!!!!!」
◆◇◆◇
「いやはやなんとか無事に着けて助かった。 何度かヤバいところあったぞ」
タクシーを降りたオレは先ほどの運転手さんのドライブテクニックにより高なってしまった鼓動を落ち着かせながら病院の中へ。
「えっと、何階だったかな」と呟きながら結城に部屋番号を尋ねるメールを送った……その時だった。
「ーー……え、ダイきち……くん?」
「え?」
待合室エリア。
突然どこからかオレの名を呼ぶ声がしたので周囲を見回してみると、壁際……見覚えのある女の子の姿を発見する。
メガネこそかけてはいないが、あれは……
「えっと……え、美香……じゃなかった。 茜……なのか?」
そう、そこにいたのは神様が創造した『与田美香』という身体に魂を転生させてもらった元中学生の女の子・堀江茜。
茜が目を大きく見開きながらオレに視線を向けているではないか。
「ダイきちくんだよね」
「ああそうだぞ。 茜だよな!?」
「うん、茜……茜だよダイきちくん!」
なんというタイミングでの再会なのだろうか。
あれから引っ越すってことは知ってたけど、引越し先がまさかこの辺だったなんて。
色々募る話もあるのだが、今オレが優先すべきは結城と結城母。
オレが「あー、じゃあまた連絡するから後でな」と立ち去ろうとすると、茜は「ちょ、ちょっと待って」と立ち上がりオレの腕を掴んできた。
「茜、どうした?」
「えっと……ダイきちくん、どこか身体悪いの?」
「え、なんで」
「だってここ病院だもん。 どこか悪いところあるから来たんだよね」
「それを言ったらお前もだろ。 前に神様が『その体は神聖だから超健康』的なこと言ってたのに病気になったのか?」
「ううん、私のはただの健康診断なだけで……ていや、今は私のことはどうでもいいから、なんでダイきちくんがここにいるわけ? ま、まさか入院して……!?」
んー、入院経験が長いとそういう思考になってしまうのか。
オレは自分の体調が悪い説を即否定。
大事な友達の母親が入院してること……そしてその母親がオレと会いたがっているらしいからここまで来たことを簡単に茜に話す。
すると誰がこの後の展開を予想しただろう。 茜はオレの手を握ると大きく頷き、そして……
「そっか。 じゃあ私、その子のお母さんの力になれるかもしれない。 流石にお部屋にお邪魔するのは申し訳ないから、その大事なお友達、呼んでくれるかな」
「エ?」
お読みいただきましてありがとうございます!!
さて、今回の挿絵は第447話『【結城編】どうしてここにいる』のリメイクVERです! しかし真・結城編とは出会った時期が少しズレたりしている……今後変わっていく展開をお楽しみいただければなと思います!!!




