629 【ギャルJK星編】フルスイング!!【挿絵有】
六百二十九話 【ギャルJK星編】フルスイング!!
先日ギャルJK星から送られてきたメールの内容。
【受信・星美咲】ゆーちゃんには言ったんだけど、週末の金曜の夜、泊まりに行くわ!! あ、それとそれまでは学校迎えに来なくていいからね! タクシーで帰ることにしたから!!!
「ーー……」
これってオレが告白めいたことをしちゃったから、こんなメールを送ってきたんだよな。
オレの予想としてはまず『迎えに来なくていい』の文章は明らかにオレを避けるため……そして文頭の『週末泊まりに来る』は、そこで改めてオレに冗談を言った謝罪をする……そんなところだろう。
「あぁ、オワタ」
しかしちゃんと面と向かって断るというののも、おそらくかなり勇気のいること。
そこは流石ギャルJK星って感じだよな。
オレは来たるハートブレイクデイに怯えながら過ごすことに。 優香もこの件に関して何も話題にすら出してこないことから、オレのフラれるフラグがより増大していったのだった。
ーー……のだが。
◆◇◆◇
「はーーい!! やって参りました美咲ちゃん彼女試験のお時間ですーー!!!!」
ーー……は?
当日。 ギャルJK星は家に来るなりまるでステージに向かうお笑い芸人さんのように拍手をしながらソファーに腰掛けていたオレの前へ。
「今からダイキに質問をします! その答えでアタシはダイキと付き合うかを決めます!」とニコニコ微笑みながらオレの隣に座った。
いやいや拍手大丈夫なのか? 片腕ギプスだろ?
オレはギャルJK星の腕ギプスに視線を向けながらも「質問?」と首をかしげる。
「そーそー質問! ダイキの性格とかはもう結構な付き合いだし、ゆーちゃんお墨付きだからそこはクリアしてんのよ!」
「ーー……」
え?
「そうなの!?」
しかも優香お墨付き……だと!?
驚きながら優香へ視線を移すと、優香は拳を顔の前で握りしめながら「頑張れ!」とオレを応援してくる。
「お、おおお姉ちゃん、星さんがこれしにくるって知ってたの!?」
「そうだよー、当たり前じゃない。 だから変に口を滑らさないよう美咲の名前、今日まで出さなかったでしょ?」
「た、確かに……」
それにしてもなんて急な展開。
今から始まるギャルJK星による質問の回答次第では、オレガチで付き合えるかもしれないってことか。
「なんか急にドキドキしてきた」
「あははは、そんな緊張すんなー? 気楽に本音で答えてくれればいいから」
オレはどんな質問が来るのだろうかと脳内で質問の内容を考え始める。
例えばなんだ……? 『将来結婚したとして、仕事とアタシどっちをとりますか?』とかそんな感じなんだろうか。
それとも他の路線で考えると……。
「はーい!! じゃあ早速始めまーーす!!!」
「え、ええええ!?!!? もう!?!?」
「当たり前じゃん! こういうのはスッと答えてくれた方が本音感あるべ! んじゃ早速……」
こうなったら流れに身をまかせるしかない……オレは小さく深呼吸し、体をギャルJK星の方へと向ける。 するとギャルJK星は人差し指を立てながらゆっくりと口を開いた。
「来年アタシら受験なんだけど、ゆーちゃんが『地方の大学に行きたいから引っ越すかも』とダイキに相談したとします。 でもアタシは『遠距離するなら別れる』と言いました。 ダイキはどうする?」
「え」
ギャルJK星はニヤリと微笑みながら立ち上がると優香の隣へ。
優香に肩を回しながら「どーする? ゆーちゃんをとったらアタシと別れることになって……アタシをとるのなら、ゆーちゃんに地方行きを諦めてもらうことになります」とオレに再度尋ねてくる。
「ちょ、ちょっと美咲、それはあまりにも極端な……!」
「ゆーちゃんは黙っててー」
「!!」
ギャルJK星の真剣な瞳を見た優香はすぐに自身の口を真一文字に。
「で、ダイキ、ゆーちゃんとアタシ……どっちとる?」
「もちろん美咲……だよね?」
2人が揃ってオレをまっすぐ見つめてくる。
「ダイキ」
「ダイキ」
そんなの……そんなの決まってるじゃないか。
ぶっちゃけオレの中では迷いなど皆無。
流石にこれは嘘はつけない……オレは心のままにその答えを口にした。
「お姉ちゃん」
「「ーー……!!!!」」
オレの答えを聞いた2人が無言で顔を見合わせる。
そして1番始めにアクションを起こしたのは優香だった。
「ーー……え、ダイキ、ちょっと待って。 美咲じゃなくてお姉ちゃんとるの?」
「うん、そうだよ」
「いやそこは美咲を選ばなきゃじゃない!」
優香はオレが選択ミスをしたと感じているのだろう。 ギャルJK星に「いや美咲、多分ダイキ間違えたんだと思う。 やっぱり今の質問は小学生には早いんじゃないかな」と焦りながらフォローを入れ始める。
「ほー。 ゆーちゃんはそう言ってるけど、ダイキは実際どーなん?」
「ううん、オレは今後お姉ちゃんから離れるつもりはないよ。 何があっても……何かと選択するってなっても絶対にお姉ちゃんを優先するって決めてるから」
「!!!」
オレの迷いなき発言に優香は潤んだ目を押さえながら背を向ける。
「なるほどにゃー。 じゃあダイキの答えは『ゆーちゃんを選ぶ』でファイナルアンサー?」
「うん。 ファイナルアンサー」
おそらく正解は優香も思っているように『どんな時でもギャルJK星を選ぶ』だ。 それはさすがにオレもそう思うけど、オレはそこに関しては嘘はつけないからな。
オレがこうして人生を謳歌できているのは優香のおかげ……これは紛れもない事実なのだ。
あーあ、これでフラれちまうよ。 グッバイオレのLove Story。
オレは逆に清々しい気持ちでギャルJK星からの『はい不正解。 ごめんなさい』を待つことに。
しかしギャルJK星はなぜか満面の笑みでオレに歩み寄ってきてそして……
「ダイキ」
「はい」
「正解」
「ですよね。 うん、オレもそうかなって思ってたけど流石にこればっかりはお姉ちゃんを……」
ーー……ん?
今なんて言った?
一瞬脳がフリーズしたオレは大きく瞬きをしながらギャルJK星を見上げる。
「え、今星さん……なんて?」
「ピンポンピンポンピンポーーーン!!!! ダイキ合格……付き合おうぜええええええええ!!!!!」
「E」
「「えええええええええええ!?!??!?!」」
◆◇◆◇
どうやらギャルJK星曰く、『アタシを選んでたら秒で断ってた』とのこと。
その真相を夕食時、ギャルJK星は上機嫌でオレたちに話してくれた。
「ダイキは覚えてっかなー、アタシとゆーちゃんの出会いの話」
「うん、覚えてるよ」
オレが「もちろん」と頷くと優香が「え、なにそれ? 私と美咲の出会いの話?」とギャルJK星を見ながら頭上にはてなマークを浮かばせる。
「だべ。 そういやゆーちゃんには言ってなかったけどさ、アタシ、前にゆーちゃんとの中学での話をダイキに話したんだよにゃ」
「私と美咲の?」
「そそ。 ほら、当時友達が皆無だったインキャゆーちゃんが病院で『私、頭痛で、頭が、痛い。 オーケー?』ってアタシと初めて会話した時の……」
「えええええ!!! 美咲……そこから喋ったのおおおおお!?!?」
優香が顔を真っ赤にしながらギャルJK星に詰め寄る。
「おー、やっぱゆーちゃんも覚えてたか。 嬉しいにゃー」
「どこまで喋ったの!?」
「え? そっから全部」
「ちょっ、じゃあもしかして……」
「うむ!! ゆーちゃん初の『しょけー』も細かくね!!」
「うわあああああああああ!!!!」
なんと懐かしい……あれは優香が車に撥ねられて入院してた時にギャルJK星が教えてくれたんだよな。(第351話〜第357話参照)
あれを聞いてからより一層、二人の尊さが増したんだっけ。
優香は焦りながら「いやダイキ違うの! あのね、お姉ちゃんは別にそんな根暗な……」などと言っているがオレはそこを一旦スルー。 「それで星さん、それがさっきの星さんの質問とどう関係があったの?」と尋ねた。
「ほら、あん時アタシ言ったじゃん? アタシはゆーちゃんと出会ってなかったら堕ちるところまで堕ちてたはずだって」
「うん、言ってた気がする」(第351話『特別編・美咲① 突然の悲劇』より)
「他にも理由は色々あるけど今のアタシがあるのはゆーちゃんのおかげ。 だからアタシは一生ゆーちゃんを大事にする……そしてゆーちゃんはダイキを心から愛してる。 そんなゆーちゃんを悲しませる選択をダイキにはして欲しくなかったんだにゃ」
「つまりは何があってもお姉ちゃんを優先してほしいと」
「そゆこと! 出来るっしょ?」
「もちろん」
「うむ!! だからダイキは合格したのだ!!」
まったく……いつもは陽気なんだけど、たまに今みたいに真面目な話をするところとかがギャップで堪らないぜ!!!
こうしてオレは見事ギャルJK星と付き合えることに。
しかしここで悲報が……恋人同士がするような行為はオレが中学を卒業するまでは『手を繋ぐ』まで……そして大学を卒業するまでは『キス』までという制約をギャルJK星から提示されてしまったのだ。
「ーー……え、ガチですか」
「うむ」
「えええ、そんなああああ!!!!」
「んなの当たり前だべさ! そうやって変に盛んになった結果、望まない妊娠とかで大学や高校中退するやついるんだべ!? アタシから言わせたらそういう奴らマジでアホだからな! 仕事を継ぐとかそういう理由で辞めるのは仕方ないけど、盛った結果辞めることになるとかただの親不孝者だべ」
うわああああ、ギャルJK星……性に関してはかなり寛容だと思ってたのにーー!!!!
涙目で優香に視線を移すと、これには優香も同じ考えのようで「ウンウン」と静かに頷いている。
「ええええ、お姉ちゃんまで同じ考えなの!?」
「そりゃあそうだよ。 もちろんお姉ちゃんはダイキが美咲と付き合うのは嬉しいけど、そうやって間違えたらきっと美咲とも喧嘩する……美咲とはずっと仲良しでいたいもん」
ウワァ……なんだその理由。 尊すぎるぜ。
二人に癒された結果、オレは先ほどの条件を承諾。
晴れて恋人同士となったわけだが、もう1つショックなことが……。
「んじゃーこれからはダイキ、大学卒業するまでアタシと一緒に寝たりとか、お風呂なしなー」
「そうだね、私もそれがいいと思う」
「え」
「だって恋人同士だからってことでアタシ襲われるかもだし」
「そうだね、ダイキはまだ小学生だけど、男の子だからね」
「NOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!」
まさかの小学生の特権禁止。
生き地獄を言い渡されたオレはその場で膝から崩れ落ちたのだった。
◆◇◆◇
「なんだー、そんなに悲しいか」
夕食終わり。 オレが未だにショックを受けていると、先にお風呂を終えたギャルJK星がソファーに腰掛け「そろそろ元気出せー?」と声をかけてくる。
「え、あれ……星さん、ギプスとったんだ」
「まーね。 ぶっちゃけ念の為付けてたってだけで、あんま酷使しないんだったらもういいんだって」
「そうなんだ」
「あ、それよりも……ダイキ、これいる?」
「え」
そういってギャルJK星が取り出したのはガチャガチャのボール。
ギャルJK星はそれを片手で器用に開けると、中に入っていたものを取り出しオレに見せた。
「それっておもちゃの指輪?」
「そー。 偶然にもにゃー」
「え、いいの?」
「いいよ、こんなおもちゃアタシがするわけにもいかないし。 それともうダイキにパンツとかあげるわけにはいかなくなったんだしな。 今日っていう思い出に持ってな」
「うわああああ!!! やったあああああああ!!!!!」
「社会人になったらガチもんのをアタシに頼むぜー?」
「任せてよ!!!」
この時のオレはあまりにも青春すぎた展開に舞い上がっていて気づいていなかったのだが、この日、ギャルJK星は今までで一番柔らかい表情でオレと接してくれていたんだ。
「マジでありがとう星さん!!!!!」
「おいおい、もう美咲って呼べー? 年下とはいえ、彼氏だろー?」
あぁ、この世界はなんて美しいんだ!!!
オレは今、最高に興奮……ゲフンゲフン、感動している!!!
オレはギャルJK星からおもちゃの指輪を受け取るとダッシュで部屋へ。
まったくエロい物ではないが、かなり心のこもった物。 オレはそれを胸に抱きしめながら「グフフフフ!!!」と声にならない声で人生に感謝し、これからは優香とギャルJKほ……ノンノン、美咲の両方を幸せにしてやる!! と、心の中で宣言したのだった。
ーー……あ、そうそう。 その日の夜、もう1つ悲しいことがあったんだ。
それが以下のメールのやり取りなんだけど……
【送信・星美咲】美咲……さん、1人で寝るの辛いから来て。
【受信・星美咲】ダメー。 ゆーちゃんに言いつけんぞ? いくらアタシがちょい前に病んでた時に、ダイキが夜な夜な電話してくれて救われてたとしても、それはそれ。 これはこれ。
【送信・星美咲】え、救われてくれてたんだ。 よかった。
【受信・星美咲】当たり前じゃろー!
【送信・星美咲】てことは星さんの病みを治したのってオレってことだよね!? これって愛の力かな!?
【受信・星美咲】んにゃー、それもあるけど1番は麻由香ちゃんのおかげだべ。
多田あああああああああああああああ!!!!!
(ギャルJK星編・完)
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444話の共通編ラストが終わって早半年 笑
さぁ……最後の世界へといざ参りましょう!!!




