627 【ギャルJK星編】それは突然に
六百二十七話 【ギャルJK星編】それは突然に
「ーー……という事だったんですよ」
「「「ーー……」」」
オレを含めた優香やギャルJK星の3人は事の詳細を聞いて声を詰まらせる。
「え、てことは今朝早くから実行してた作戦は意味なかったってことですか?」
優香の問いかけに作戦に参加した女性刑事さんは首を縦に振った。
「そんな……」
「私どもも驚きましたよ。 まさかあの犯人もここまで計画していたなんて。 もともと彼は盗撮魔でしたからね、彼も彼なりに作戦を立てていて……結果捕まえることはできましたが、いやはや参りました」
「まぁでもわざわざ私たちの家の近くにアパート借りてまで監視してたなんて、誰も想像できませんよね」
「そう言っていただけると救われます」
そう……なんとあのストーカー男、わざわざオレたちの動向を観察するためだけに近くにアパートを借りていたらしいのだ。
そして彼は同じ性的趣向を持つ協力者をSNSで見つけ出し、今回のギャルJK星捕獲を勧誘……ギャルJK星は最終的にオレたちに家に匿われることを予想して動いていたとのことだった。
「え、てことはあれは……星さんの家の近くをフラフラしてたのはどっちなんですか?」
「それが協力者の男だったんですよ。 わざわざどちらか見分けがつかないようあえて同じ背丈・同じ体型の男を選んでたんです」
「なるほど……」
てことはその協力者がエアコン業者だったってことか。
まぁでも同じ背丈のやつが夜道で歩いてそんな怪しいことしてたら……そりゃあ近くで張ってた探偵さんも勘違いしちゃうわな。
どうやら今までの情報は全て協力者の男がベラベラと吐いたらしい。
本来ならギャルJK星を誘拐して部屋に閉じ込めてからストーカー男を呼ぶ手はずだった……しかし地方の遊園地まであとをつけていったものの、あらかじめ渡されてた顔写真と若干違う。 対象の女性とスマートフォンに保存しておいたギャルJK星の顔写真を見比べていたところ、捜査員に声をかけられ呆気なく自白したとのことだった。
「えー、でもよく声かけられましたね。 まだ断定的ではなかったっぽいのに」
「そりゃあキミのお姉さん……姫から『あいつが家の玄関前にいるんだけど』って言われたら動きますよ。 じゃあ私の仲間たちが監視している男は誰なんだってなりますからね」
「確かに」
ちなみにこの女性刑事はオレが気を失っている間に多田にも事情聴取をしたらしく、多田曰く母親にマンションの前まで送ってもらって1人になったところで捕まってしまった……とのこと。
それに対してオレは「えええ、でも今日は別に遊びに来る約束とかしてなかったんですけど」と答えたのだが……
「あーそうそう。 なんでもあの麻由香ちゃん、美咲さんへのプレゼントを買ったはいいもの、どこに住んでるか等分からないので姫や弟くんに渡してもらうために来たらしいですよ」
「「「え」」」
ギャルJK星へのプレゼント?
「これがそうなんです、帰る際に渡すつもりだったのですが」
そうして女性刑事さんがリュックから取り出したのは1枚のCD。 ギャルJK星はそれを受け取ると、そこに大きく書かれている曲名をゆっくり読み上げた。
「あなたが……いたから。 メイプルドリーマー」
あ、それだ。
エマの前世・小山楓時代の親友ユウリさんが所属してるアイドルグループで、あの狂ったアニメ『じゃんじゃかハムロック』のオープニング曲に選ばれて話題になったやつじゃねーか。
「え、なにダイキ、その顔の感じからして知ってんの?」
ギャルJK星の問いかけにオレは「うん」と頷く。
「これは……なんか意味でもあるのかな」
「そうだね、簡単に説明すれば曲名がそのまんま物語ってるって感じだよ」
「曲名……あなたがいたから……」
ギャルJK星はメイプルドリーマーの曲自体ちゃんと聞いたことがなかったらしくその曲を聞いてみることに。
そして案の定それを聞いたギャルJK星は涙目になっていたのだった。
「えええ、星さん泣いてるじゃん」
「うるせーなー、アタシあんまバラードとか聞いてこなかった人間だから特別響いてんだよー」
「あー、確かに。 星さんはアップテンポな曲ばっかり聞いてそう」
「なんだダイキー、それってアタシが勢いだけで生きてる猪突猛進女みたいじゃんかー」
「え、違うの?」
「ちげーよ!! ちょ、ゆーちゃんからも何か言ってやって!!」
「ーー……え、美咲は猪突猛進でしょ」
「ゆーちゃんまで!?!?!?」
◆◇◆◇
「それではもう遅いですし私どもは帰りますが……姫、あの男2人はどういたしましょうか。 特に姫や美咲さんたちを苦しめた張本人はこのままでも普通に懲役5年以上は確定ですが……」
「しょけー」
「りょ、了解しました」
こ、こえええええええ!!!!!
まさかの突然のダーク優香降臨。
これには流石の刑事さんたちもビビったのか若干顔を青くしながら部屋から出て行き、室内にはダーク優香・曲で涙目のギャルJK星・シラフのオレというなんともカオスな状況に。
オレはこんな空気で夜ご飯なんて食べれねーよなどと考えていたのだが……
晩御飯時。
「ほら美咲、手使うと悪化するんでしょ。 はい、ジャガイモあーーん」
「あーーん。 んーーっ、んまい! 病院食普通に美味じゃん!!」
「もー、美咲、せっかく一口サイズにしたんだから一口で全部食べてよー。 落ちちゃったらどうするのー?」
「ノンノン、器用に半分食べたの! もう半分はゆーちゃん食べな。 ずっとアタシに食べさせてたらゆーちゃんのご飯冷めるべ?」
「え、そうなの? ありがと美咲。 じゃあ私もー……ぱくっ」
「どう? 思ったよりかなり美味いべ?」
「うん、美味しい」
う、うおおおおおお!!!! 尊い……百合最高なんじゃああああああああ!!!!!
目の前で突如繰り広げられた百合百合な光景にオレは心の底から大興奮。
そうなればもちろんテンション上がる部分も連動して上がってくるわけで……
「いたっ……いたたたたたたああああ!!!!!」
ここも壁に強く打ち付けたからなのだろうか。 テンションが上がるにつれそこが急に痛み出す。
そういや全身検査された時、『青アザできててしばらく痛いから興奮しないでねー』とか言われたような……
でもそんなの……この光景見たら無理なんじゃああああああああああ!!!!
オレが下半身を押さえながら悶絶しているとそれに気づいた優香が「どうしたのダイキ」とオレに尋ねてくる。
「トイレ行きたいの?」
「ううん、ち、違う」
流石に言いにくいのでオレが首を横に振って否定すると、ギャルJK星が「なんだ? もしかしてソコ、強く打ったんか?」と冗談ぽく話を振ってくる。
え、なんで分かるの?
「えええ、ダイキその反応……ガチぃ?」
「あーうん……実はそう。 青アザできてるんだよね」
「うわ、アタシにはないけど痛そうだにゃー。 でもあれさね、宝物じゃなくてよかったな!」
それは確かにそうだ。
もしそうなってたとしたら……オレ、あまりの痛みとショックで気を失ってんじゃないのか?
不幸中の幸いとはこのこと……しかしご飯中に話す内容ではないなと感じたオレは痛む下半身を押さえながら「そ、そうだね。 もしそうなっちゃってたらオレもう結婚諦めてたかも」と無理やり話を終わらせにかかる。
しかしそこで驚きの発言がギャルJK星の口から発せられたのだった。
「大丈夫だって。 そんときゃアタシが結婚したるで」
ーー……。
「「えええええええええええええ!?!!??!?!??」」
平和が訪れた晩御飯時、先ほどのギャルJK星の突然の発言にオレと優香は激しく動揺。
優香は驚きのあまり腰掛けていたベッドからずり落ちて尻餅をつき、オレはさらに興奮してしまい先ほど以上の激痛で苦しめられることになったのだった。
ま、マジか……!?
マジかああああああああああああああああ!?!?!?!?
お読みいただきましてありがとうございます!!
もうすぐギャルJK星編終わりますーー!!!!




