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626 【ギャルJK星編】特別編・せいしん!?


 六百二十六話  【ギャルJK星編】特別編・せいしん!?



 過去には一時的ではあるが、想いを寄せていたこともあった男。 そんな男に3階という高さから放り投げられた福田ダイキを助け、その際両腕を外壁に強く打ち付けてしまった美咲は優香とともに救急車に乗りながら応急処置をしてもらっていた。



「美咲さん、大丈夫ですか!? 他に痛むところは!?」



 優香国の民である救急隊員が焦りながら美咲の全身を調べていく。



「あー、多分打ったの腕だけだから他は大丈夫だと思うんですよねー。 それよりダイキ……あの男の子は大丈夫ですよね?」


「もちろんです! 姫の弟・ダイキくんは姫の要望によりヘリで処置を受けながら最速で病院まで向かったので……もう着いてる頃だと思います!」


「そーですか。 なら安心だ。 ね、ゆーちゃん」



 美咲は隣で足首の処置を受けていた優香に話を振る。

 しかし優香は美咲の話には返事をせず、美咲の背中に顔を埋めながら細かく身体を震わせていた。



「ちょっとゆーちゃんー、聞いてるー?」


「ーー……めん、ごめん美咲。 あり……がと……」



 優香はダイキがヘリで搬送されてからずっとこんな感じ。

 姉である私がいち早く助けるべきだったのに……と強く自分を責め立てているのだ。



「ゆーちゃんー、ダイキ無事だって言ってんじゃんー。 だから元気だしなってー」


「美咲……美咲……」


「もぉー、30分前までのアタシかってのー。 なにー、今度はアタシがゆーちゃんを元気づければいいわけー?」



 美咲は若干痛む体を優香へと向けると激痛に耐えながら優香の背中に腕を回す。

 そして顔を優香の耳元に近づけると、「もー大丈夫だよゆーちゃんー」と優しく囁いた。



「ちょ、ちょっと美咲さん!! 今腕をそんなに動かしては……右腕折れてるんですよ!?」


「ごめん。 でも今だけお願い。 多分あなたがゆーちゃんに恩義を感じてるように、今のアタシもかなりゆーちゃんに恩義感じてるから」



 いつもの優香なら『そんなことしたら怪我が悪化するからやめて!』と意地でも阻止してきていただろう。

 しかしそれをしてこないということは、それだけ精神的にも参っているということ……アタシが包み込むしかないのだ。



「私がもっと早く扉を開けて……もっと早く手を伸ばしてダイキを家の中に入れられていればこんなことには……」


「なーに言ってんのゆーちゃん。 結果助かったんだからもういいでしょー? それにゆーちゃんがアタシの脚掴んでくれなかったらアタシまで一緒に落ちてたんだから、ナイスキャッチじゃん。 それに謝るならアタシの方……アタシがゆーちゃん家にいなかったらこんなことにはならなかったんだから、本当にごめんね」


「ううん……美咲は悪くない。 私のせい」


「ちがう、ゆーちゃんは悪くない。 アタシのせい」


「私の……」

「アタシの……」



 本当にきっかけは自分なのに、なんでこんなに優香は温かいのだろう。



 やっぱり……ゆーちゃんには敵わないな。



 そんなことを考えながら抱きしめていると、大体3分後くらいだろうか。 優香が少しだけ顔を上げ、美咲を見つめながら優しく微笑んだ。

 


「ん、ゆーちゃん?」


「でもあれだね、今までの……私の知ってる美咲に戻ってる。 おかえり、美咲」


「あ、うん……ありがとゆーちゃん。 ただいま」



 少し前まで心を暗く閉ざし、誰とも関わりを持ちたくなくなっていた美咲に変化を与えたのはいうまでもなくダイキのおかげ。

 実際ダイキが部屋を飛び出してからもなお心の闇は晴れてはいなかったのだが、事の発端がダイキが家の中へ押し入れた彼の友達・多田麻由香との会話……まさか今まであまり話したことのなかった女の子の言葉が暗闇に光を灯したなんて。



 それは外から玄関内に麻由香が入れられ、優香とともに駆けつけた際……



『ちょっと麻由香ちゃん、大丈夫!?』



 優香が麻由香の口に貼られていたテープを剥がすと、麻由香は涙を流したまま優香の隣にいた美咲を抱きしめ胸に顔を埋めてくる。



『え、あ……麻由香ちゃ……』



 どうして優香ではなく自分に?



 とりあえずリビングに避難させて落ち着かせないと……そう考えていた美咲だったのだが何故だろう、美咲に抱きつくとすぐに麻由香の体の震えは収まり、それを証拠に『ふー、落ち着いたー』と麻由香は安心しきった顔で美咲を見上げてきた。



『ま、麻由香ちゃ……』



『星さんだ……。 星さんがいるならもう大丈夫だ……』



 え。



 美咲と目が合うなり麻由香は『へへ』と微笑む。



『な、なんでアタシがいたら大丈夫だって……』


『だって星さん、めっちゃ最強でウチの憧れだもん。 前に助けてくれた時もあの男の人、星さんにビビって逃げたんだよ? てことは星さんの方があの男の人より強い……また星さんが怒れば逃げてくってことでしょ?』



 ーー……!!



『アタシが……めっちゃ最強? あの男より?』


『うん! 考えてみてよ、もしあの男に人が星さんよりも強いって自信あったら、ウチが星さんたちに助けを求めても追いかけてくるはずじゃん』


『ーー……』



 アタシにビビって逃げた……。


 アタシの方が強い……。 


 アタシが怒ればまた逃げていく……。



 人というものはいかに単純なものなのだろう。

 自分の方が相手よりも強者だと分かった途端今まで感じていた恐怖はまるでガラスのように激しく割れ、風に乗ってどこかへ消えていく。


 そうだ……なんでアタシは今まで人影に怯えて……力づくで接触してこない相手にビビり散らかして精神まで病ませてしまっていたのだろうか。 実にバカバカしい話……だけどもうそんな弱かったアタシとは今日でさよならだ。



『ありがとね、麻由香ちゃん』


『え』



 美咲は麻由香の頭を優しく撫でると、視線を玄関の隙間から外の様子を伺っていた優香の方へ。

『今からアタシが出て全て終わらせてくる』……そう言おうとした時だった。



『ゆーちゃ……』



『ダイキ!!!』



『!?』



 勢いよく扉を開けて飛び出す優香。 そしてその先に見えるのは3階という高さから放り投げられそうになっているダイキの姿。

 


 !!!!!!!!



 このままではダイキや優香が危ない。



 理屈はわからないが脳が考えるよりも先に身体が動く。

 美咲は麻由香をその場に残すと裸足のまま勢いよく床を蹴り、超低姿勢かつ前のめりで玄関へ。 先に飛び出した優香を追い越すと邪魔をさせないよう目の前にいた男に高速で急所攻撃……その後なんの躊躇いもなく手すりに足をかけ、気づけば宙を待っていたダイキのもとへと飛び出していたのだった。



 精神完全復活……これは本当にダイキのおかげであり麻由香のおかげであり、自分のために色々と動いてくれた優香のおかげ。



 美咲は改めて心に大きな温かさを感じながら優香を抱きしめる。

 その後優香を不安にさせないよう、病院へ着くまでずっと話しかけていたのだった。



「ん、てかゆーちゃんクツ履いてないんだね」


「うん……それは美咲もじゃない。 あんな状況で履いてなんかいられないよ」


「確かににゃー。 それはそうとゆーちゃんの足に何か付いてんで」


「え」



 優香のスネにうっすらテカったものを見つけた美咲は軽く指ですくい上げる。



「ん? なんだこれ、イカ臭さ……あの臭いするべ」


「え、そんなわけ……」


「ねー隊員さん、これって……」



 美咲はまさかなと思いながらも指を隊員のもとへ。

 そしてそこで返ってきた言葉を聞いて2人は愕然……優香も顔を赤くして俯いてしまう。



「ねぇ美咲、早くその指拭いた方がいいよ。 あの男の人のだったら気持ち悪いでしょ」


「んーにゃ、多分これダイキのだべ」


「え……そうなの? ていうかなんで分かっ……」


「どんだけアタシの前でやらかしてると思ってんの。 それに、なんならアタシ今日ゆーちゃん家で嗅いだばっかだし」


「きょ、今日!?」


「だべ。 ほら、覚えてるっしょ? アタシがダイキのアレを枕にして寝た結果を」


「ーー……あ」



 優香の視線が美咲の指先へと向けられる。



「ほら、ゆーちゃんも嗅いでみ? 『セイシん』安定するで☆」


「なんでわざわざ変な言い方するの!?」


「えー、じゃあ嗅がん?」


「ーー……嗅ぐ」



 顔を真っ赤にした優香が視線を逸らしながら美咲の指に顔を近づけてくる。



「うわー、ゆーちゃん変態……隊員さんどうしよ、姫が変態になってるよー!!」


「美咲ーーーーーー!!!!!」



 こうして車内は騒がしくなったまま病院へと到着。

 あの臭いを嗅いだおかげなのかは分からないが、処置室へと移動したころには2人とも今までのセイシん……精神状態に戻っていたのだった。


 

「姫に美咲さん、とりあえず今からレントゲンを撮りますが……どこかおかしいところあれば先に教えていただけますか?」



「あー、私は特に。 この足くらいです」


「先生、ゆーちゃんが変態になってます。 ここにくる間にも男の子のアレの臭いをずっと……」



「美咲ーーーーーー!!!!」




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