62 絶叫!!
六十二話 絶叫!!
遊園地を存分に楽しんでいたオレたち。
そしてそれは昼食を取りに施設内のレストランに入った時のことだった。
「ゆーちゃん何にするー? アタシはハンバーガーセットー!」
片方に優香とギャルJK星。 そして対面にオレと結城。
ギャルJK星と優香が楽しそうに話しながらメニュー表を眺めていた。
「福田……くん、何にするか決めた?」
結城がもう一冊あるメニュー表を開きながらオレとの自身の間に置いてペラペラとページをめくっていく。
ーー……ん?
結城のめくっていくページを軽く眺めていると、気になる単語が目に入ってきた。
「ーー……ラブカツセット?」
ちょうどこの遊園地とラブカツがコラボしていたらしく、キッズメニュー内にラブカツセットたるものが存在している。
「どうしたの? 福田……くん、ラブカツ知ってるんだ」
「あーまぁ、うん。 どうして?」
「わたしのクラスの子がね、そういえばラブカツのオーディションに出るって言ってたの聞いてたから、なんとなく」
「そうなんだー」
ーー……ん?
「えええええええええ!!!」
オレはたまらず絶叫。
「うわぁっと!! どうしたのダイキ」
オレの声に驚いた優香とギャルJK星がこちらを見てくる。
「あー、何でもない何でもない。 あははははは」
もしかして堀田と野村か? ……まさかな。
◆◇◆◇
昼食を終えたオレたちが向かったのは夏の遊園地では定番のお化け屋敷。
さぁ皆さんやって参りました!!
お化け屋敷……この場所では唯一怖かったからという名目上で異性に抱きつく事ができる最強の合法スポットでございます!
というわけで、オレは誰と手を繋ぐべきかと脳内シミュレーションを開始する。
「私、お化け屋敷って初めて……」
オレの目の前で結城が不安そうな顔をしながら少しずつ迫ってくる入場ゲートを見て呟く。
「おー桜子ちゃんお化け屋敷初体験なんだ! んじゃアタシと手繋ぐべ?」
ーー……お?
「それじゃあもう片方の手は私が繋いでてあげるね」
ーー……お? お?
オレが選定している間に目の前で左から優香、結城、ギャルJK星というトリオが完成されている。
「あの、えっと……オレは??」
「ん? ダイキもしかして怖いの?」
ギャルJK星が振り返りながら尋ねる。
オレはその問いにすぐさま脳が反応。 今のその質問、ここで怖いと答えれば優香かギャルJK星……どちらかが手に入るってことだよな!!
だったら言うに決まってんだろ。 せーの……
「うん、怖ーー……」
「ダイキは怖いの大丈夫だもんねー」
優香が笑顔のまま振り返りながらオレに話しかける。
「え?」
「だってほら、昨日も桜子ちゃんと2人で怖いテレビ見てたけど全然平気そうだったじゃん」
ーー……あ。
そう言えば確かにオレ昨日怖がってるリアクション、全然取ってなかったかもしれない。
まぁその結果、恐怖状態に陥った結城と一緒にお風呂に入れたわけだが……。
えっと……これってもしかして合法に抱きつくこと難しくなっちゃったパターン?
てことは何か別の方法を……ムムム!?
考えていると早速オレの変態脳が素晴らしい考えを思いつく。
もしここでオレが後ろから3人を驚かせて怖がらせまくってみろ……そうすれば今夜この怖さを思い出してお風呂を1人で入れなくなって……
ニヤリ。
こうしてオレは3人の後ろにくっついてお化け屋敷内を進むことに。
良いタイミングでみんなを脅かして、夜にスーパーいい思いをしてやるんだと決心したのだった。
◆◇◆◇
ーー……とは決心してみたものの。
オレは真っ暗な道を歩いていて気づく。
これってさ、もしかして今、3人を怖がらせる以前にやりたいことしても見えないんだからバレなくね?
そう思ったオレは、試しに優香の脇腹をつついてみる。
「ひゃあああああ!!!」
すると反応した優香が絶叫。 連鎖して結城、ギャルJK星も悲鳴をあげる。
おおおお!! バレない!! バレないぞ!!
調子に乗ったオレは反対側ーー……ギャルJK星の方に回り込み、再び味わいたくて仕方のなかった太ももをひと舐め。
「おわあああ!!!」
ギャルJK星がビクンと反応して小さくジャンプ。
「ちょっとダイキー! 悪戯したっしょー!」
勘のいいギャルJK星が後ろを振り向きながら叫ぶ。
「ううん。 オレさっきから結城さんの後ろを歩いてるよ」
オレは平然とした声で返答する。
「そ……そうなの!? だったらごめんね、今のなんだったんだろうーー……」
「ちょっと美咲、怖いこと言わないでよ」
「こ、怖い……」
クックック……
甘いぜギャルJKーー……。 すでにオレはそこにはおらず次の欲望のために動いているのだ!!
そう……次は結城の香り!!
オレは結城の髪に顔を近づけ、聞こえない程度に鼻から息を吸う。
すると結城の髪から微かに漂うシャンプー&リンスのフローラルな香りとJS特有の尊くも甘い香りが鼻を突き抜ける。
うーん!! ナイススメル! ーー……いや、ゴッドスメル!!
少しずつ吸引力を増やしていってみるも、結城は前方からいつ出てくるかわからないお化けの恐怖でかなり緊張しているのか全く気づいていないっぽい。
……これ、ガチで吸い込んでも大丈夫なやつじゃね?
そう思い限界まで結城の頭に鼻を近づけ、思いっきり吸い込んだ……その時だった。
『アアアアアアアア……!!!!』
勢いよく手前から包帯ぐるぐる巻きのお化けが飛び出してくる。
「きゃあああああああ!!!!」
両手を優香とギャルJK星と繋いでることにより視界を隠すことができなくなっていた結城は反射的に頭を後ろへ。
ガンッ!!
結城の後頭部とオレの鼻が物凄い勢いで衝突する。
「ーー……!!!」
グゴオアアアアアアアアア!!! いってええええええええ!!!!
オレは心の中で大絶叫。 鼻を押さえながらフラフラとギャルJK星の方へと寄りかかっていく。
コツンとギャルJK星の足にオレの足が当たり、不覚にもバランスを崩したオレはその場で尻餅をついてしまう。
「ひぃやああああ!!! なんか足触ったああああ!!! しかも後ろの方からドサって音したしいいいい!!!!」
オレとの衝突&オレの尻餅音に驚いたギャルJK星が突然取り乱し始める。 しかも焦った結果足を滑らせてしまい尻餅をついたオレの上に倒れてくるではないか!
オレの視界にはスローモーションでこちらに向かってくるギャルJK星のお尻。
ーー……ちょっ!!
このままだとオレ危険じゃねーか!!?
オレは尻餅をついた体勢のまま反射的に後ろへ下がる。
しかし反応が少し遅かったのだ。
ドスン!!
ギャルJK星はオレのギリギリ手前に落下。
なんとか圧迫されることは回避できたのだが、遅れて受け身を取ろうと後ろに回したギャルJK星の手がオレの足の付け根に直撃する。
ホゥアアアアアアアアア!!!!!
あと数センチズレてたら別のものが圧迫されて潰されてたぞおおおお!!!
何とは言わないけど多分スマホかなああああああああ!!!!
真っ青になったオレはローリングでクルクルと転がりながらその場を脱出。 ギャルJK星の近くは危険だと判断したので優香のいる左側へと向かった……のだが。
「ん?」
優香の足下近くにあった小さな壁の隙間から白い手がニョキッと飛び出し優香の足へと伸びていっているのが視界に入る。
ーー……え、まさかそういう驚かせ方もあるの!?
そう感心しながらもオレは心の中で謝罪。
すまないな驚かせ役よ。 オレは今絶賛ローリング中……そこぶつかっちゃうわ。
ということで優香の足首まであと少しの距離まで近づいていた白い腕に向かってオレは激突。
小さい声で隙間の中に潜む驚かせ役の人に謝ろうと隙間に顔を近づける。
ーー……ん? おかしいな。
何か変だったことにオレは違和感を覚える。
「ていうかさっきぶつかった時の感触もなかったような気も……」
トントン。
そう考えていると誰かがオレの背中を叩く。
きっとさっきのお化け役の人が心配してくれたんだ……そう思ったオレは苦笑いで謝りながら振り返った。
「あははは……いやーすみません、あまりに怖すぎて皆さんの怖がらせる邪魔を……って、あれ?」
後ろを振り返るも誰もいない。
すると今度は足を何かに掴まれる。
「ん?」
視線を向けるとさっきの隙間から白い腕。
意地でも驚かせたいとかお化け役の鑑かよ……ていうかこの腕、なんか透けてるように見えるのは気のせいかな?
再び覗き込んでみると真っ白な顔の女の人と目があう。
『クヒヒヒ……』
女はニタァと不気味な笑み絵を浮かべながら視線をオレに。
ーー……ん? んんんんん!?!?!?!?
ちょ、ちょっと待ってくれ!!! 冷静に考えてみればお化け屋敷って人に触るの御法度だよな!? それにこの小さな隙間に入るなんてなんとも……!!
今見たのは見間違いではないかと感じたオレは再び隙間の中に潜む真っ白な女へと視線を向けた。
『ネェ……遊ビマショ……』
「ぎゃああああああああああああ!!!!!」
オレは速攻起き上がりながらも女の手を振り払い出口に向かってダッシュ。
途中で優香たちに追いつくも、もしかしたらこの3人も幽霊なのではないかと疑心暗鬼になったオレは3人を放って出口へと駆け抜けたのであった。
その後もいろんなアトラクションに乗ったのだがオレの中の恐怖心が一切消えることはなく……オレはその後優香の手をずっと握りしめ、ひと時も離すことはなかった。
ーー……もうお化け屋敷絶対行かん。
下の方に☆マークがあるので評価していってくれると嬉しいです!
感想やブクマ・レビュー、お待ちしております!!