618 【ギャルJK星編】原因!!
六百十八話 【ギャルJK星編】原因!!
もしかしたらギャルJK星はお化けではなく他の何かに悩んでいて、年下の……ガキのオレには聞かれたくない内容なのかもしれない。
優香のアイコンタクトを受けたオレはお菓子やジュース等を買いに行くという名目で部屋を出て某アニメに出てくるパン職人にそっくりのギャルJK星の母……パン母に声をかける。
「ちょっとお菓子系とか買ってきますね」と伝えると、とんでもない返答が返ってきたのだった。
「あらそうなのー? じゃあおばちゃんも暇だから一緒にいこっかしらねー」
え。
◆◇◆◇
その後オレはなぜかパン母とともに近くのコンビニへと向かうことに。
そしてそんな帰り道のこと……
「あらダメよーダイキくん、いくら草食系男子が主流になってきたとはいえその波に飲まれちゃー。 やっぱ男は肉食……そうしないとせっかくのチャンスを棒に振ることになるわよー」
「い、いや……別に小学生なんですから恋愛以外を楽しんでもいいでしょう」
「言い訳しないの! 恋は早いほど成熟するものなのよ!」
くっ……急に恋愛話振ってきたから仕方なく付き合ったら説教かよこのやろう!!!
それに先ほどのパン母の言葉、美人とか可愛い子に言われたんなら『あ、そうですかー。 じゃあどうすればいいか教えてくれますー?』などと話を広げられるのだが残念なことに隣にいるのは人妻。 しかも見た目がパン職人なんだから余計に話す気にもならねぇよ!!!
頼むからギャルJK星……あなただけは母親のような未来を歩まないでくれ。
オレは買い物袋を持ちながらパン母の説教じみた会話や謎の若い頃の武勇伝を「えー・すごいですね・なるほど」の3単語で何とか乗り切ることに成功。 家に着くとパン母とともに優香たちのいる部屋へと向かったわけだが……
「ん、……なんか声聞こえますね」
階段を上っている途中、2人の会話が微かに聞こえたオレは後ろを振り返り小声でパン母に伝える。
「え、ほんと?」
「はい。 なのでここは一旦出直します? 話の邪魔をしてもあれですし」
「あらなに言ってんの、本音聞けるチャンスじゃない。 聞き耳立てましょ」
「エ」
おいおい、せっかくオレが愛娘のために気を使って提案したのにパン母……娘以上にアクティブすぎるだろ。
オレは腕をほぼ強引に引っ張られながらギャルJK星の部屋の前へ。 パン母と目を合わせると、静かに扉に耳をつけ中から聞こえてくる会話に集中した。
今話しているのは……ギャルJK星だな。
「ほらちょい前にさ、無限かき氷したじゃん?」
「うん」
「あの機械買いにダイキ連れて隣町行ったときにさ、いたんだよね。 あいつが」
「ーー……あいつ?」
あいつって誰だ?
オレは脳内で当時誰か知り合いとすれ違ったかなーなどと振り返っていく。
しかしすぐにその答えがギャルJK星の口からは発せられる。
「うん。 ほら、ゆーちゃん覚えてるかな、前にアタシを盗撮して捕まってたやつ」
「あ、うんいたね。 え……もしかして」
「エスカレーターですれ違ったときに目が合ったんだよね」
「えええ!?」
えええええええ!?!?!? ま、マジかあぁああああああああ!!!!
オレは声を必死に殺しながら心の中で絶叫する。
そしてそれはパン母も同じようで、目を怖いくらいに開きながら何故かオレに視線を向けてきていた。
「フンスーフンスー!!!」とかなり鼻息が荒い。
こ、こええええええええええええ!!!!
もともとインパクトの強かった顔に更に磨きがかかってるぞ。
オレはすぐに視線を逸らすと、視界にパン母が入らないよう若干目を閉じる。
「フンスーフンスー!!!」
「ーー……」
「フンスーフンスー!!!」
「ーー……」
「フンスーフンッ……ズビッ、ズズッ……!!!」
「ぶふっ!」
「どうしたのダイキくん」
「ーー……な、なんでもないです」
ちくしょう、ただでさえ鼻息うるさいのに途中で詰まらせるとかギャグでしかないだろ。
オレが必死に笑いをこらえている間にもギャルJK星と優香の会話は続き、オレは息を整えながら再び耳へと神経を集中させていった。
「ちょっ……それで美咲、大丈夫だったの? 何もされなかった?」
優香のかなり心配そうな声が再びオレの耳に入ってくる。
「うん。 でもさ、これ気のせいじゃないと思うんだけど……夜、窓の外見たら誰かが近くの電柱からこっちを見上げてたり、学校やバイトから帰ってる時にも後ろから気配感じて……。 でね、いざ一言文句言ってやろうと振り返ったらもうそこにはいないんだよね」
なんてことだ、前にギャルJK星を盗撮して捕まった犯人……まさかそいつがすでに野に放たれていて、かつ今度はストーカーにランクアップしていたなんて。
もしかしてあれか? 一瞬でも恋愛関係に発展しそうになっていただけあって諦めきれていないのか?
その後もオレは目の前の強烈な顔に耐えつつもギャルJK星の話を聞いていたのだが……簡単にまとめるとギャルJK星はストーカー被害が何日か続いたあたりで体調を崩し出し、何をしている時でも常に誰かに見られているかもという感情に襲われ安心して寝ることすらも出来なくなってしまったとのことだった。
「警察には相談したの?」
「したけどまだ実害ないから見回り強化しか出来ないって」
「何で私にも言わなかったのよ」
「そしたら最悪ゆーちゃんやダイキにも被害及ぶかもしれないっしょ? アタシの問題に大事な人たちを巻き込むわけにはいかんからね」
「美咲……」
あぁギャルJK星……あなたは自分がそこまで追い込まれてもなおオレたちのことを考えてくれていたのか。
なんという漢気。 これはオレが何とかして解決してあげられたらいいんだけど……。
ーー……そうだな、とりあえずまずはそのストーカー野郎を見受けない限りは先に進めないよな。
そんなことを考えているとどうだろう、隣で共に会話を盗み聞きしていたギャルJK星の母……パン母が突然「よっしゃ!!」と叫び、何の躊躇もなく扉をバンと開ける。
え、なにやってんのこの人。
もちろん中にいた2人もいきなりのことで驚愕。
口をパクパクさせながらパン母に視線を向けた。
「え……おかーちゃん?」
「おばさ……」
「美咲、話は聞かせてもらったわ!!」
「え?」
「まったく……何でそれを真っ先にかーちゃんに言わんのや。 とりあえずここはかーちゃんに任せとき!!」
「「「え?」」」
パン母はそう宣言すると短い脚を大きく広げながらズンズンと娘の部屋の中へ。
向かった先はギャルJK星の制服前。 一体何を考えているのだろうと観察していると、ギャルJK星が「お、おかーちゃん? 任せてって……なんかいい案でもあんの?」と力なく尋ねた。
「ある!」
「え」
かなり自身に満ちた返事。
これにはオレや優香も驚き、ギャルJK星も目を大きく見開いている。
「ほ、ほんとなのかーちゃん」
「ほんとよ! だからかーちゃんに任せんしゃい!!」
「ちなみにおばさん、何するんですか?」
「そんなの決まってるじゃない。 おばちゃん……かーちゃんが美咲の制服を着て外に出て、美咲と勘違いしたそのストーカー男が近づいてきたところを成敗してあげるわ!!!」
「「「ーー……」」」
うん、もちろんみんなで却下したぞ。
ただこの後部屋の空気が若干明るくなって……あれはパン母なりのジョークだったのかもしれないな。
いや分からないぞ、本気だったかもしれないし。
結局その日は最後までギャルJK星の心からの笑顔を見ることは出来ず。
普通に小声ではあるが……会話自体はしてくれたのだが、外から聞こえてくるほんの微かな物音でも身体をビクッと反応させてたんだから、かなり精神的に追い詰められてるんだろうな。
何とか救ってやりたい……
オレは優香と帰っているときにもどうすればギャルJK星のためになるのかなと話し合っていたのだった。
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