614 【優香編】It's a beautiful day
六百十四話 【優香編】It's a beautiful day
教材受取日の夜。
「えー、じゃあ今日星さん泊まりに来ないんだ」
「らしいよ。 美咲、あれからクラスのみんなと観光に出かけちゃったから。 今日はホテルにみんなで泊まって明日の朝イチで帰るんだって」
「お姉ちゃんは観光一緒に行かなくてよかったの?」
「うん。 最初は行こうか迷ってたんだけど、美咲が『ゆーちゃんはここまで! ここで出来た親友たちと帰りな』って」
「かっこいいね星さん」
「そうだよー。 美咲はほんとにかっこいいんだからー」
あれから優香に事の真相を聞いたのだが、どうやらオレが高校へ向かっている間に女子グループに絡まれ委員長JK七瀬とインキャJK早乙女が撃沈……その後すぐに助けを呼ぼうとしたのだがスマートフォンを壊され、校舎裏に連れて行かれたところでギャルJK星率いた前のクラスメイトたちが助けに来てくれたとのことだった。
優香が酷い扱いを受けていると聞いたギャルJK星は学校へ突撃し粛清することを考案。
しかしただ単に乗り込んでは警察沙汰になりかねない……という事で以前優香の通っていた高校で一番頭の良かった三好兄に相談。 三好兄はわずか数日の間に色々と調べ動いてくれたというのを後で優香も知ったらしい。
「えー、じゃあ今回のは星さんと三好のお兄さんがいなかったらお姉ちゃんピンチだったってこと?」
「うん。 ほんと今回ばかりはケガしちゃうかと思ったもん」
なんだよ、今まで優香にひっつき回るイケ好かないヤツとばかり思ってたけど……案外いい奴じゃねーか三好兄。
三好は『ほんっとお兄って最悪ー!!』とかよく言ってたけど【やるときはやる男】の部類なのかもしれないな。
「あ、そういえばお姉ちゃんのクラスの人たち、よくホテル泊まったりこっちくるお金あったね」
「そうだね。 金銭面はあっちの校長先生が出してくれたらしいんだけど、もう3年生っていう大事な時期にお姉ちゃんのために時間を作ってくれて……ほんと感謝だよ」
あーね。
そういえばあの人も優香国の民だったっけ。 おそらくは校長がこっちの学校の人にも色々根回ししてくれていたのだろう……じゃないと会議室であんなパーティー開かせてもらえないもんな。
優香姫の影響力……半端ねぇぜ。
それから優香は晩御飯を食べた後早速部屋に戻り勉強を開始。 なんか今日の一件でかなり色々と吹っ切れたような気もするし、前以上に集中出来るんじゃないか?
オレは優香の邪魔をしないよう静かに部屋でスマートフォンを弄ることに。
数人とメールのやりとりをしながら眠りについたのだった。
【受信・星美咲】アタシの最大の役目は終わった!! 後はダイキ、今度こそ任せたゼ☆ アタシもゆーちゃんと同じ大学行くこと決めたから明後日から勉強するわ!!
【受信・三好】ええええ!?!? お兄そっち行ってたの!? 言ってくれたら私も一緒に行ってたのに……ほんとお兄って最悪ーー!!!
【受信・早乙女ひかり】ボクくん、タマちんがもう寝ちゃったのか相手してくれないから話聞いてくれん? パパが出張から帰ってきたんやけど、めっちゃ髪とかメイクで怒られた……。 昨日買ったエッチなパンツもママに見つかってさっきまで説教受けてたし……パンツは捨てろって言われてるからボクくんいる?
◆◇◆◇
1年後。
時の流れってほんとに早いよな。 あれからオレも中学生になり、相変わらず陽菜に振り回されつつも充実した……しかし彼女の出来ない1年生を楽しんだぜ。
優香もあのギャルJK星たちとの再会からかなり勉強にも身が入ったみたいで成績もうなぎ昇り。 高槻さん考案の『7日目は何もしない』も実践してて、そういう日は基本委員長JK七瀬やインキャJK早乙女と出かけに行ったりしてかなり3人の絆を深められたんじゃないのかな。
それで今オレがどこにいるかって言うと……
「ダイキー、今日から新学期だね。 エマちゃんが迎えきてるよー」
以前から住み慣れたあのマンション。
優香がパジャマ姿でオレの部屋をノック。 「開けるよー」と声をかけた後に扉を開け、顔を覗かせてくる。
「ええ、早くない!?」
「エルシィちゃんがクラブを始めたらしくて朝練で早いから途中まで一緒に行くんだって」
「えええ!?!? エルシィちゃんがクラブ!? 何クラブなの!?」
「陸上って言ってたよ」
「りくじょおおおおおお!?!?!?」
オレは玄関から聞こえてくるエマの声に急かされながらも慌てて学ランの袖に腕を通す。
「ダイキー!! 早くしなさーい!! エルシィが遅れて怒られたらアンタも謝んなさいよー!!」
「ダイキー!! おはよー、早くきてーー!!!」
おおお、しばらく見ない間にかなり日本語上手くなったなエルシィちゃん。
まぁでももうあのミニマムだったエルシィちゃんももう小学4年生……そりゃあスラスラと話せるようになるか。
支度を終えたオレは急いで玄関へ。
優香はそんなオレの姿を見ながら「行ってらっしゃい」と微笑みながら手を振った。
「え、てかお姉ちゃんまだパジャマじゃん。 いいのお姉ちゃんは準備しなくて」
「うん。 大学の入学式までまだあと数日あるから」
「そうなの!?」
「うん。 だから今日は美咲と一緒にこっちに来たサッちゃんやタマちんを案内するんだー」
「あー、そういや七瀬さんや早乙女さんも同じ大学受かったんだっけ」
「すごいよねー。 サッちゃんなんか試験当日めちゃくちゃ目にクマ作って挑んでたのに受かるんだもん。 タマちんは要領が良かったんだろうね。 高3の夏から塾に通いだして短期間で好成績取ってたし」
これは今日学校から帰ったらギャルJK星たちがいて騒がしくなってるやつだな。
ーー……いや、もうあれか。 大学に入学したらJKじゃなくてJD……ギャルJD星になるのか。
ちくしょー、なんて平和で輝きに溢れた世界なんだ。
オレは嬉しそうに話す優香の笑顔のおかげで朝の気怠さが一気に消失。
「んじゃ行ってきます!!」と声をかけ、玄関先で小さく跳ねてこちらに手招きをしている金髪美少女エマ・エルシィちゃんのもとへ駆け寄った。
「おうおはよー! 久しぶりだな2人とも!!」
「そうね。 エマたちも昨日まで春休み利用してフランス帰ってたからね。 久しぶりダイキ。 背、伸びたわね」
「ダイキーー!! 久しぶりーー!!!」
「おおおエルシィちゃん!!! 一気に背伸びたな!! エマまで後ちょっとじゃねーか!!!」
「そーだよー!! エルシィ、いっぱいご飯食べるからエマおねーちゃんにすぐ追いついちゃった!」
オレがエルシィちゃんの変貌ぶりに驚いていると、エマが「そんなことよりも……!」とオレの腕を引っ張り早く靴を履くよう急かし出す。
「な、なんだよエマ、久しぶりの再会なんだしもっと余韻に浸っても……」
「そんなことしてたらエルシィが朝練に遅れちゃうでしょ! てかアンタは今日から転校生なんだから少しは緊張しなさいよ!!!」
「そうでした。 じゃあしばらく甘えさせてもらうとするか」
「なんでよ!!」
オレは改めて優香に行ってきますと声をかけ玄関の外へ出る。
扉を閉める際に目に入ったのは2つの写真たて。 1つは大学合格が決まった日に撮った優香・委員長JK七瀬・インキャJK早乙女の3人の集合写真で、もう1つはあの春祭りの日の夜……優香がインキャJK早乙女から貰ったらしいかなり精巧に描かれた【魔獣ハンター】の優香の使うキャラクターのイラスト。
たった1年だったけど、かなり濃厚だったな。
エマ・エルシィちゃんと学校へ向かっている途中、オレは2人にこう声をかけたのだった。
「なぁエマ、エルシィちゃん。 今晩はうちでご飯どうだ?」
「え、それはありがたいけど……いいの? 引っ越ししたてで大変じゃない?」
「やったーー!!! 久しぶりにダイキやユウカとご飯ーー!!」
「あぁ。 多分そこには2人くらい初めましての人がいるとは思うけど怖がる必要ないからな。 2人ともあっちで優香を支えてくれた恩人たちだから」
こうしてエマ・エルシィちゃんが夕方にうちに来ることが決定。
そして案の定その日の夕方から夜にかけて、オレの家では久しぶりのどんちゃん騒ぎとなる。
「そーいやダイキ、あっちに行ってて恋とかしなかったの?」
盛り上がっているリビング内。 エマがオレの腕を肘で突いてくる。
「するわけねーだろ」
「なんで?」
「今回のことでよく分かった……オレはお姉ちゃんが幸せだったらそれでいい。 それ以上の幸せは望まん」
「ふふ、まるでエマみたいね」
「だな」
優香、改めて合格おめでとう。
新しい仲間にも恵まれて……幸せそうでオレも最高にハッピーだぜ!!! これからもずっと一緒だからな!!!
(優香編・完)
お読みいただきましてありがとうございます!!
優香編終了です!!お付き合いいただきましてありがとうございました!! もちろんハッピーエンド!!
次はまた共通か特別編を挟みましてもう1つ頂いたリクエスト【ギャルJK星編】の世界へと向かいます!!終着地点の【真・結城編】まであと少し!!
まずは……次の間に挟む話、何にしましょうかね!笑




