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606 【優香編】正義感!!


 六百六話  【優香編】正義感!!



 あのクソヤンキー共が言ってたのは十中八九優香たちのこと。

 オレは全速力で階段を駆け上がると本殿のある方へ……するとやっぱりだ。 あの時の柄の悪いヤンキー数人に絡まれていた優香たちを発見した。



「ねーねー福田さん、こいつ俺の中学ん時の連れなんだけどさ、一緒にデートしてあげてくれん? 七瀬とえーと……名前忘れたけど隣のお前は俺たちと青春しようや」



 いかにも田舎にいがちな強面スキンヘッドの男が優香たちへ歩み寄り、仲間のワックスをつけまくったツンツンヘアーたちもそれに続く。



「ちょ、ちょっとなに? 私たち3人で充分楽しんでるから他当たってもらえない?」



 優香が後ろで怯えるインキャJK早乙女を庇うように前に立ちながらスキンヘッドを見上げる。



「いやいやそんなこと言わずにさー。 てかお祭り誘ったやん」


「でも断ったよね」


「そうやっけ、俺覚えとらんわー」



 そんな不毛なやりとりを優香とスキンヘッドが交わしているとワックス頭が「いや……ちょっと待ってや。 ワイどっちかって言えばこっちのスタイル良い子が好みかも」と委員長JK七瀬に顔を近づけていく。

 それと同時に委員長JK七瀬の口からは「ひぃっ……」と小さく声が漏れた。



「なーキミ、名前なんなん?」


「七s……い、いえ、教えません」


「なんでー」


「だって仲良くなるつもり……ない、から……」



 委員長JK七瀬はインキャJK早乙女の手をギュッと握りしめながら声を絞り出す。

 しかしかなりの恐怖を覚えていたのかその声は周囲の雑音でほとんど掻き消されていた。



「えー? なんてー?」


「だ、だからそ、その……」


「もしかして照れてるー? だったら隣のチビっ子なんか放って置いてワイとエンジョイせん?」



 ワックス頭の手がゆっくりと委員長JK七瀬の方へと伸びていく。

 そしてそれに気づいた優香が慌てて委員長JK七瀬を守るように振り返ろうとしたのだが……



「あーちょっと待ったー。 だったら俺、転校してきた初日から福田さんの顔だけは可愛いって思ってたけんね。 後ろの七瀬たちのことなんか気にしないで俺とデートしよー」



 スキンヘッドの手が優香の肩に触れる。



 こ、ここここのやろおおおおおおおおおお!!!!!!!

 汚い手で優香に触りやがってえええええええええ!!!!!



 これはもうデス☆ペナルティ!!! 処刑じゃああああああああ!!!!



 怒りのボルテージがMAX……いや、限界突破したオレは地面を強く蹴り上げ優香たちのもとへダッシュ。

 あわよくばあのスキンヘッドにいい感じにタックルして、少しでもよろめいたところで優香たちを逃がそうという算段のもと速度を緩めずに突っ込む。

 


「お姉ちゃあああああん!!!!」



「え、ダ……ダイキ? なんでここに……」



 オレの叫び声に気づいた優香が驚いた顔でオレの方に視線を向ける。



「待ってて!! 今隙を作るからあああ!!!!」



 オレはさらに勢いをつけて加速。 この後自分がどれだけ怪我をしてもいいという覚悟で狙いを完全にスキンヘッドへと定めた。



 ーー……のだが。



「ダイきち、どいてっ!!」


「ーー……!?」



 それは突然。



 スキンヘッドまで後数メートルというところでオレは後ろから誰かに突き飛ばされ盛大に転倒。 

 しかしすぐに視線を上げ、オレを突き飛ばした相手が一体誰なのかを確認する。



 ーー……浴衣姿にあの髪型ってまさか。



「え、えええ陽菜!?」



 名前の呼ばれ方で気づくべきだった。

 草履を途中で脱ぎ捨てたのか裸足の陽菜が「優香ちゃんをいじめるなヤンキーーーー!!!」と全力疾走でスキンヘッドのもとへ。 そのまま勢いを緩めずに突っ込み盛大にぶつかった。



「いって」

「きゃああっ!!!!」



 陽菜はオレよりも早いスピードで突っ込んだのだが体格の差もあるのだろう。

 華奢な陽菜の身体はガタイのいい高校生に敵うはずもなくいとも簡単に弾き返されてしまう。



「ひ、陽菜!!!!」

「陽菜ちゃん!!!」



 オレと優香の声が重なる。



 弾き返された陽菜の身体は宙を舞いオレの方へ。


 地面は石畳……このままだと危ない!!!!


 オレはすぐに立ち上がると前方へ決死のダイブ。 地面すれすれのところでなんとか陽菜を受け止めたのだった。



「あー、ありがとダイきち」



 顔をヤンキーの身体に思い切りぶつけたのだろう。 片目を閉じた陽菜が力なく笑う。



「ちょっ……! 陽菜お前!! 何やってんだよ!!!」


「だってダイきち追いかけてたら優香ちゃんがイジめられてるん見えたんやもん」


「それでも……だったらオレが突っ込もうとしてたじゃねーか!! なんでオレを突き飛ばすんだ!!」


「そんなの決まってるやん。 ダイきち、陽菜よりも走るの遅いし力もないんやけん」


「ーー……」



 陽菜は改めてオレに「ありがと」と感謝を述べると、幸いなことに身体にはダメージを負っていなかったのかゆっくりと立ち上がる。

 そしてスキンヘッドを指差しながら再び何かを言おうと口を開いたのだが……



「うん陽菜、ちょっと落ち着こうか」



 オレは正義感からか熱くなった陽菜の腕をゆっくりと引っ張りヤンキーたちから距離をとっていく。



「ちょっとダイきち何するん!? 早く優香ちゃんを助けんと!!」


「そうだな、そうなんだけど……状況が変わったんだ。 ちなみに陽菜は見たことないから分からんだろうが……今近づいたら大変なことになるぞ」



 オレは冷や汗を流しながらそう語りかけると視線を優香の方へ。



 ーー……くそ、出来れば委員長JK七瀬やインキャJK早乙女の前では見せたくなかったんだけどな。



 皆ももう気づいただろう。 そう、陽菜が吹き飛ばされたあたりから優香の手が、全身がプルプルと震え始め、漆黒のオーラが優香の周囲を渦巻いていたのだ。



「はぁ……めんどい。 めんどい」



「ゆ、ユカちん?」

「大丈夫?」



 優香は後ろから声をかけてきた委員長JK七瀬とインキャJK早乙女の声を完全に無視。

 ゆらりと小さく揺れながらスマートフォンを取り出すと何やらポチポチと片手で操作を始める。



「は? おい福田、めんどいってどういうことだよお前俺らを舐めるのもいい加減に……!!!」


「うるさい。 消すよ? 消すけど」



 これは優香国の民……精鋭部隊を徴収して一気に殲滅するやつだな!! もうとことんやっちゃってくれ!!!

 そう思っていたオレだったのだが、次に優香の口から出た言葉に思わず耳を疑った。



「ーー……電波、ない」




 えええええええええええええええええ!?!?!??!?!?




お読みいただきましてありがとうございます!!!

田舎の……電波が悪いという弱点が出ましたね!!


感想やブクマ・レビュー・イイネ!、お待ちしております!!

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