06 見せしめ作戦①
六話 見せしめ作戦①
「ダイキ、そういや昨日もだけど……なんか変わったよね」
朝。 姉・優香が朝食のパンを食べながらオレに話しかける。
「え? そ、そうかな」
「うん。 なんか今までは暗いっていったらあれだけど」
ーー……そりゃあいじめられてたらなぁ。
「……で、どう? まだイジメられてるの? あれだったらお姉ちゃん、先生に話しに行ってあげるけど」
優香が心配そうに顔を覗き込む。
「ううん、大丈夫だから」
なんと言っても今日からが本番なんだからな。
オレは学校に行く準備をしに行くと伝えて自分の部屋へ。 そこで一冊のノートを手にする。
これは一昨日に引き出しの中を漁っていた時に出てきたもので、当時のダイキがクラスメイトから受けたイジメ・嫌がらせを鮮明に書き記されていたのだ。
もちろんそこには三好のこともあったぞ。 放課後度々呼び出されては暴力を受けるので怖いと書かれていたな。
「とりあえずオレの今日の欲望を達成させるにはこの名前の男がキー……鍵だな」
オレは当時のダイキが酷く恐れていた存在……『杉浦五郎』という名前を覚えて家を出た。
◆◇◆◇
教室に入るとまずオレは黒髪ロングの水島花江という女子を探す。
どうやら彼女はクラス……もっといえば学年のマドンナ的存在で、唯一ダイキに分け隔てなく声をかけてくれていた存在らしい。
近くを通った時はいつも笑顔で声をかけてくれていたんだってよ。
えーと、そんな水島花江ちゃんは……
クラス内を見渡すと窓側前方の席でおとなしそうな女の子と雑談をしていたので、オレはわざとその前を通って自分の席に向かう。
「あ、福田くん。 おはよ」
「おはよう」
ダイキのノートに書いてあった通りだ。
みんながオレを無視する中で、眩しい笑顔で挨拶をしてくれる。
……これは確かにマドンナ的立ち位置にもなるわな。
オレは1人納得しながら小さく頷く。
いやいや、ていうかそれはまぁどうでもいいのよ。
この花江ちゃんと会話することで次のイベントが待ってるんだからな。
「おい、福田」
はい、きた。
短髪で髪の毛を立たせた男。
名札に目をやると、そこには【杉浦】という苗字……今回の鍵だ。
「朝から不快な声出すんじゃねーよ」
杉浦がオレの肩をドンと叩く。
ーー……ふふ、計画通りじゃ。
どうやらダイキが花江ちゃんと会話した日に限ってこの杉浦に強く当たられていたらしい。
ダイキはなんでだろうって書いてたけど、答えは簡単だ。 杉浦は花江ちゃんのことが好きだからに決まってんだろ。
「い、いた……っ」
オレはわざとらしく肩を押さえながら杉浦を見る。
「なんだ?」
「あ、いや」
周囲に視線を移すと皆がチラチラとこちらを見ている。
どうやらこの杉浦がクラスで一番力を持っているとみていいだろう。
こいつ……杉浦に花江ちゃんの話を振ってみて反応を見てようと思ったオレは杉浦に視界をロックオン!
どう話を切り出すべきかを考えた……その時だった。
「ね、ねぇ杉浦、もうすぐ先生くるし、もう止めな」
ーー……は?
これからというところで三好が邪魔に入る。
「ん? なんだ佳奈。 止めるなんて珍しいじゃんか」
「ち、違うし。 ほら、時間的に先生に見られたら後々面倒じゃん!? だから今はそのくらいに…!」
「んーー。 確かにそうだな」
おいマジか……杉浦はオレをドンと押すと、まっすぐ自身の席へと戻っていったのだった。
三好のやつ、邪魔しやがってぇええええ!!
◆◇◆◇
一時間目の休み時間。 イライラしたオレはアイコンタクトで三好を呼び出した。
「ーー……な、なに?」
三好が少し怯えた表情で尋ねる。
「あのさ、なんで邪魔したの?」
「邪魔って……。 なんか痛そうだったし…」
おーおー、ちょっと前まで暴力振るってた女が言う台詞かねぇ。
しかし上下関係が逆転した途端にこの変わり様……これはこれで見ていて面白いぞ。
「んー、まぁいいや。 三好、今からお前にミッションを与える」
オレはビシッと三好を指差す。
「ミ、ミッション?」
「あぁ。 まぁ安心してくれ、簡単なことだ。 水島さんっているでしょ?」
「花江?」
「そう。 放課後に水島さんの後ろからぶつかったフリをして、オレの方に抱きつかせるように持っていって欲しいんだ」
オレは三好を見ながらニヤリと微笑む。
「ーー……は? なんで?」
「そしたら杉浦がキレてオレにいちゃもんつけてくるはずだからさ、そしたらオレが上手く裏庭に誘導するから……そこでオレがいじめられてるところを動画で撮って欲しいんだ。 もちろんお前のスマホで」
「な、なんで私が」
「拒否した瞬間にあれバラすな」
オレはスマートフォンをヒラヒラと仰ぎながら三好に見せつける。
「わ、わかったよ」
三好はオレをみながら静かに頷いた。
さて……試合開始じゃあ!!!
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