599 【優香編】発足!?【挿絵有】
五百九十九話 【優香編】発足!?
濃い茶髪ロング・黒縁メガネの委員長JK七瀬の家で話を聞くこととなったオレ。
日程は委員長JK七瀬がバイトの予定が入っていない2日後で、当日オレは学校が終わるとすぐに待ち合わせ場所にもなっていたあの喫茶店前へ。
しばらくすると相変わらず寝癖バチバチのインキャJK早乙女とともに委員長JK七瀬がやってきたのだった。
「やほーショt……コホンコホン、ダイキくん。 待ったー?」
「あーいえ、そこまでは」
「そっか。 んじゃ行こう! JKの部屋に入っても興奮せんでねー」
「しないですよ!!」
ーー……表向きはね。
◆◇◆◇
委員長JK七瀬の家はそこから距離にして約1Kmほどのところにあった閑静な住宅街。
どうやら両親は共働きとのことでその時間帯家にはおらず、オレは変に緊張することなく委員長JK七瀬の部屋へと入ったわけではあるが……
「ーー……!!!」
中へと足を踏み入れJK特有の甘い香りに感動しながらも周囲を見渡したオレは言葉を失う。
これは……一体どうなっているんだ?
委員長JK七瀬の部屋は一般的な女子部屋のイメージとはまるで真逆。 壁一面にアニメの可愛い女の子やイケメン男子のポスターが張り巡らされていて、本棚には大量の漫画。 その中には一般漫画に紛れてまぁまぁな数のエロ漫画や薄い本……同人誌までもがビッシリと詰め込まれているではないか。
まさしく完全なオタク部屋。
オレがあまりにも衝撃的な光景に目を取られていると、委員長JK七瀬が「ちょっとダイキくん、見過ぎやよー? お願いやけん引かんでねー」とオレの肩をトントンと叩いてくる。
「い、いや……別に引いてなんかは」
「そうなん? じゃあ何で固まっとったん?」
「あ、アニメとか漫画にグッズがたくさんあってすごいなーって」
「へー! ダイキくんもアニメ好きなん?」
「まぁそれなりに……」
その後このまま立ち話もあれだしということで床の上に敷かれた絨毯の上に座って早速本題へ。
そこで聞いた内容はいかにも優香らしい……そして理不尽なものとなっていた。
「最初は福田さんも美人だってことでクラス内はもちろん、近くのクラスでも話題になってたらしいんだけど……」
◆◇◆◇
どのくらい経っただろうか。
委員長JKから聞いた話を簡単にまとめると、優香が周囲から孤立する原因となったのは当時いじめられていた男子に手を差し伸べたから。
それを加害者側の男子たちが悪ふざけで優香と男子をイジりだしたらしいのだが優香はそれを完全無視……その光景を見た加害者男子と付き合っていた女子が優香の行動に腹を立て今に至るという。
「ち、ちなみにお姉ちゃんは今どんな被害を受けてるんですか?」
「うーん、周囲からの無視はあれとして……実質的な被害は今のところシャーペン1本隠されたくらいじゃないかな」
「なるほどシャーペン1本」
やはり高校生……女の子への身体的な攻撃はもしものことがあるためそう簡単には行動に出ないということなのだろうか。
オレがどうしたものかと考えていると対面に座っていたインキャJK早乙女が「シャーペン一本でも盗難は盗難」と小さく呟いた。
「え」
「ウチ、いじめする人嫌い。 基本いじめってウチみたいな性格暗い人とか、うるさい人たちに気に入られなかった人がやられる。 理不尽」
インキャJK早乙女が頬をプクッと膨らませながら拳を強く握りしめる。
「そ、そうですねオレも嫌いです……てか何でそんなに早乙女さん怒ってるんですか?」
オレがそう尋ねるとインキャJK早乙女は「え、ん……っ」と言葉を詰まらせながら視線を委員長JK七瀬へ。
すると今のアイコンタクトで意図を理解したのか、代わりに委員長JK七瀬がその理由を教えてくれたのだった。
「サッちゃんは漫画描いてるんよ」
「え」
「それで昔不良の男子や女子たちに絵をバカにされたことがあって……それからサッちゃんはそういう人たちのことずっと恨んでるんだよね」
「な、なるほど……」
オレがインキャJK早乙女に視線を戻すとちょうど目が合う。
すると間髪を容れずにインキャJK早乙女はオレにこう尋ねてきた。
「ボクくんは絵、描く人気持ち悪いと思う?」
「え、絵を描く人ですか」
「うん」
「いや特には……むしろ描けて羨ましいなーと」
「そ、そうなんだふーん」
受け答えは淡白ではあるが、オレが『羨ましい』と答えた途端にインキャJK早乙女の目に一気に光が灯る。
その後すぐにインキャJK早乙女は手を自身のスクールバッグの中へ……一冊のノートを取り出すと、それを開いてオレに差し出してきた。
「ーー……見ていいけん」
「え」
「感想……くれてもいいけん」
「あ……あぁはい」
見ろってことね。
オレは面倒くせーななどと思いながらもそのノートを受け取り中身を見てみることに。
どうやら英語の授業ノートっぽいのだがこれは……
「お、おおお?」
パラパラめくってみると所々にいろんなイラストが描かれており、その中の1ページでオレは手を止める。
なんという奇跡。 そこにはかなりラフではあるが、オレが昔好きだった作品【絆創膏をアソコに貼った私が無双して世界を救う!?】……通称【絆アソ】の主人公、ナタリーちゃんが描かれているではないか。
「ちょっ……早乙女さんこれ……!!!」
「な、なに? 感想?」
「これ【絆アソ】のナタリーちゃんじゃないですか!」
オレの問いかけにインキャJK早乙女の目が大きく開かれる。
「え……ボクくん、これ知ってるん?」
「知ってますよ!! オレもこの作品好きなんで……! てかめっちゃ良い……原作クラスですよ!!」
このオレの発言がスイッチだったのかインキャJK早乙女のオタク魂が解放。 そこから数十分に渡りオレはインキャJK早乙女の描いた絵を本人の説明を受けながら見させられることになったのだった。
「あ、あのー、絵は上手いの分かったんですけどお姉ちゃ……」
「これはボクくん分かる? 【じゃんじゃかハムロック】のヒロイン、ロックちゃん。 そしてこれが……」
◆◇◆◇
なんだかんだでインキャJK早乙女に付き合ったのは正解だったのかもしれない。
最後のイラストを説明付きで見終えると、インキャJK早乙女は何を思ったのかオレの手をギュッと握りしめてくる。
「さ、早乙女さん?」
「決めた。 ウチ、福田さん助ける」
ーー……。
「え?」
「もともと優しそうな子だったし友達になりたかったんやけど、不良たちが怖かったけん動けんかった。 でもボクくんアニメや漫画好きで良い子やし、そんなボクくんのお姉ちゃんだったらウチ……何がなんでも助けるけん」
「えええええええ?????」
何がどうなってそうなったらそこまで自身もリスク負って行動するに至るんだ?
意味が分からず混乱しているオレの目の前ではすでにインキャJK早乙女が勧誘を開始。 隣に座っていた委員長JK七瀬に「ね、それで良いやんねタマちん」と派手に跳ねた寝癖を揺らしながら首を傾ける。
「あーうん、良いよ。 でもこれでダイキくん、私がバイトしてること黙っててくれるやんね?」
「そ、それはもちろん」
「うん!! じゃあ決まりやけんね!! 約束破らんでよ!?」
バイトをバラされないだけでどれだけ嬉しいんだ委員長JK七瀬。
こうしてなぜかオタクの話で優香救助グループが発足。
用が済んだオレは時間的にもそろそろ帰ることに。 しかし2つ気になる点があったので、委員長JK七瀬に尋ねることにした。
「あの七瀬さん」
「なにダイキくん」
「早乙女さんがアニメや漫画が好きってのは分かったんですけど七瀬さんの部屋もかなりアニメ系多いですよね。 七瀬さんも早乙女さんと同じくらい好きなんですか?」
「そうやよー、でも私はサッちゃんと違って絵は描けないけどねー」
「そうなんですね」
「うん。 先にバラしちゃうと私はコスプレの方なんよ」
委員長JK七瀬が自身の頬に指先を当てながら恥ずかしそうにエヘヘと笑う。
な、なん……だと。
こんな美人がコスプレ……マジか!!
オレは自分の心の興奮がバレないようにポーカーフェイスで「コスプレなるほど」と回答。
本音を言うとそのあたりを深掘りしたかったのだが、時間も時間なので次の質問に移ることにした。
「あ、あと話変わるんですけど、前に七瀬さん『お姉ちゃんと友達になって都会のこと色々聞きたい』的なこと早乙女さんと話してましたよね」
「あー、聞こえてたんや」
「はい。 だからこそ2人に話を聞こうって思ったんです」
「なるほどねー」
「行きたい大学が都会にある……とかなんですか?」
もしそうなら目標が似ているということから今後優香と一緒に切磋琢磨できる良い友達になるかもしれない。
そんなことを考えていたのだが……
「ううん、都会ってコスプレイベントとか多いやん? やけん私、福田さんと仲良くなってその辺の話とか色々教えてもらいたいんよねー」
「あ、はい。 なるほどです」
その後オレは途中までインキャJK早乙女と帰ることに。
分かれて1人になってからもインキャJK早乙女とメールをしていたのだが……なんというかビックリするぞ?
【受信・早乙女ひかり】急なんだけどさ、ボクくんはお姉ちゃんのことどれくらい好き?
【送信・早乙女ひかり】え……それはもう世界で一番ですけど
【受信・早乙女ひかり】鼻血出た。 やはりおねショタは至高……合掌。
うん、このことは忘れてあげよう。
完全に思考や性癖に対するパッションがオレと同レベルじゃねーか。
お読みいただきましてありがとうございます!!
優香編にしてキャラ濃い子出てきましたね!笑
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