595 【優香編】その道のアドバイス!!
五百九十五話 【優香編】その道のアドバイス!!
「ダイキちゃん、今度から優香ちゃんは学校終わったらそのまま塾に寄ってから帰ることになったから、帰るのが遅くなっても心配しなくていいからね」
優香がお風呂に向かったのを見計らい居間に戻ると早速結果だけを福田祖母がオレに話してくる。
「あ、そうなんだ。 お姉ちゃん頑張ってるね」
まぁ話は聞いちまったからな。
オレは「じゃあお茶でも飲んでそろそろ寝るよ」と何も知らないフリをしながら自室へ。 部屋に入るなりすぐに結城に連絡……現在結城の母親代わりをしている高槻さんと話せないかのメールを送った。
【受信・結城さん】ママ? うん、今はもうご飯も食べ終わってお風呂のお湯が溜まるの待ってるところだから大丈夫だと思うよ。
【送信・結城さん】マジか! じゃあちょっと今から電話していいかな!!
【受信・結城さん】いいけど……お酒飲んでて酔っ払っちゃってるけどいい?
そ、そういえばそうだった。
高槻さんは大の酒好き……なのにすぐ酔っ払って潰れてしまうなんちゃって酒豪だったな。
まぁでもこれからお風呂に入るわけだし、そこまで酔い潰れていることもないだろう。
オレは早速結城に電話をかけることに。 すると数秒も経たないうちに『もしもし、福田くん?』とスピーカー越しからあの懐かしくも天使のような可愛い声が耳に入ってくる。
「あ、結城さん。 ごめんね急に」
『ううん。 久しぶりに福田くんの声聞けて嬉しい……元気だった?』
「あぁ。 元気だよ」
『友達は? できた?』
「え、あ、うん」
『あと……あとね、』
「ゆ、結城さん。 ちょっと落ち着こうか」
オレは何故かソワソワしている結城を一旦落ち着かせて本題に入ることに。 改めて高槻さんに話したいことがあるという旨を結城に伝える。
『ママに……なにかあったの?』
「まぁその……だな。 ちょっとお姉ちゃんのことで相談したいことがあって」
『お姉ちゃん? どうしたの?』
「うん、オレたち小学生には分からない問題があってさ。 大人で……かつ教師の高槻さんだったら何かいいアドバイスとかもらえるかなって思って」
そう伝えると流石は優香と姉妹の契りを結んだ妹というところだろうか。 結城はそれ以上のことは聞いて来ず、『わ、分かった。 すぐにママに代わるね!』とオレに伝えると、『ママー、福田くんからママにお話したいことがあるって』と高槻さんへと代わってくれたのだった。
『もしもーし、福田くーん? お久しぶりです〜』
スピーカー越しからも酒の匂いが漂ってきそうな程に酒に酔った高槻さんが上機嫌でオレに挨拶をしてくる。
「あー高槻さん、すみませんお仕事終わりの夜に。 ちょっと聞きたいことがありまして」
『なんですかぁ〜?』
「ちなみに今って時間あります?」
『問題ないですよーん。 なんたって今日はタマタマキラキラ☆金曜日なんですからぁ〜』
タm……ッ!?
た、確かに今日は金曜日で夜空もたまたま空が晴れて星がキラキラ瞬いてはいるけれども……!!!
電話の向こうからは『ちょ、ちょっとママ!? なに言ってるのー!?』と結城らしからぬかなり焦った声が聞こえてくる。
『あらー? 桜子、もしかして桜子的にはタマタマフラフラ☆フライデーの方が好きだったぁー?』
『ママぁーー!?!?』
『大丈夫よー? ママもたまたま触ったことしかないけれど、あれはなかなかの感触……思い出しただけでウフッてなるわぁー。 だから桜子も機会があったら……ね?』
『ごめんね福田くん!! ママの酔いが冷めたらまたこっちから掛け直すね!!』
「え」
ーー……プーッ、プーッ
そんな結城の声と同時に通話は強制的に終了。
再び電話がかかってきたのは数時間後のほぼ深夜……電話に出るとまだはっきりと呂律は回っていないものの意識はちゃんとあるようで、早速本題について聞いてみることにしたのだった。
「実はですね、お姉ちゃんが最近全国模試を受けたらしいんですけど成績が伸び悩んでるらしくて……それで塾に行くことになったんです。 なんかこうした方がいい……みたいなアドバイスとかってありますか?」
◆◇◆◇
そこからオレは高槻さんに何点かのアドバイスを受け、メモ用紙に書き記していく。
流石は低学年担任の教師……説明がかなり分かりやすいぜ。
『どうですかー? メモれましたー?』
「あ、ちょっと見直してみますね」
オレはメモした内容に目を通す。
・大学受験は定期試験のように勉強してすぐに結果が出るものではない。
・今は転校したてで心が落ち着いていないから勉強にも身が入りきってないのかも。 家に帰ってすぐに勉強するよりかは、誰かと話すなどの休憩をちょこちょこ入れて余裕を持たせてからやるべき。
・1週間のうち6日目は1〜5日に勉強した内容の総復習のみに全力を注ぎ、翌日の7日目は何も勉強しないで脳をリフレッシュさせるべき。
・その頑張る意志があれば大丈夫!
「ーー……はい、大丈夫です。 ちゃんとメモれてますありがとうございます」
『いえいえー。 私も大学受験は結構頑張りましたからねー。 お姉さんの気持ちもわかりますよー』
高槻さん……あなたを頼って正解だった。
オレはそれから高槻さんに再びお礼を言い電話を切ると、優香が勉強していることを確認して静かに1階へ。 布団に入りながら2人静かに会話をしていた福田祖父母のもとへ向かった。
「うん? どうしたダイキ」
「ダイキちゃん?」
オレに気づいた2人が揃って視線をオレに向けてくる。
こういうのはオレから言うんじゃなくて年上から言われた方が説得力があるからな。
それにオレが優香にさっきのアドバイスなんかしちゃったら盗み聞きしてたことバレちゃうし。
オレはゆっくりと2人の前へと歩み寄ると先ほどの高槻さんメモをそっと渡す。
「これは?」
「実はお姉ちゃんがおじいちゃん達に相談してた話オレ聞いててさ、さっきあっちの小学校の先生にアドバイス聞いたんだけど……これ、オレは知らないフリしてるからおじいちゃんおばあちゃんからそれとなく伝えてくれないかな。 テレビで言ってた……みたいなノリで」
「「え」」
福田祖父母が驚いたような顔で互いに顔を見合わせる。
「ダイキ、聞いてたのか」
「うん。 やっぱりお姉ちゃんのこと心配だったし。 でもこれで少しでも楽になってくれたらなって思ってさ」
「ダイキ……」
「ダイキちゃん」
こうしてオレは2人に「じゃあよろしく」とだけ伝えると一旦居間へ寄り、ホットココアを作って優香へ差し入れに。
「ちょっと寒かったから作ったけどお姉ちゃんのも作ったから飲んでねー」とだけ伝えて優香の部屋を後にしたのだった。
「あ、ちょっと待ってダイキ」
「ん?」
「その……ありがとうね。 温かい」
「うん。 何かあったら遠慮なく言ってね。 おやすみお姉ちゃん」
「うん、おやすみダイキ」
これで優香のモチベーションは上がってくれますように……!!!
オレはそう勉強の神に祈りながら静かに眠りについたのであった。
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