593 【優香編】引っ越し!!【挿絵有】
五百九十三話 【優香編】引っ越し!!
『お姉ちゃん、来年1年間だけでいいから……転校しよう。 オレと一緒に田舎のおじいちゃんとおばあちゃんの家に引っ越そう』
オレのために優香の人生を棒にふるなんてことは絶対にして欲しくない。
それからオレは優香をかなり説得。
それでも優香は『えええ、でもダイキももう6年生であと数ヶ月で卒業なのに……転校して平気なの!?』とオレのことを優先して考える聖人っぷりだったのだが、オレの真剣な思いが伝わったのか最終的には優香が折れる形に。
『まさかダイキがそこまでお姉ちゃんのことを考えてくれるなんて嬉しいな……』と微笑み、早速田舎の祖父母へと電話。 その後に優香の担任に急遽ではあるが大学受験に専念するため引っ越すことを決めた旨を伝えていた。
「お姉ちゃん電話しちゃったけど……ダイキも本当にいいの?」
「うん」
「もう桜子やエマちゃん、佳奈ちゃんたちとも遊べないんだよ?」
「大丈夫。 一年経ったら……お姉ちゃんがこっちの大学受かったら戻ってくるんだから」
「そうだけど……」
「あ、でも絶対にこっちの大学に決めなくてもいいからね? お姉ちゃんが行きたい大学が見つかったんならオレはそれを本気で応援するから。 もしお姉ちゃんが他の大学に受かって地方に引っ越すことになったとしても、オレも付いてきてもいいのならどこへでも一緒に行くから」
「ダイキっ……!」
こうしてオレたちは早急に引っ越し&転校の手続きを開始。
冬休み序盤にはエマたちにお別れ会なんかも開いてもらっちゃったりして、年が替わる前にオレたちは田舎……福田祖父母の家へと向かったのだった。
それにしてもビックリしたぜ。
お別れ会が終わって解散ってなったときのことなんだけど、結城もエマも三好も西園寺も……そしてもちろんギャルJK星も泣いてくれたんだ。
泣かれるってことはそれだけオレや優香の存在がみんなにとって近い場所にいたってことだろ? ほんと、みんなと出会えてよかった……運命巡ってまたこっちに戻ってこれた時にはよろしく頼むぜ!!
「ダイキ、さっきからスマホ震えてるけどすごいね。 メール?」
新幹線車内。 オレのスマートフォンが震えていることに気づいた優香がオレに話しかけてくる。
「うん。 結城さんたちから」
「ダイキ愛されてたんだね。 ごめんねお姉ちゃんのために」
「それは言わない約束だよお姉ちゃん。 それに元はと言えばオレが言い出したことなんだし」
「うん、ありがと。 勉強頑張って大学受かるから……また戻ろうね」
優香はオレに優しく微笑むと自身のスマートフォンに視線を戻し誰かとのやりとりを再開させる。
まぁおそらくはギャルJK星なんだろうな。
そしてオレも送られてきたメールを見てこの約1年半の出来事を懐かしんでいた。
【受信・三好】福田、元気でね。
【受信・小畑さん】ちょ、佳奈から聞いたんだけど今日行っちゃったの!? 夜電話するから!
【受信・多田】福田、頑張りなよー。 ウチの返事は後回しでいいから佳奈を優先してあげて。
【受信・西園寺】寂しいな。 またキャンプ行こうね。 それか来年の夏休み、そっちに遊びに行ってもいい?
【受信・エマ】優香さんのためにそこまで出来るダイキの愛、凄いわね。 そういうところ好きよ。 でもダイキ、絶対に戻ってきなさい! じゃないとエマの秘密知ってる人が近くにいないから愚痴れないし頼れないじゃない。 分かった?
【受信・水島】西園寺さんから聞いたんだけど、ご主人さま転校しちゃうの!? なんで!?
【受信・星美咲】ゆーちゃんを頼むぞー。 また連絡するけどダイキも頑張れな!
【受信・結城さん】福田くんのおかげで私、学校が楽しめるようになって、ママとも仲直りできた。 戻ってきたら連絡してね。 あと、ママの病気がそれよりも早く治ったら一緒に遊びに行くね。
あれ、おかしいな。
覚悟しての行動だったのに涙が……。
◆◇◆◇
田舎に帰ったオレたちはそこで無事新年を迎え、それぞれ新たな学校へと通うことに。
ちなみにオレはあの褐色娘・陽菜と同じ小学校らしいから少しは気が楽なんだけど、優香はどうなんだろう。 やっぱり緊張してるのかな。
朝、優香のことが気になったオレは着替えた後に優香の部屋を訪ねてみることに。
「お姉ちゃん、開けるよー」と言いながら帰省時にも優香が寝ていた部屋の引き戸をゆっくりと開けた。
「あ、ダイキもう着替えたの? お姉ちゃんももうちょっとで着替え終わるから待っててね」
カーテンが開けられ窓から光が差し込まれているなか、優香が優しくオレに微笑みかける。
それはもう慈愛に満ちた笑みで、オレはそれだけで蕩けそうになっていたのだがそれよりも問題は……
「ちょ、お、お姉ちゃん!! どうしたの大丈夫!?!?」
オレは思わず股間部分を抑えながら視線を優香の顔より若干下へと向ける。
なんということだろう……優香は本来着けるべきブラを忘れたまま制服の上着に袖を通していたのだ。 しかもまだ寒い冬だというのに夏用の半袖を!!
「え、ダイキ……なにが? お姉ちゃんは大丈夫だよ?」
「いやいやいや!! 全然大丈夫じゃない……お姉ちゃん今冬だよ!? なのになんで夏服の半袖……しかもそれ以上にブラ……下着着けてないから見えそうになってるよ!!!」
「え? あ……ほんとだ。 あは、あはははは。 ごめんねありがとうダイキ。 お姉ちゃんまだ寝ぼけてたのかな」
その後優香は気を取り直して夏服を脱ぎ、ちゃんとブラジャーを着けてから長袖の制服に袖を通して共に家を出る。
「お姉ちゃん自転車通勤になったんだよね。 大丈夫? ちゃんと乗れる?」
「もーどうしたのダイキ、そんなにお姉ちゃんのことが心配? 大丈夫だから、ダイキは自分のことに集中してね」
優香はオレの頭をわしゃわしゃと撫でると「じゃ、行ってくるね」と声をかけ自転車に跨り少し離れたところにある公立高校へ。 そしてオレはそんな優香のことを気にかけながらも新しく通う小学校へと向かった。
「なんか……あれだな。 いつもならエマやエルシィちゃんが迎えにきてくれて一緒に登校して……1人で登校するのっていつぶりだろ」
一人寂しく通学路という名の田舎道を歩いていると、ポケットの中に入れていたスマートフォンが振動する。
大してやることのなかったオレは「ん、なんだー?」と独り言を呟きながら中身を確認した。
【受信・エマ】おはようダイキ。 いつもならエルシィとアンタを迎えに行って一緒に登校してたのに、今日からはエルシィと2人だけになっちゃったわ。
おおおお!!!! エマああああああああ!!!!!!
返信をするため内容を考えていると、そこから時間差で何件かメールが。
【受信・三好】起きたー? 登校初日から寝坊したらそっちのいじめっ子にいじめられるよ? まぁ福田なら大丈夫だと思うけど。笑
【受信・西園寺】おはよう。 こっちの学校と同じ日が登校日だったよね? 頑張ってね。
【受信・結城】寂しかったらいつでも連絡してね。 授業中でも頑張って返すから。
三好いいいいい!!! 西園寺いいいいい!!!! 結城いいいいいい!!!
そうだ……オレは1人じゃないんだ!!!
オレは皆のおかげで心を温かくしながら学校へ。
そして学校まであと少しのところ……最後に連絡がきたのはギャルJK星からの電話だった。
「あ、はいもしもし星さ……」
『ダイキーー!!! ゆーちゃんが電話に出ないんだけど!!』
スピーカー越しに焦りに焦ったギャルJK星の大声がオレの耳へと流れ込んでくる。
「いや、あの星さ……」
『風邪引いてるとかそんなんじゃないよね!? さっきから電話してんのに一切出ないんだべ!!』
まったく……本当につくづくオレたちは愛されてるぜ。
オレはギャルJK星が言葉を詰まらせたタイミングを見計らって「あの、ちょっといいかな星さん」と無理やりねじ込む。
『どうした!?』
「多分それ、自転車通学だから気づいてないだけでは?」
『ーー……へ? 自転車通学?』
「うん」
そう答えるとギャルJK星も思い出したのだろう。
さっきまでの勢いはどこへやら……焦りしか見えなかった声色は、すぐにいつものおちゃらけたギャルJK星らしい陽気な声色に戻る。
『え、あ、ふーん。 そ、そういやそうだったね。 あははごめんねアタシ1人で取り乱しちゃって。 んじゃダイキも頑張れなー!!』
うん、場所こそ変わっても、なんかいつも通りだな。
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