586 【水島編】恋の温度急上昇!!【挿絵有】
五百八十六話 【水島編】恋の温度急上昇!!
突如水島に感じたエロい気持ちとは別の謎の……しかしどこかで体験したことのある胸の高鳴り。
一体あれは何だったんだ……そう考えていたオレだったのだが、それはお風呂上がり後にオレの部屋でベッドに横になりながら水島とエロ漫画を読んでいる時のことだった。
あー……そうか、結城だ。
いつだったかな。
確かあれは結城と知り合ってまだ完全に打ち解けてない時期だったはず……オレが小畑と多田にイジられてるところを結城が発見して、それをイジメだと勘違いした結城がオレを無理やり引っ張り保健室へと避難。 そこで結城がオレにイジメから救ってくれたことに関しての感謝をしてきたんだよな。(第32話『相手はリアルJS①』推奨)
あの時初めてオレはど直球な青春的会話をしてドキドキしたんだっけ。
まさしく当時感じていたそれは『恋』。 そしてそれを今水島に感じているということは、オレが水島に恋をしているということになるってことだ。
ーー……やべ、結論づいた途端に急に恥ずかしくなってきたぜ。
「んー? どうしたのあなたー」
オレの僅かな異変に気付いたのか水島が「なにー? なんで顔を逸らしてるのー?」と顔を覗き込みながら尋ねてくる。
「え、あ……え?」
「もしかして、また元気になっちゃったー?」
うおおおおおおおお!!!! その顔を近づけながらの上目遣いやめろおおおおおおお!!!!!
可愛すぎてどうにかなってしまいそうだぜえええええええええええ!!!!!!!
なんだかんだで【妹嫁の刑】とか言っておきながらオレと水島がやっているのは少しランクの上がった【おままごと】。
まるで新婚夫婦……そうでなくとも同棲したてのカップルのような真似事をしてしまったが故にオレの恋心が発動してしまったのかもしれない。
これは……このままでは危ない。
オレみたいなインキャと学年のマドンナと言われる美女がそんな関係になるんてこと、漫画やアニメの世界以外であってはならな……
「あははー、やっぱり元気だったー」
「ぐあああああああ!!! 止めだ止めだ止めだああああああ!!! 妹嫁の刑はここで終わり!! 水島……お前ももう普通にしていいからそうオレにくっついてくるなああああああ!!!」
完全なまでに恋に落ちたことのないオレは、このままだと自分が自分でいられなくなるような気がしたので慌てて水島と距離を取るようにベッドから落ちる。
「えー、どうしたの突然。 『水島』じゃなくて『花江』って呼んでよー。 花ちゃん何か気に障ったことしたー?」
「ち、ちげーよ!! そんなんじゃないけどもうお終い!! もう充分なまでに【妹嫁】してもらったからこれで全部許す!! はい終わりおやすみーー!!!」
「なんでそんな突き放すこと言うのー? 花ちゃんのこと、嫌いになっちゃった?」
「んなわけねーだろ逆だよ逆!! 好きになっちゃいそうだからやめるんだよ!!!」
「え?」
「エ?」
ーー……ア。
言ってしまったああああああああああああああああああ!!!!!!!!
思わぬハプニングにオレは大混乱。
受け取り方によっては告白にも取れるこの状況……オレは「ちょ、いや今のは忘れてくれええええ!!!」と声も体も震わせながら部屋から飛び出そうとしたのだが……
「え、じゃああなt……福田くん、花ちゃんとその……両想いだね」
「ーー……!?」
まったく予想していなかった展開に思わず足を止め振り返ると、水島が頬を赤らめながら優しく微笑んでいる。
今水島はなんて言った?
オレと水島がりょ、両想い? てことは水島もオレのことを……?
「み、水島……お前今言ったこと……本当なのか?」
そう尋ねてみると、水島はオレをまっすぐ見つめたまま小さく頷く。
「じょ、冗談はやめてくれよ? オレは恋愛耐性がないからかなり弱いんだ……『あとで嘘でしたー騙されたー』とかならガチで許さないぞ?」
「うん、嘘じゃないよ。 本当に花ちゃんも福田くんのこと、好きだよ?」
「それはその……いわゆる友達としてとかじゃなく?」
「うん、1人の男の子として」
水島の迷うことなき即答にオレの胸の高鳴りが更に勢いを上げてビートを刻んでいく。
そしてオレが常に張っていた心の扉は完全に開放モードに。 その結果、オレの水島に対しての感情は『好きになったらいけない』から『好きになってしまった、好き』へ……もう後戻りのできない状態になってしまったのだった。
さっきは水島のやつ、オレのこと1人の男として好きって言ってくれたけど……マジで嘘だったら相当心にダメージ受けるんだろうな。
オレは最終確認として改めて水島に尋ねることに。 「最後にもう1度聞くぞ、ほんとーに嘘や冗談じゃないんだな?」と聞いてみると、水島はゆっくりと立ち上がりオレの前へ……そしてそのまま優しく抱きしめてきた。
「ちょ、……水島……!?」
オレが分かりやすく狼狽えていると水島がオレの耳元で柔らかく囁く。
「嘘じゃないよ、『好き』って言ってもらえて本当に嬉しかった……ずっと奴隷のままなんだろうなって思ってたから」
「えっ……」
「もちろん冬休みに入るギリギリまでは福田くんのこと、普通の友達よりもちょっとだけ好きってくらいだった……でも今回お兄ちゃんのこともあってお泊まりさせてもらったり花ちゃんに寄り添ってくれたりして……そこで本当に好きになっちゃったんだ。 でも所詮花ちゃんは奴隷……それ以上の関係にはならないんだろうなって思って諦めてたんだけど……」
水島の目から涙が溢れる。
「み、水島……お前泣いて……」
「うん、花ちゃん泣いてる。 嬉しいもん。 だって花ちゃんの好きな人が、花ちゃんのことを好きでいてくれたんだよ? こんな嬉しいことって……幸せなことってないもん」
水島はそう言うとゆっくりと顔をオレの胸へ。
パジャマに顔を埋めながら小さく嗚咽し「よかった……よかったぁ……」と声を震わせながら泣き出した。
あぁ……オレはなんてことを。
口を滑らせてきっかけを作ってしまったのはオレなのに、それなのにそれに対する水島の返事……気持ちを疑ってかかってしまったなんて。
オレは自らの恋愛チキン度に絶望しながらも水島へ対する気持ちが風船のように大きく膨れ上がっていく。
そしてそれは割れることも知らずどんどん膨れ上がっていき……気球なんかも比じゃないほどに大きく成長。 もう水島への気持ちを抑え込むなんて不可能だ。
「ご、ごめん水島……疑ったりなんかして」
「ううん、大丈夫」
戸惑いながらも抱きついてきていた水島の背中に腕を回すと、水島は涙を溜めたままの目でオレを見上げてくる。
「ど、どうした?」
「あはは、こんなに優しく接してくれる福田くん……初めてだね」
「ーー……そうか?」
「うん。 でもダメだよ福田くん……せっかく花ちゃんたち良い雰囲気なのに、ここが元気になってるからムード台無しだよぉ」
ーー……ここが元気?
目を軽く充血させた水島が悪戯に微笑みながらその箇所をポンポンと手で叩いてくる。
そこは勿論……お察しだよな。
「ちょっ……おま、水島!! お前だってせっかく良い雰囲気なのに何言って……! 気づいても言わないのがマナーじゃないのか!」
「だって凄いんだもん……抱きついてたら花ちゃんのお腹の下辺りでビクビクしてるんだよ? 流石に集中できないよー」
「分かった、分かったからもう叩くな」
「なんでー? だってここがいけないんだよー? 普通ならここからチューの流れだったのにさ、これが元気なせいでそのムード維持できなかったんだから」
そう言った水島はオレの制止も聞かずにポンポンポン。
あぁ……あれから1時間も経ってないんだけどな。 こんなに元気なのはやはり子供だから……成長期故になのだろうか。
身体は正直なものでこんなムードの中でもオレは盛大にハックション。 その後オレはあまりの不甲斐なさから水島から目を逸らし俯いていたのだが……
「うわー、花ちゃん前に調べたことあるんだけど、平均って1・2回で多くて3回らしいんだよね。 でも今日……このちょっとの時間だけでどれだけしてるの? 凄いねー」
「ーー……お恥ずかしい限りで」
「仕方ないよ、でもこれでスッキリしたよね。 じゃあまたお風呂入りにいこ? 花ちゃん洗ってあげる」
「え」
「でもあれだよ、今回は【奴隷】や【妹嫁】ではない……【恋人・水島花江】として一緒に入るんだからね」
「え……えええええええ!?!?」
さすがはマドンナ……こういうときの行動力は本当に優れているぜ。
それからオレは水島に手を引っ張られながら再び脱衣所へ。
恋人・水島花江に介抱されながら汚れた身体を再び洗い流したのだった。
ていうかあれだよな、恋人になってすぐにするのが手を繋ぐとかキスとかじゃなく、お風呂って……この世界でオレくらいなんじゃないか?
「ちょっと待ってー、なんでまた元気になってるの? 花ちゃん信じられないんだけどー」
「うるせーな仕方ねーだろ! てか指先で弾くな!!」
「良いじゃん別にー。 花ちゃん、これに興味は結構あったけど、好きな人のだから触ってるんだよー?」
「ーー……お、おう」
「あははー、こっちが返事したー」
「う、ううううるせえええええ!!!!」
美女と野獣ならぬマドンナとインキャ。
まさかこんなオレが学年のマドンナと付き合えることになるなんてな。 世の中何があるか分からない……なんて最高な人生なんだ。
オレは前世も含め、生まれて初めて出来た彼女に大盛り上がり。
これからは水島と2人で最高の人生を謳歌していってやる……そう決意したのだった。
「うわああああ、また出たああああ!!!」
「だからもう弾くなっつってんだろ!! 珍しいのは分かったからやめろ!!」
「えー」
「ーー……お前もしかして実はオレより変態なんじゃないのか? とりあえずもう今度はオレ1人で洗い流してくるからお前先に部屋に戻ってろ」
「お前じゃないよ、花江って呼んで」
「ーー……!!!」
「あははー、今度は鼻血出してるー」
ちくしょう……冬なのに不思議と寒くないぜ!! これは興奮してるからなのか恋の仕業なのかどっちなんだ!!
そしてオレ……こいつとの人生、無事に耐えきれるのかああ!?
◆◇◆◇
数時間後。
「ねぇ、明日ケーキ作ろう?」
「ケーキ?」
「うん! ウェディングまであとちょっとケーキ! お兄ちゃんにもメールしたんだけど、材料買って手伝いに来てくれるって!」
「お前……じゃなかった、花江もしかして、もうお兄さんに言ったのか?」
「うん! ダイキと付き合うことになったって報告したよ! お兄ちゃん喜んでた!!」
「そ、そうか……」
「ダイキにもお兄ちゃんのケーキ、食べて欲しいなー。 ほんっとーに美味しいんだよー」
(水島編・完)
お読みいただきましてありがとうございます!!
水島編終了しました約1ヶ月お付き合いありがとうございました!!
特別編を挟んだ後にリクエストありました【優香編】・【ギャルJK星編】どちらかに移行します!!




