584 【水島編】ここにきての修羅場!?
五百八十四話 【水島編】ここにきての修羅場!?
「姫……高校生なのにそんなことも出来るの?」
「あはは、まぁなんだかんだで毎日料理してますので」
夜。 キッチンで優香と水島母が仲良く世間話等をしながら晩御飯の支度をしているのをオレと水島はソファーからジッと見つめる。
今までの優香は基本的に結城や三好、ギャルJK星たちに料理を教える側だったのだが、今日だけは学ぶ側。 主婦の裏技やコツを「なるほどですー」と聞きながら知識を増やしていっていた。
やっぱり優香、誰かと料理してると楽しそうだよな。
そんなことを考えていると、隣で水島が「ねぇご主人さま」とオレの腕を軽く突いてきた。
「ん、なんだ?」
「花ちゃん思ったんだけどね、ママ……とっても幸せそう。 こんなに楽しそうなママ見るの花ちゃん久しぶりかも」
「お、奇遇だな。 オレもお姉ちゃん見ながら似たようなこと考えてたんだ」
「じゃあさ、ママたちがご飯作ってくれてる間に花ちゃんたちも楽しもうよー」
「いいねー、じゃあ何するよ。 やっぱり魔獣ハンターか?」
そう言いながら近くに置いていたゲーム機を手に取ると、水島が「あ、そうそう」と何かを思い出したかのようにスマートフォンを取り出す。
「ん、どうした。 メールか?」
「ううん。 ご主人さまの家にママと行く前にね、お兄ちゃんが教えてくれたんだけど……今日の夕方に魔獣ハンター、アップデートされるらしいよーって」
「そ、そうなのか?」
「うん。 確かなんだったけな……新しくキャラクターを作るときに背の高さとか変えれるようになるんだって」
「なにいいいいいいイイイイイイイイ!?!??」
オレは水島の言葉を聞いて思わず立ち上がる。
それってつまりは……あれだ!! 女キャラを作って身長を小さくした場合は幼女でプレイすることもできるということじゃないか!!
「こうしてはいられねええ!!!」
早速オレは検索を開始。
もちろんその方法はスマートフォンよりもパソコンの方が早いからな。 オレはちょうど今日工藤から譲り受けたノートパソコンを引っ張り出すとインターネットに接続……水島の教えてくれたアップデートの内容について検索をかける。
そしてそれを水島ともに楽しもうと2人でパソコン画面を覗き込みながら内容を確認していたのだが……
「え、あっ……ごめんなさいご主人さま、花ちゃん何かボタン押しちゃってゲーム始まっちゃった」
うん、カーソルか何かがエロゲアイコンのところでタイミングよくクリックされたのだろう。 画面上にはエロゲ会社の名前が表示され、その後に落ち着いたメロディが流れ出し【幼女開発魔法】というタイトルが現れる。
おぉ……このメロディ、懐かしいぜ。
とはいえタイトル画面だけ見ても誰1人裸とかではないしそこまで焦ることもない。 オレはちょうど尿意がいい感じにピンチだったので水島に「ちょっとトイレ行ってくるわ」と立ち上がりトイレのある方へと体を向けた。
「ご主人さま、お手洗い我慢してたのー?」
「まぁちょっとな。 アップデート内容が気になりすぎてトイレ行く気になれなかったんだ」
「そっかー。 行ってらっしゃーい。 花ちゃん待ってるねー」
「おう。 ついでにそれ消しといてくれ。 トイレから戻ってきたら改めて一緒にアップデート内容確認しようぜ」
「はーい」
こうしてオレは若干股を抑えながらトイレへダッシュ。
すぐに用を済ませ急いでリビングへと戻り水島とアップデート内容についてを再び調べ盛り上がっていたのだが、ここでふと先ほどのエロゲ起動の件を思い出した。
「そういや水島、エロゲの消し方知ってたんだな」
「なんで?」
水島がキョトンと首を傾げながらオレを見つめてくる。
「いやさ、だって大画面設定にしてたんだぞ? そういう時ってキーボード左上の【ESC】ボタンを押して終了させるか、タイトル画面に表示されてる4つの単語【START・GALLERY・OPTIONS・EXIT】の中から【EXIT】を選ばないと消えないんだ。 どっちの方法でやったんだ?」
「そんなの簡単だよー。 【EXIT】押したよ、それくらいわかるよー」
「なるほど」
確かに思い返してみれば水島は以前から水島兄と一緒にエロゲーもやってたっぽいしな。
もしかしたら兄がゲームを終了しているところも見ていて【EXIT】が終了ボタンってことも覚えていたのかもしれない。
オレは水島を甘く見ていたことを反省……その後早く【魔獣ハンター】を幼女でプレイしたくなったオレは早速【魔獣ハンター】を起動しダウンロードを開始。 水島も同じタイミングでダウンロードを始めたので、お互いダウンロード完了までの間時間つぶしも兼ねてエロゲーを起動しようとしたのだが……
「ーー……ん? あれ?」
検索画面を消してエロゲーをしようとアイコンを探すも、先ほど誤起動させた【幼女開発魔法】が見当たらない。
確かにここ……画面右上に配置していたはずなんだけど。
オレが若干焦りながらアイコンを探していると水島が「どうしたのご主人さまー。 ダウンロード終わったよー」と顔を覗かせてくる。
「え、あ、ああ……ちょっと待ってくれ」
「なにかあったのー?」
「んー……まぁそうだな。 なにか『あった』……というよりかは『無くなった』という方が正しいんだけど」
流石に誤タッチでアイコンの場所が移動するなんてことは考えられない。
一応念のためにとゴミ箱アイコンの中もチェックしてはみたのだが、そこにも【幼女開発魔法】の姿は見当たらない。
とりあえず最後にこれ触ったの水島だし、ダメもとで聞くだけ聞いてみるか……
オレは『知らない』と水島に言われることを前提で一応聞いてみることに。
「さっき起動したゲームどこにいったか知らないよな」と尋ねると、衝撃の事実が明らかになってしまったのだった。
「え? ご主人さまが『消しといて』って言ってたやつだよね? ちゃんと消したよ」
「う、うん。 そうだな。 それでそれがどこにあったか……とか知らないよな」
「え、だから消したよ?」
「うん。 それは分かったからその消したアイコンがどこにあるのかを今聞いて……」
「ないよ。 ちゃんとアンインストールして消したんだからー」
ーー……。
「え?」
水島が一瞬何を言ってるのか理解できなかったオレは大きく瞬きをしながら水島を見つめる。
「んー? どうしたのご主人さまー」
「あー……いや、えっとだな……え? アンインストール?」
「うん」
「な、なんで?」
「だからさっきも言ったけど、ご主人さまが『消しといて』って言ったから」
「ーー……だから画面を消して、かつアンインストールまでしたと」
「そうだよー。 前にお兄ちゃんが『いちいちアイコンをゴミ箱に入れるだけじゃなくてアンインストールしないといけないの面倒だなー』って言ってたの花ちゃん覚えてたんだー。 だからご主人さまが面倒くさいことやるのはかわいそうだなーって思ったから、花ちゃんが前もってやってあげたんだよー?」
「ーー……」
なん……だと……。
冗談だと信じインストール画面を調べてみるも確かに【幼女開発魔法】の名前だけ見当たらない。
ということはやはり……
「あんぎゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
この水島の行動によりオレの精神は大崩壊。
ご飯の時間までの間、オレは真っ白に燃え尽きまるで屍のようにその場で倒れていたのだった。
またあの世界を楽しめると思っていたのに……。
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