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582 【水島編】とある筋の人と水島兄


 五百八十二話 【水島編】とある筋の人と水島兄



 あれから平和に新年を迎え、今日は1月4日。

 三が日も終わったこともあり色んなお店が営業再開し始めたのでオレは早速水島にメール。 今から向かうことを連絡して途中でこっそりやりとりを交わしていたとある人物と合流……ともに水島宅へと向かった。



 ◆◇◆◇



 水島宅に着いたオレが早速インターホンを押すと、玄関から出てきた水島兄が「あ、ダイキくん」とオレに手を振ってきた。



「あー、お兄さんあけおめです。 ていうかそのエプロン姿……家事してたんですか」


「あけましておめでとう。 うん、約束だからね。 あの翌日から掃除洗濯やらせてもらってるよ。 それよりも花江から聞いたんだけど……俺に何か用があったんだよね」


「はい」


「それで……そ、そそそその隣の方は?」



 水島兄が持ち前のインキャムーブを発動させながらオレの隣に立つ人物へと視線を移す。



「あー、この人ですか。 この人はですね……」



「はじめまして水島くん!! 僕は工藤裕太!! ダイキの友達なんだ!! よろしく!!!」



 そう、オレの隣にいるのは前世で大学時代からの親友・工藤裕太。 オレが紹介するよりも先に工藤がテンション高めに水島兄に頭を下げた。



「え、あ……はぁ。 は、はははじめまして工藤さん。 それで用件は……?」


「ダイキから聞いたよ!! 君、色んな懐かしいグッズとか激レアなもの持ってるんだってね!! しかもそれを全て売るって言ったそうじゃないか……だからそれをぜーんぶ僕が買わせてもらおうって思ってね!! もちろん買取価格よりも上で!!!」


「エ……エエエエエエエ!?!?」



 ◆◇◆◇



「ごしゅ……福田くん、あの人本当に福田くんのお友達なの?」



 水島兄の部屋の前。 水島と水島母が不安そうな表情でオレに尋ねてくる。



「あー、そうだよ。 ちょっと色々あって仲良くしてもらってるんだ」


「そうなの? ママ……なんか犯罪臭がしてちょっと怖いかな」

「花ちゃんも」



 失礼極まりないな。

 確かに工藤はまぁまぁなぽっちゃり体型でメガネ……髪も結構ボサボサだけどめちゃくちゃいいやつなんだぞ。



 オレは「いやいやそんなことないですから安心してください」と2人をなだめつつ視線を水島兄と話している工藤へ。

 どうやらグッズの品定めをしている様子……一体どんな反応をするのか楽しみに見ていた。



「お……おふぉおおおお!! これは初回数量限定盤のラブカツ設定資料集……しかも付録のプロモーションカードも未開封なの!?」



 ふっ、そこにまず目を付けるとはさすがはオレの同志。

 工藤が顔を真っ赤にさせ声を裏返しながら「これはすごいよおおおお!!!」と水島兄に詰め寄る。



「は、はははひ!! 当時から俺もラブカツ好きだったので読む用・観賞用・保存用・永久保存用で4つ買ってましたから!!」


「おおおおお!! それは賢い!! やっぱり保存用と永久保存用は大事だよね!! 僕もよくそうやって買ってるよ!!」


「そ、そうなんですか!!」


「もちろん! じゃないともしもの時に……って……え? あ、あ、アババババーーー!!! これは【幼女開発魔法】のアップデートボックス!! そういやダイキから壊れてもう使えないって聞いてたけどまさか本物に出会えるだなんてええええ!!! これ、パソコンにはそのデータ残ってるんだよね!?」


「あ、まぁはい。 念のためにとアップデートのデータ自体も別のファイルにも保存してます!」


「ぽふぁあああ運命キタアアアア!!! よし!! そのデータとこのボロボロの箱をセットで200万で買おう!!!」


「エエエエエエエエ!?!?!?」



 この工藤の発言には水島兄はもちろんのこと遠くで聞いていた水島母も驚愕。

「え? え? たかが昔のゲームデータで200万?」とまるで機械のようにブツブツと呟いている。



「あの……福田くん、ごめんね。 あの福田くんのお友達は一体何者なの? 話を聞いたところ結構なお金持ちっぽいけど……何か悪いことしてるわけではないんだよね?」


「あ、はい大丈夫です。 あいつ……じゃなかった、工藤さんはお金持ちなだけですよ。 少し前までは普通に社会人してましたし。 見た目があんななのは……あれです、工藤さんは見た目にこだわらないタイプなんです」



 そう、工藤は今は仕事を辞めて豪遊人生を満喫中。


 以前神様……美香の写真をカメラに収めてそのご利益からか宝くじが当選……大金を手にしたんだよな。

 最近までまったく連絡が取れなかったのだが、理由を聞いたところ半年くらい海外旅行に行ってたらしい。 そこで各国の幼女を見て回って癒されてたんだとよ。

 ーー……とまぁそういうことは置いといて、そんな工藤に水島兄のグッズの話をしたところ、もう入手しづらいグッズ等もあったりしてすぐに食いついてきたってわけだ。



 工藤のやつ、楽しそうで何よりだぜ。



 それからも工藤の査定はしばらく続き、オレは水島母・水島とリビングでのんびり工藤の持ってきたお菓子を食べながらくつろぐことに。



「これなんだろママ。 面白い名前のお菓子だね。 なんでチンk……」

「花江ちゃん。 ちんすこうね」



 ちんすこう……沖縄の伝統的なお菓子だな。

 水島の危険な発言を察知したのか水島母が言葉を重ねるように訂正してくる。



「あーほんとだ。 あはは、花ちゃんてっきりこの名前チンk……」

「花江ちゃん。 ちんすこうね」



「ーー……」



 そんな中身のない会話をしてどれくらい経っただろう。

 目をキラキラさせた水島兄が「ちょ……ちょっとお母さん!!!」とリビングに下りてきた。



「どうしたの? もう工藤さんとの査定終わったの?」


「お兄ちゃんも食べるー? 美味しいよこのチンk……」

「花江ちゃん」



 水島……お前それもはや言いたいだけだろ。



「それで……査定終わったのね?」


「うん!! 今終わってこれから軽トラックがくるらしいからそこに積み込むだけなんだけど……見てよこれ!!!」



 水島兄が後ろに隠していた手を勢いよく前へ。

 するとなんてことだ……そこには大量の札束が握られているではないか。


 これには水島母も驚きを隠せないようで「え、えええええ!?!? どうしたのこれ……これ全部あれを売った金額なの!?」と水島兄を見上げた。



「そうだよ!!」


「一体いくらあるの!?」


「400万だよ!!!」



「「「えええええええええええ!?!?!?!?」」」



 お金の力は偉大なもので、水島母のテンションは一気に最高潮。

 段ボールを玄関まで下ろしてきていた工藤に「本当にあんな大金よろしいんでしょうか!?」と確認を取りに向かう。



「あー、いいですよ。 僕も普段お目にかかれない激レアなグッズにテンション上がりましたよー」


「それにしても金額が金額ですし……せめて何かお礼を……!」


「構いませんよ。 なんたって僕、かなりお金持ちなんですから」



 その後工藤がもう帰るとのことでオレも一緒に帰ることに。

 そして軽トラックに乗せてもらっている途中、水島からメールが届いた。



【受信・水島】ご主人さま、何から何までありがとー。


【送信・水島】構わん


【受信・水島】それでね、ママが今日の夕方花ちゃんと2人でご主人さまのお家に行きたいって言ってるんだけど、いいかな。


【送信・水島】わかった。 伝えとく。

 


 水島にメールを送り終えたオレは今度こそ一件落着だなと安堵のため息をつく。

 するとそれをみていた工藤からとんでもない発言を聞くことになったのだった。



「どうしたのダイキ、大丈夫?」


「あー、まぁな。 色々あったから疲れたんだよ」


「そっか。 あ、そうそう、さっきあの水島くんからもらったゲームデータとかソフトあるわけじゃん? ダイキってパソコン持ってたっけ」


「いや、お姉ちゃん用しかないな」


「だったらもう僕使わないノートパソコンあるからあげるよ。 ついでに気になるエロゲーとかあったらインストールしていいよ」




「ま・じ・で!?!?」




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[一言] そんな宝くじの使い方してると、すぐなくなるぞ。貯蓄しとけと(´;ω;`)
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