58 脳内全てがピンク色【挿絵有】
2020/08/17 挿絵描いていれました!
五十八話 脳内全てがピンク色
まさかの展開……結城にお風呂に誘われたオレは一瞬頭が真っ白になる。
なんだかんだで結城は今一番気になってる女の子だけど……でも、いいのか!? いいのかオレ!?!?
「福田……くん?」
結城がオレの返答を待っているのかじっとオレを見つめる。
その姿があまりにも可愛くてついついこう言っちゃったんだ。
「じゃあ行こう」
◆◇◆◇
ーー……ゴクリ。
流石に向かい合って服を脱ぐのは恥ずかしいので先にオレが浴室に入って湯船に浸かりながら結城を待つ。
「福田くん、入るね……」
脱衣所から結城の声。
扉がゆっくりと開かれタオルで前を隠した結城が中へと入ってくる。
流石にタオルだよなそうだよな。
オレは心の中でため息。
その後すぐに結城をガン見しないように水面に視線を移したのだが、そこでオレは重要なミスを犯していたことに気づいてしまう。
「ーー……あ」
逆にオレ、タオルとか用意してねーじゃん!!!
あまりにも緊張しすぎていつものように入ってきちまったあああああ!!!
しかし結城は内心焦っているオレをよそにゆっくりと湯船の中……オレの隣に座る。
「その、ありがと福田……くん」
浴槽に向かい合わせに入るなり結城がオレに感謝をのべる。
「え、え、なんで?」
「だって一緒に入ってくれなかったら私、怖くて本当に入れなかったから……」
「あー、はいはい! いいよ別に! うん!」
うわあああ目のやり場に困るよおおお、ていうかこのままだとオレが保たないよおお!!
必死に冷静になろうとするも至近距離からの結城の声が浴室で反響してめちゃめちゃ色っぽく聞こえて仕方がない。
何か話して気を紛らわせようとするも、脳内全てがピンク色に染まっているからか何も思い浮かんで来ない。
ーー……こうなれば勿体無いがすぐにここから脱出するしか!!
「じゃ、じゃあオレ先に髪とか洗うね!!」
オレはおもむろに立ち上がり浴槽から脱出。 全ての煩悩を吹き飛ばすためにシャワーを強めに流しながら結城に視線を向けた……その時だった。
「うわぁ、私初めておち……
ガガガーー……ギギギーー……プツン。
いやぁ申し訳ない。 何故か分からないけどあそこら辺からの記憶がなくなってしまっていてね。
気づいたらもうオレ、いつの間にか風呂上がってて風呂上がりのアイス食べてたよ。はっはっは!!
結城? 結城はまだお風呂に入ってるぞ? 浴室から鼻歌とか聞こえてくるんだからなんだかんだで怖くなくなったんだろうよ。
「ーー……ちょっとあれだな、動悸がやべぇから今のうちに心を落ち着かせるか」
オレは結城がまだ浴室で歌っていることを確認して自室へ。
ギャルJK星からもらったパンツを取り出しじっくりと眺めながらブツブツと呟く。
「結城はJS。 結城はJS。 これはJKパンツーー……」
しばらくそう呟き再度香りを嗅いだオレは大きく深呼吸。
だんだんと普段通りに脳が運転し始めたので自室を出てリビングへと向かった。
◆◇◆◇
リビングに戻るとソファーの上に置いていた自分のスマートフォンが点滅しているのを見つける。
確認してみるとギャルJK星からのメールの通知だ。
「なんだ?」
【受信・星美咲】ごめんごめん、ちょっとダイキのお姉ちゃん借りたわ! でも今解散したところだから、もう少ししたら帰ってくると思うよーん。
軽いなあギャルJK!!
オレは浴室から聞こえる結城の鼻歌をBGMにギャルJK星のメールに『了解です』と返信を入れる。
ーー……ん?
てか結城、優香が帰ってくるの待ってから一緒に入ればよかったんじゃね?
そうしていればオレはさっきみたいな謎の焦りと緊張感を味合わなくて済んだのでは……?
オレが……JSの言葉に完全に心惑わされてしまっていた!?
でも中々神がかった展開でしたありがとうございましたぁーー!!
オレは心の中で、自らの心の弱さを実感しながらも感謝の言葉を叫ぶ。
そして……この死線を乗り越えたオレに、もう怖いものなど何もない!!!
優香よ! 今夜ベッドの上で待っていろよ!!!
それからオレは結城が寝静まり、優香が部屋に戻り電気を消すーー……その時間をじっと待っていたのだった。
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