574 【水島編】決戦の日!!
五百七十四話 【水島編】決戦の日!!
さてやって参りましたよ水島兄をボコボコにする日が!!
現在12月30日……なんとか年明けまでに間に合ったぜ。
実は28日辺りには水島は結構仕上がってきてはいたんだ。
優香に『ちょっと花江ちゃんと戦ってみてくれない?』と言われたオレは流石に数日でオレに勝てるわけないだろと格の違いを見せるためにガチ装備で出陣……しかしあと少しというところで水島の短剣にやられて負けてしまったんだよな。
『やったー!! 福田くんに勝ったぁーー!!!』
『嘘……だろ……』
まさか少し前まで操作すらしたことのない初心者に負けてしまうなんて。
これも優香やギャルJK星の指導、そして小学生特有の飲み込みの早さの賜物なのだろうか……やはりそういう成長を目にするとどうしても言いたくなる台詞があるよな。
それでは皆さんもご唱和ください、せーの……
小学生は最高ダゼ☆
◆◇◆◇
対決の地はもちろん水島家近くにある公園……ではなくカラオケ屋さん。
やっぱりこんな真冬に外でゲームとか狂ってるからな。 寒さで凍えてボタン押せねーっての。
カラオケ屋に到着すると予め予約をしてあったためスムーズに中へ。
そしていざ部屋に入るとどうだろう……早く水島からゲーム機を取り上げたかったのか先に水島兄が到着しており、水島兄もまさか妹の仲間がJKだとは思ってなかったようだな。 「え……ええええ!?!? 小学生グループじゃないの!?」と裏声を出しながら椅子からずり落ちていた。
「では改めて……福田優香です」
「星美咲!」
優香は極めて落ち着きながら……ギャルJK星は若干の圧をかけながら水島兄に挨拶。
対して水島兄はこんな美人たちを目の前に緊張しているのか、視線を泳がせながら「よ……よよよ、よろ……く、ますぅ……」と声を詰まらせつつも頭を下げた。
でもなぁ水島兄よ、頭を下げてすぐに目線だけ優香やギャルJK星の脚に向けるのはやめたほうがいいぞ?
これはオレも最初の頃はバレないだろうと思ってよくやってた戦法だったんだけど、結構女子からしたらバレてるものらしい。 前にギャルJK星に『ぶっちゃけ気づいてんでー』と笑われながら言われた時には心臓止まるかと思ったもんな。
その証拠にほら、ギャルJK星が小声で「ねねゆーちゃん、見てるよ見てるよー」と水島兄を小さく指差しながら笑っている。
「こら美咲、今はそういう時間じゃないの」
「いーじゃんいーじゃん。 もうちっと脚開いてみんべ?」
「みーさーきー」
「あい」
お、始めるのか?
優香とギャルJK星、水島がゲーム機を取り出すと水島兄も慌てた様子でゲーム機をリュックから取り出しはじめる。 そしてすぐにスタートするのかと考えていたオレだったのだが、ここで優香が「じゃあ花江ちゃんのお兄さん、先に確認ですがいいですか?」とゲーム機画面から水島兄へと視線を移した。
「え、あ、はい……なんで……しょ、う」
「私たち3人でお兄さんに挑んでもし勝ったら、今後花江ちゃんに酷いことは言わない、ご両親にも謝る、就活もする……これでいいんですね?」
「花江のやつそこまで……。 は、はい。 あ、あああああ、合ってます。 た、ただ俺が勝った場合は……」
「わかってます。 お兄さんが勝った場合はオンラインがちゃんと使える花江ちゃんのゲーム機をお兄さんに渡すんですよね?」
「そ、そそそそうです」
「お互いに確認取れましたね。 それじゃあ早速始めましょう」
こうして水島たちは魔獣ハンターを起動しオフラインで一つのルームへ。
オレも水島の後ろから画面を覗き込んでいたのだがやはり水島兄……大口を叩いていただけのことはある。
メールで水島に言っていたことはハッタリではなく装備は1箇所を除いて全てがS級装備。 胴体部分の装着する防具のみがGOD装備となっていた。
「あー……お兄さんGOD装備持ってるんですね」
この優香の言葉に水島兄は過剰に反応。
自分の得意分野に触れてきたからだろう……先ほどとは違いかなり饒舌になった水島兄はこれでもかというくらいに早口で話し始める。
「まぁそうですね、これは少し前のオンラインイベントで上位数名にしか渡されない超絶レアな装備ですから。 しかもこの防具の持つスキルが【クリティカル攻撃超絶強化】と言いまして普通の攻撃でも大ダメージを与えられるクリティカル判定……そして強力な攻撃を与えた時にはチート級のダメージを与えられるなんとも言えない最高級の防具になってるんですよ。 たまにネットオークションとかで取引とか行われてますけどGOD装備は100万円以上で取引されてますからね。 それだけ皆が欲しがる激レアなんですよこれは」
早口言葉が得意なこと。
水島兄はそれからもペチャクチャと喋り続け、『俺は基本イベントに参加した時はあと1歩のところまでは到達してるガチ勢』やら『オンラインには切磋琢磨してる仲間がいて、そこには毎回トップ入りしてるやつも多くいる』やら自慢ばかり。
そこで優香やギャルJK星、水島の装備をみてマウントを取りたくなったんだろうな。
まずは水島の装備詳細を確認しながら再び早口で語り出した。
「花江は……プレイヤー名【はなちゃん】こいつか。 ふーん、全身がS級装備かなかなかやるようになったんだな。 でもどうせ2人に寄生……一緒にプレイして強くなっただけってところか。 操作スキルはそこそこなんだろ?」
「う、うん。 でも花ちゃん、普通にS級の魔獣とも戦えるようになったんだよ」
この水島の返答に水島兄は無視。
今度は水島の隣にいたキャラクターをタップしたんだろうな。 「次は……【ミサ☆KING】か」とギャルJK星のキャラの評価を始める。
「はいはいはい、ツインセイバーねなるほどなるほど。 これまたS級装備……上位だと思ってたらなかなかやるんですね。 でも少しスキルに重きを置きすぎて防御力がおろそかになってませんか? 双剣使いは特に敵に近づいて攻撃するのでそこをもう少し考えた方がいいですねー!」
「は? コロスぞ? てめー」
「まぁまぁ後でボコボコにしますから。 それで最後が【ゆーか姫】……ん?」
「ど、どうしたのお兄ちゃん」
「このキャラの名前どこかで……まぁいいや。 それで装備は……って、ええええええええ!?!?!? 全身GOD装備ーーー!?!?!?」
優香の装備詳細を確認した水島兄は再び椅子からずり落ち床へ尻餅。
椅子から落ちた恥ずかしさよりも優香のキャラの衝撃の方が強かったのだろう……水島兄は尻餅をついた状態のまま「う、うううウソだろ!?」とブツブツと呟き始める。 そしてしばらく経った後にゆっくりと席へと座りなおすと、「わ、わかったぞ」と優香をキッと睨みつけた。
「なんですか?」
「お、お前……金で激レア装備揃えるとか卑怯だぞビッチが!!!」
「え?」
「どうせおじさんに媚び売ってお金もらって……そのお金でオークションとかで揃えたんだろ!!」
は?
水島兄は勢いづいたのか優香を指差しながらいきなり説教を開始。
優香も初めこそポカンとしながら水島兄を見つめていたのだが先にオレの怒りの沸点がMAXにまで到達してしまったぜ。
こいつにはもはや最大の地獄を味わってもらうしかない……そう決心したオレはどんな方法が一番水島兄を懲らしめることができるのか考え始めたのだが……その時だった。
「こんなビッチとゲームだなんてやめだやめだ。 俺は本気でゲームをやっている……だからこの話はなかったことに……ゴフゥ!!!!!」
まさに閃光。
水島兄が饒舌に説教していた途中でギャルJK星の殺戮キックが炸裂し、顔面に被弾した水島兄はその勢いで壁に叩きつけられる。
これが本当のPVPか?
「おいこらもっぺん言ってみろ? ゆーちゃんがビッチだおじさんに媚び売ってるだ? 何も知らねーくせに勝手な妄想で語ってんなハゲ」
ギャルJK星はゆっくりと立ち上がると、目を大きく見開き水島兄を睨みつけながら顔を近づけていく。
「ひ……ひぃ痛っ……!! ご、ごめんなs……」
「心だけじゃなくて息も臭えんだな。 喋んな」
「!!」
「ゆーちゃんに謝れ」
「ご、ごごごごめ……!」
「だから喋んなっつってんだろおい」
「ひいいいいいいい!!!!」
これはまさしくあれだ……こんなギャルJK星を見るのは優香が入院してた時に部屋の前でキチガイババァとバトってた時以来。
そう、バーニング美咲。
ちなみに優香はまだダーク化していないことから、おそらくはそこまで心を揺さぶられてはいないのだろう。
いまだに目をパチパチしながらバーニング化したギャルJK星の後ろ姿を見つめている。
そして水島は……まぁそうなるわな。 急激なギャルJK星の変化やいきなりの修羅場に驚いたのか完全に石化……固まってしまっているぜ。
ここはあれだ、ちょっと騒動が終わるまで水島を外に避難させた方がいいかもしれない。
ということでオレは水島の手を引っ張り無理やり部屋の外へ。
「え、えっ……ご主人さま……?」
「ちょっと外行くぞー。 ここは色々と危険だからなー」
「え、でも……え?」
「はいはい出発ー」
部屋を出る際に優香にアイコンタクトをしたからなんとなく察してくれるだろう。
部屋を出たオレたちはとりあえずフリードリンクのスペースへと移動。 そこでようやく水島も心の緊張が解けたんだろうな……その場でヘナヘナと座りこむと、静かに涙を流し始めた。
「あー水島、ごめんな。 お兄さんが蹴られてるとこ見てショックだったよな」
ぶっちゃけオレは爽快だったがここは水島の立場になって寄り添うことに。
しかしどうだろう……水島はオレの言葉にフルフルと首を左右に振り、小さく口を開く。
「ううん、花ちゃんの方がごめん……なさい。 ご主人さまやお姉さん……美咲ちゃんを傷つけちゃって……」
「え」
「花ちゃん、今までずっとお兄ちゃんのこと大好きだった。 でもまさか花ちゃんがお世話になったお姉さんたちに平気であんなこと言えるなんて……。 どうしよう、花ちゃん……お兄ちゃんのこと嫌いになっちゃった」
水島が「本当にごめんなさい……」と鼻をすすりながらもオレにしがみつき謝ってくる。
しかしオレはというと、なぜかこの状況について冷静に心の中で突っ込んでいたのだった。
ーー……いや、嫌いになったんだったらゲーム対決する意味もうなくね?
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