571 【水島編】いざ兄のもとへ!!
五百七十一話 【水島編】いざ兄のもとへ!!
優香の誕生日の翌日・クリスマス。
オレは昨夜のアダルティ優香のおかげで夜な夜な1人で大ハッスル……そのため大爆睡をかましていたのだが、そういや昨日水島と約束したんだったな。
早朝水島に起こされたオレは早速2人でケーキ作りを開始し、水島兄に届けるべくお昼前に水島宅へと向かった。
「じゃあオレは遠くで見守ってるから……頑張れよ水島」
水島宅まで後少しのところでオレは水島と拳を合わせる。
「うん、行ってくるね」
「もし上手くいってそのまま家に帰れるようなことがあったらメールくれ。 その時は水島はこっちに戻ってこなくていい。 お姉ちゃんにもオレから伝えておくから心配すんな」
「うん……わかった。 ありがとうご主人さま」
「まぁそれを見越して最低限の私物も持ってきてるわけだしな。 健闘を祈るぞ」
こうしてオレは水島宅から少し離れた公園で水島を見送り、水島はいざ兄との問題を解消するべくケーキを持ち自分の家へ。
インターホンを鳴らすと水島母が玄関から登場。 何を話しているのかはさすがにここまでは聞こえてこないが、しばらくすると水島兄が水島母と代わるように玄関から出てきて水島と会話を始める。
そして水島がケーキを差し出した時……突然水島兄が怒り出し離れたオレにも聞こえるような声で水島に罵声を浴びせ始めた。
「ゲーム機渡しに来たのかと思ったらケーキかよ……ふざけんな!!!」
ええええええええええ!?!?!?
誰がこの結果を予想しただろう。
水島兄は水島の差し出したケーキを受け取るには受け取ったのだがまったく喜んではおらず。
水島の背負っているリュックを指差しながら「そこに入ってるんじゃないのか? お兄ちゃんにくれよ!」と冷たい言葉を投げかける。
いや……さすがにそれはないだろうよ。
一瞬水島がこちらに視線を向けたのでオレは通りすがりのフリをしつつ水島の救出へと向かうことに。
近づくに連れて会話がより鮮明に聞こえてくる……その内容を聞いたオレは我が耳を疑った。
「え、なんでお兄ちゃん……そんなに花ちゃんのゲーム機欲しいの? でもこれ花ちゃんが買ったやつだよ?」
「じゃあ貸してくれてもいいだろう。 花江は今まで通り俺のプレイを一緒に見てればそれで幸せなんだろ? だから俺のゲーム機が壊れた時わざわざ買ってくれたと思ったのにまさか俺に見せつけるためだったなんて」
「違う……花ちゃん、お兄ちゃんのゲーム機が壊れてインターネット繋がらなくなったって聞いたから、インターネット繋がなくても花ちゃんと一緒にゲームして楽しめるようにって」
「そんなの頼んでないっての!! そもそも花江に魔獣ハンターなんて難しいに決まってる……仮に一緒にやったとしても足引っ張るのがオチなんだよ!!!」
「ーー……っ!!」
ああああ、こりゃあ救いようのねぇヤバさだわ。
オレは颯爽に水島と水島兄の間に割って入るような形で参上。
「おー水島さんじゃんこんにちはー! 家この辺なんだね偶然じゃーん!!」とギャルJK星のような陽気なキャラを演じながら水島に話しかけた。
「えっ……あ、福田くん」
「うんこんにちはー! あ、話してるのってお兄さん? 初めましてー!!!」
そう挨拶をすると水島兄は急に挙動不審に。
「え、あ……そ、そのどどどうも」とごもりながらぺこりと頭を下げると、すぐさま家の中へと戻っていってしまったのだった。
ーー……まぁそれも作戦通りなんだけどな。
インキャはヨウキャを嫌う傾向があるからこその戦法だ。 根がインキャなオレだからとっさに思いついた作戦……さすがだぜオレ。
とりあえず今日は解決不可能という判断でオレは水島を連れて再び家へと戻ることに。
しかし歩き出してすぐ……逃げたはずの水島兄が玄関から顔をだすと、「ちょっと待て花江」と水島を呼び止めた。
「な、なにお兄ちゃん」
隣に友達がいてもなお罵声を浴びせるというのだろうか。
もしそうなら水島の手を引っ張ってでもここから離れなければならない……そう考えていたオレだったのだが、これまた水島兄の口から発せられた言葉に驚くことになる。
「そういや魔獣ハンター、今もやってんの?」
「え? う、うん……やってるけど」
「ランクどのくらい?」
「上位なったばかり」
「じゃあ今度俺と勝負しないか? それで花江が勝ったら俺はもうゲーム等に関して花江に何も言わない……就活もするし親にも謝る。 でも俺が勝ったら花江のゲーム機を俺に渡す……どうだ?」
な……なんてクズなんだこいつはああああああああ!!!!
オレは隣で「うん、いいよ」と言いかけた水島の口を封じて「あとでメールするって言え」と言わせることに。
その後水島に指示しながらメールをしたのだがやはりあの兄はなかなかにクズ……水島には勝ち目のないようなルールで挑んできていたのだ。
ちなみにこれが水島のスマートフォンでやり取りをしていた水島兄との内容なのだが……
【送信・お兄ちゃん】さっきの話だけど、お兄ちゃんはランクなんなの?
【受信・お兄ちゃん】俺はもちろんS級。 まぁネットで鍛えられてたから当然だろ。
【送信・お兄ちゃん】でもそれだと上位になったばっかりの花ちゃん不利じゃない? 何かハンデがあればいいんだけど……
【受信・お兄ちゃん】そうか。 じゃあこのゲームってMAX4人でクエスト出れるから、俺1人VS花江とその仲間入れた3人でバトルでもいいぞ。
【送信・お兄ちゃん】え、いいの?
【受信・お兄ちゃん】もちろんそれでも全身S級装備のオレからしたら相手にならないかもだけどな。 しかも1つはGOD級っていう激レア装備も持ってるし。 まぁでも3人でかかってくるんだからいいハンデだろ。
【送信・お兄ちゃん】わかった。 じゃあそれでいいよ。 それで花ちゃんが勝ったら今まで通り花ちゃんと仲良くして……パパやママにも謝ってくれるんだね?
【受信・お兄ちゃん】もちろん。 あ、でも戦うときは公園とかで集まってのオフライン対戦な。 オンラインで知らない奴に頼るのは無しだぞ。
【送信・お兄ちゃん】うん、それでいいよ。 じゃあちょっと時間もらうけど花ちゃんが操作もっと慣れたら連絡するね。
【受信・お兄ちゃん】それでいい。 俺はずっとやってたキャリアがあるからな。 ただ早めにしてくれ?
「ねぇご主人さま、本当に大丈夫かな」
メールを終えた水島が不安そうにオレの手を引っ張ってくる。
「まぁ大丈夫だろ。 さすがにお前のお兄さんがGOD装備持ってることにはびっくりしたけどこっちは3人なんだぞ?」
「3人ってことは花ちゃんとご主人さまとお姉さん?」
「んー、まぁそれもいいんだけど……」
オレはあえてそこは言葉を濁したまま帰宅することに。
家に着くともうお昼過ぎ。 優香とギャルJK星が昼食を作って待ってくれていたためまずは4人で食卓を囲むことになったのだがその際……
「ねぇ星さん?」
「なんだー? クリスマスプレゼントでも欲しいのかー?」
「あ、いや……星さんも昔お姉ちゃんと魔獣ハンターしてたんだよね?」
「そっちね。 まぁなー。 あん時は狩りが青春だったからなー」
「何使ってたの?」
「んー? 基本ほとんどの武器は使いこなしてたけど……そうさな、一番得意だったのは双剣使い……【ツインセイバー】だったかな」
そうギャルJK星が答えると、優香が「あの時の美咲ってめちゃくちゃ上手かったよねー」と当時の話をギャルJK星に降ってくる。
どうやらギャルJK星は当時かなりの廃人プレイヤーだったようで、敵の真横に張り付き最小限の移動で常に斬り続けていたらしい。
ーー……うん、これはギャルJK星に聞いてみる価値はあるぞ。
オレはここで今日水島が水島兄に言われたことを優香たちに教えることに。
もちろん優香やギャルJK星は水島には憐れみを……そして水島兄へは怒りの感情をむき出しにしていたのだが、ここでオレが再び口を挟む。
「それで水島が魔獣ハンターでS級装備のお兄さんに勝ったら親にも謝るし就活もするとか言っててさ」
「なんて自分勝手……ていうかそもそも花江ちゃんってまだ上位じゃない?」
「あ、でもこっちは3人で挑んできていいんだって」
「そうなの!?」
「うん。 だから水島とお姉ちゃんは決定として、あと1人……」
オレはそこでまっすぐギャルJK星に視線を移す。
「ん? どしたダイキ」
「星さん、この後オレと同じランクの装備で魔獣ハンター勝負してくれない? もしそれで星さんが勝ったら残り1枠は星さんということで」
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