565 【水島編】それはやはり女の敵
五百六十五話 【水島編】それはやはり女の敵
オレが1人寂しく家で白鳥パンツと戯れているとインターホンのチャイムが鳴る。
開けてみると予想通り……そろそろだと思ったんだよな。 両手に大量に詰まった買い物袋を持った優香と水島が立っていた。
「ごめんねダイキ、ちょっと遅くなっちゃった」
「ごめんね福田くんー。 花ちゃんのせいでー」
チラッと買い物袋に視線を移すと水島用なのであろう衣類やその他歯ブラシの予備などといった生活用品の数々。 見た所買い物袋のロゴが違うことから色々回っていたのだろう……そりゃあ遅くもなるってもんだ。
それから優香は水島を連れて優香の部屋へ。
洋服棚の中身を整理しだし、水島用のパンツや可愛らしいサイズのブラジャーなどを一緒に収納していく。
もちろんオレはそんな様子を扉の向こうから『結城のときもそう見えたけど、水島もまるで妹みたいだな』などと感じながら温かな目で見守っていたのだが……
「ごめんね花江ちゃん。 共用って感じになっちゃって」
すべての下着類を入れ終わったあと、優香が手を合わせながら水島に「さすがにダイキと一緒のところに入れるのは私も気がひけるからさ」と謝ると、水島の口からとんでもない新たな事実が明かされた。
「ううん、花ちゃんお姉さんと一緒嬉しいなー。 それに家だとたまにお兄ちゃんに盗まれてお気に入りとかなくなってたんだけど、ここだったら盗まれることないし安心かもーえへへーー」
「え」
え。
まったく……水島兄、お前はどれだけオレより上をいく男なんだ。
オレは己の行動力の小ささを実感。 そして本来ならば優香はこのあとすぐに晩御飯の準備に取り掛かる予定だったらしいのだが急遽変更……今晩は出前をとることにして先ほど水島が発言した件について詳しく聞くことになったのだった。
◆◇◆◇
「やったぁー。 花ちゃん、出前とかあまり頼んだことないから楽しみだなー♪」
「いやいやそれよりも花江ちゃん。 さっきのパンツの件だけどさ、なんでお兄さんが犯に……盗んだって知ってるの?」
出前で舞い上がっている水島をよそに優香はかなり真剣な表情。
やはり下着泥棒は女の敵……心なしか優香の背後に黒い炎が蠢いている。
「え、だってお兄ちゃんの部屋に行ったらあったんだもん」
「そうなの?」
「うん。 お兄ちゃんのベッドの下にね。 取り出してみたらなんかカピカピしてて……最初はなのかなーって思ってたんだけど調べてみたらそれが精s……」
「うわあああああああああああ!!!!!!!」
近くにオレがいたことであまりそういった話はしたくなかったのか、優香は大きな声を出しながら水島の発言を『制止』。 赤くなった頬を叩いて大きく深呼吸しながら『精神』を落ち着けていく。
いや……まぁオレ分かってるんですけどね。
その後優香がそのパンツはどうしたのかと尋ねたのだが水島の答えは「そのままにしといた」。
別にそれをされても気持ち悪いとかそういう感情は一切湧かず、むしろ兄の好きにさせた方が兄が生き生きとしていたため見ていてこっちも嬉しくなったんだと。
「花江ちゃん……すごいね。 パンツを取られて挙句の果てにはオナ……こほん、カピカピにされて履けなくさせられてるのに怒らないなんて」
「うん。 全然そんなことないよー」
「なんで?」
「だって花ちゃん、お兄ちゃん大好きだからぁー」
この水島の屈託のない笑顔……兄のことが本当に大好きなのだという感情は痛いくらい伝わってくる。
しかしパンツを盗られそういうことに使われてもマイナスの感情が湧かないことに関してはまったく理解できない。
そしてそれはオレよりも優香が一層感じているようで、頭を抱えながら「え、今の兄妹ってそんな感じなの?」と呟きながらその件についてインターネットで調べ出したのであった。
「お、お姉ちゃん大丈夫?」
「ううん、ちょっとお姉ちゃん今から色々と調べものするから……ちょっと2人で遊んどいてくれるかな」
「え」
「それかお風呂もうすぐ沸くと思うし……先に入ってくれててもいいよ」
こうしてオレと水島は優香の異様な気配を感じて部屋を後に。
水島が「ねー、お姉さんどうしたのー?」などと振り返り優香のことを気にしていたのだが、オレは「いや、ここはおとなしく言われた通りにするべきだ」と無理やり水島を優香の部屋から離れさせたのであった。
「じゃあとりあえず……どうするか。 お風呂はまだ少し時間かかりそうだぞ。 魔獣ハンターでもするか?」
「うんー、それもいいけど魔獣ハンターは時間が結構かからないかなー」
「確かに」
「あ、じゃああれ読みたい! ご主人様も持ってるよね?」
水島が両手を小さくパンと叩きながらオレを見上げる。
「ん、なんだ?」
「エッチな漫画!」
「ーー……」
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