557 【水島編】マドンナからの頼まれごと
五百五十七話 【水島編】マドンナからの頼まれごと
ランドセルに入れたまま持って帰ってしまった水島の着用済みパンツ。
本人からは『明日でいいよー』と言われたこともあり、そりゃあオレも内心ラッキーとか思ったさ。 今夜はそれを頭から被って寝ちゃおうかな……とかな。
しかし今日のオレは性欲よりも良心が勝利。
なんだかんだで水島のおかげで優香の誕生日プレゼントを買うことが出来たんだ。 水島にはなんのメリットもないのに付いてきてくれた……そこまでされたら良心が勝っちゃうのも仕方ないだろう。
「うっし……ちょっとというか、かなり勿体無いけど行くか」
オレは早速水島のパンツをポケットに入れると再び玄関の方へ。
とりあえず今回はこれで我慢しておこう……オレは先ほどまでパンツを握りしめていた手のひらを鼻に当てると一気に息を吸い込む。
あぁ、ほのかにだけど甘い香りがするんじゃああ……。
やはりJSの新鮮パンツは格が違うぜ。
オレはスマートに1人頷くと水島にメールを送信。 『やっぱり今から持ってく。 近くまで来たらまた連絡する』とだけ伝え、水島の家まで走り出したのだった。
◆◇◆◇
「くーっ! やっぱり真冬の夕方はクソ寒いぜー」
ほとんど真っ暗になった道中、オレはなんとか水島家の近くまで到着する。
水島から『近くの公園でお願い』との連絡が来ていたのでそこへと向かうと、すでにそこには私服で髪を下ろした水島の姿が。 やっぱり美人は何にでも絵になるな……水島はジャングルジムにもたれかかりながら、薄っすら見える星を眺めていた。
「おーい、水島ー」
水島のもとへと駆け寄ると、水島はオレの声に反応して視線をこちらへと向けてくる。
その佇まいは清楚ながらも声のトーンは現・水島そのもので、「あー、ご主人さまぁー」とニコリと笑いながら小さく手を振ってきた。
「ごめんな水島。 こんな寒い中……待たせちゃったか?」
「ううんー、花ちゃんも今来たところだから大丈夫だよ。 それよりもわざわざありがとー」
オレがポケットからパンツを取り出し水島にそれを渡すと、水島は「えへへ、こうして渡されるとやっぱり恥ずかしいねー」と頬を少し赤らめる。
「でもご主人さま、花ちゃんのパンツに気づいてすぐ持ってきてくれたんだ」
「まぁな」
「じゃあ開いてちゃんと見たりしてないのー?」
「してねーよ。 そんなことしてたら深夜になるっての」
「あはは、そうだねー。 よかったー、ご主人さまが優しいご主人さまで」
水島はそう口にしながらオレから受け取ったパンツをコートのポケットに入れると「くしゅん」と可愛いくしゃみをする。
「ん、どうした水島。 風邪か?」
「ううん、花ちゃん全然元気だよ。 ただちょっと寒いなーって思っただけ」
「うわあああ!!! すまん、そうだよな寒いよな!! じゃあもう解散しよう!!」
オレとしたことがついついいつものノリで話し込みそうになってしまっていたぜ。
水島は「えー、せっかくだしもうちょっと話さないー?」などと言っているが、そういうわけにもいかん。 このまま外にいて本当に風邪なんかひかれた日にはオレがかなり後悔することになるからな。
オレは「いや、今日はこれで終わりだ。 それじゃあな」と体の向きを変えて水島に背中を向けた。
「あ、ちょっと待ってご主人さま」
「ん?」
オレが公園の出口の方に足を一歩踏み出したと同時。 水島がオレを呼び止めながら腕を掴んでくる。
「どうした? 呼び出したのはオレだけど……マジで早く帰らないと風邪引くぞ?」
「うん、それはわかってるんだけど……」
振り返り顔を確認してみると水島の表情がなんだか暗い。
もしかしてパンツに汚れでも付いていたのだろうか。 だったらもう色々と言い訳して一旦家に持ち帰り優香に洗ってもらうしか……。
そんなことを考え出していたオレだったのだが、オレの予想はまったくの不正解。 次に発せられた水島の言葉は意外なものとなっていた。
「あのねご主人さま、もし……なんだけど、空いてる時間があるときでいいからお願いがあるんだ」
「お願い? なんだ?」
「花ちゃんにね、ゲーム教えて欲しいの」
ーー……は?
とりあえず話すと長くなるとのことで、オレはまた夜に電話で話そうと提案しその場は解散。
その後ちゃんと夜に水島から通話がかかってきたのだが、そこで聞いた話はなんとも可愛いもので……
『ご主人さまは【魔獣ハンター】ってゲーム知ってる?』
「あー、魔獣ハンターな。 知ってるし持ってるぞ」
『実はね、花ちゃん……お兄ちゃん友達いないから一緒にしてあげたいの』
「なるほどな。 てか別に水島が一緒にやってあげなくてもインターネット繋げばオンラインで出来るだろ」
『うん。 花ちゃんもそう言ってみたんだけど……なんかお兄ちゃん、そのゲーム機でインターネット繋いでいろんな動画観てたらしいんだけど、ウイルス入ってオフラインでしか遊べなくなったんだって』
ーー……は。
「いろんな動画?」
「うん、いろんな動画って言ってた」
あーー……、なるほどなーー。
何が……とはあえて言わなくても紳士諸君なら大体察すると思うが、パソコンやスマートフォンで調べるよりも圧倒的に親バレしにくそうだからあえて携帯ゲーム機で楽しんでた……と。
水島の話では、お兄さんは高校を卒業してからというもの大学にもほとんど行かず、アルバイト等も今はしていないらしい。
お小遣いも少なくされたことからゲーム機を買うお金ももちろん無し。 だからこそ自分が一緒にゲームをして兄を楽しませてあげようと考えたとのことだった。
「なるほどな。 それでオレにゲームを教わりたいと」
『うん。 花ちゃん、今までゲームはお兄ちゃんがやってるのを一緒に見てただけだから、やり方とかまったく分からないんだー」
「まぁオレは別に構わないけど……水島お前、ゲーム機買うお金あんのか?」
『うん、そこは大丈夫だよ。 なんだかんだで花ちゃん、ちゃんと貯金してるから』
「そうか。 じゃあ買ったら教えてくれ。 買い物とか付き合ってくれてるわけだし、オレもとことん付き合ってやるぜ」
『ほんと!? ありがとー!! ご主人さまだいすきーー!!!』
こうしてオレは水島にゲームを教えることが決定。
「魔獣ハンターか。 久しぶりだな」
なんだかんだで最近プレイしていなかったオレはブランクを取り戻すためにゲームを手に取り起動。
こういう時はオンラインで強制的に慣れるのが一番なんだよな。 オレはインターネットに接続して自分と同じくらいのレベルのハンター達と狩りを楽しむことに。
大体2時間程度だろうか。 大体操作も慣れてきたのでそろそろやめようとしていたのだが、突然優香がオレの部屋へと入ってきた。
「ちょっ……ダイキ!!」
「え、あ、はい!?」
オレ……何か悪いことでもしたのだろうか。
そんなことを考えていたのだが、視線を優香の手元へと移したところでオレは全てを理解する。
そう、優香の片手にもゲーム機。
「ちょっとだけ魔獣ハンターやろうとしたらダイキがログインしてたから……お姉ちゃんビックリしちゃった! 飽きたわけじゃなかったんだね!」
優香が目をキラキラさせながらオレのもとへと歩み寄ってくる。
「あー、まぁ、うん」
「オンラインしてたの!?」
「うん」
「レべル上がった!?」
「うん。 1だけ……だけど」
「もう寝る!?」
「そこはまだ考えてな……」
「じゃあお姉ちゃんとやろ!!!!」
「え」
「1クエ……!! 1クエストだけでいいから!!」
優香が両手を合わせてオレに頭を下げてくる。
なんかこんなにもワクワクした優香を見るのは久しぶり……やっぱり可愛いな。 水島も兄にこんな感情を抱いてるからこそ一緒にやりたいと思ったのだろう。
「あー、じゃあちょっとだけ」
「やったー!! じゃあお姉ちゃん、専用ルーム作るからちょっと待っててね!」
実際少し眠気はあったのだがオレは優香のクエストに付き合うことに。 でもやっぱりゲームって凄いよな……1クエストだけのつもりが気づけば午前2時。
そろそろ寝ないとヤバいとのことで、そのまま優香はオレと共にこの部屋……同じベッドの上で寝ることに。
「ダイキ、楽しかったねー」
優香が満足そうな表情で微笑みながらオレの腕にしがみついてくる。
「うん。 ていうかお姉ちゃん、自分の部屋で寝なくていいの?」
「だってお姉ちゃんの部屋、今暖房付けてないから寒いんだもん。 だったらもう暖房効いてるダイキの部屋で一緒に寝たほうが電気代も安くつくし、2人で寝るともっと暖かいでしょ?」
「う、うん」
ーー……逆にめちゃくちゃ熱いですけどね!! とある部分だけが!!!
「ほーら、ダイキ、もっとお姉ちゃんのところ寄って。 風邪ひいちゃうよ」
あまり当てたくないものを優香に向けないため体の向きを若干外側へとズラしていると、優香が無理やり内側に戻してくる。
「え、いや……でも」
「恥ずかしがらないのー。 固くなってるのはもういつものことで知ってるし仕方のないことだから。 ほら、おいでー」
え。
なんだ? 一緒に久しぶりにゲームをできて舞い上がってるのは分かるけど……そこまでしてくれちゃうの!?
優香は優しく微笑みながらオレを引き寄せ抱きしめる。
そんなことされたら……そんなもの押し付けられたらオレはもう……!!!!
バブーーーーーー!!!!!!!
この日オレは改めて知ってしまたんだ。
この世には最高の枕があるということを。
お読みいただきましてありがとうございます!!
ありがたいことにリクエストいただきましたので、水島編やります!!




