55 まさかのプレゼント【挿絵有】
五十五話 まさかのプレゼント
早朝。
「ねぇゆーちゃん、アタシも弟くんにお姉ちゃん扱いされたいんだけどぉー」
早速かよ!!
目が覚めてリビングへと向かうと、なんという行動力のはやさなのだろうか。 ギャルJK星が朝食の用意をしている優香の隣で昨夜の件『自分もオレの姉になりたい』ということを頼み込んでいた。
「もうなに美咲ー。 寝ぼけてんのー?」
「そんなわけないじゃんー。 ゆーちゃんだってアタシが弟欲しがってたこと知ってるっしょー?」
「それは知ってるけど……」
「あっ、弟くん! もーにん♪」
リビング手前で立ち止まっていたオレに気づいたギャルJK星が朝から陽気なテンションで手を振ってくる。
「も、もーにん……です」
き、気まずい。
オレは2人から視線をそらし、顔を俯いたままテーブルの前へ。 自分の席に座ると寝ぼけた演技でゆっくりと目をつ瞑り、優香とギャルJK星の会話に耳を傾けることにした。
「でさぁ、ゆーちゃん。 実際のところどう!? ゆーちゃん的にはアタシが弟くんにお姉ちゃん扱いされるのアリ? ナシ??」
「まだその内容なの? でもなんでよりにもよってうちのダイキ……他の友達にも弟いるでしょ?」
「違うんだよゆーちゃん、ほら基本アタシの友達ってこう……派手なの多いべ? だからそんな子に弟いてもヤンチャっぽいのが多いんだよ。 でもほら、見てみ? ゆーちゃんの弟くん。 素朴な感じでいいべ!?」
「そうなの?」
「だべだべ!! アタシはそういう弟が希望なわけなのさ!」
ーー……なんか言いたい放題言ってるけど、これってオレけなされてるよな。
簡単に言うとオレが一番インキャっぽいってことでオケ?
あまりの言われようにオレは思わず目を開く。
「まぁ確かにダイキは私から見ても大人しい方だとは思うけど……」
優香がチラッとオレに視線を向ける。
グサァ!!!
言葉のナイフがオレの心に突き刺さる。
い、痛い! しかしこれはこれで使えるぞ……さっきの優香の言葉に考えさせられたことにして、今夜は大胆になってみましたってことで優香のベッドに潜り込むか?
オレは1人俯いたまま2人に見えない角度でニヤける。
まだ予定の段階だけど……布団に染み付いた優香の香りよ、待ってろよ!!!
オレの脳は今夜潜り込むことになるかもしれない優香のベッドのことでいっぱいに。
「あ、じゃあさゆーちゃん! アタシが弟くんを今より活発にさせてあげるよ! だったらちょっとは考えるでしょ!」
ーー……え?
ギャルJK星が優香に向けて親指を立てて微笑んでいる。
「ーー……ダイキを活発に?」
「そそ! ゆーちゃんは弟くんが少しは明るくなって嬉しいし、アタシはお姉ちゃん扱いしてもらえて嬉しいしでウィンウィンじゃね!?」
一体オレになにをさせる気だギャルJK。
そりゃあギャルJK星は美人だしいい匂いだし柔らかいしで最高のギャルJKなのはわかる。 でも今オレは今、放課後はラブカツオーディション、早く帰った時は洗濯し終えて綺麗に畳まれた優香のパンツの香りを嗅ぐことで忙しいんだよ。
よし、優香。ここはきっぱりと断ってくれ。
オレは心の中で優香に手を合わせる。
「ダイキはどう?」
え?
優香が朝食の盛られたお皿をテーブルの上に運びながら尋ねる。
「んんん? お姉ちゃん??」
「ほら、ダイキも少しでも明るくなったら学校がもっと楽しくなるんじゃないかなって思ってさ。 美咲と絡むことでダイキが変わるかもしれないんだったら、お姉ちゃんはいいんじゃないかなって思うんだけど」
お姉ちゃああああああん!!!
なんてことだ……全部オレの為を思った言葉じゃないか!! もう本当好き! 大好き!!
この思いやりの詰まった言葉により、今夜正式に優香の部屋に忍び込みベッドに潜りこむことがオレの中で決定。
なのでもちろんオレは優香にこう返事をした。
「わかった」
これによりオレはギャルJK星の『オレを活発に変える作戦』に参加。
それと同時にギャルJK星がオレを弟扱いすることとなったのだった。
朝食後、オレが部屋へと戻り制服に着替えていると、コンコンと誰かが扉をノック。
その後ゆっくりと扉が開かれる。
「やほー弟くん。 ちょっといいかな」
ギャルJK星がひょこっと顔を出す。
「なんですか?」
「ちょっともうアタシお姉ちゃんなんだから敬語やめてよー」
「あ、うん。 それで、なに?」
「あのさ、結果アタシ弟くんにお姉ちゃん扱いしてもらえることになったじゃん? だからお近づきの印に弟くんが好きそうなものあげようと思って、プレゼントを持ってきたのさ!」
「ーー……プレゼント?」
……といってもオレが今一番欲しいのは昔から好きだった『絆アソ』グッズか閲覧制限の付いてないパソコンとかスマートフォンしかないぞ?
オレは何を渡されるのか分からず頭上にはてなマークを浮かべる。
するとギャルJK星は制服のポケットから何かをモゾモゾと取り出し、それをオレの目の前へとポイっと放り投げる。
「ほい、これプレゼントー」
「え!?」
何かは分からないがとりあえずオレはそれをキャッチ。
その正体を確かめるべくそれに視線を移す。
ーー……!!!
「って、えええええええええ!?!?!?」
オレの手中にあるもの……それは昨夜脱衣所で見たギャルJK星の黒レースパンツ!!!
「な、なななななんで!?!?」
オレはパンツを持つ手を震わせながらギャルJK星を見上げ尋ねる。
「だって弟くんそれ好きなんでしょ? 現にアタシのそのパンツ、めっちゃ握りしめてんじゃん」
「ーー……はっ!!! ちが、これは……!!!」
「大事にするんだぞー?」
ギャルJK星はそう言いながら悪戯に微笑んだ後、優香のいるリビングへと戻っていく。
「ま……マジか」
オレは誰もいなくなった自室で両手で握りしめているギャルJK星のパンツに視線を向けていると、ふと朝食時に何気なく話していた優香とギャルJK星の会話を思い出す。
確かあの時、ギャルJK星がお姉ちゃんに……
『あ、そうだ。 ゆーちゃんパンツとかありがとー。 昨日洗濯してもらったやつ乾いてたから、借りてたゆーちゃんのパンツとか洗濯機入れといたよー』
ーー……ということはつまり。
ゴクリ。
「ほらダイキー。 そろそろ時間だよー」
リビングから優香の声が聞こえたのでギャルJK星のパンツを引き出しに隠したオレはそそくさと向かう。
「ーー……? どうしたのダイキ、ちょっと顔が赤いけど」
オレの異変に気づいた優香がオレの顔を覗き込む。
「あ、いや……違う! なんでもないから!!」
優香は「風邪かなぁ」と呟きながら首を傾げている。
オレがそんな優香にどう説明すればいいものかと考えていると、トイレに向かってたギャルJK星が颯爽と登場。 優香の肩をポンと叩く。
「大丈夫だってゆーちゃん。 弟くんめっちゃ元気そうじゃん」
そう言うとギャルJK星は優香からオレに視線を移して「だよな」と尋ねる。
ナイスだギャルJK!! ここはその会話に乗らせてもらうぜ!
「う、うん!」
「だってさ。 弟くんもそう言ってることだし、ほらほら学校行くべ」
この時オレの視線はもちろんギャルJK星のスカートへ。
このスカートの向こう側……あぁ!! 知ってるのオレとギャルJK星だけなんだなあああああ!!!
まったく、朝から幸せすぎだぜ!!!!
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