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549 【茜編】合同文化祭当日!


 五百四十九話  【茜編】合同文化祭当日!



 合同文化祭当日。

 ちなみに何をするかというと、結局は合同なので展示・屋台・演劇で選択する感じとなったんだ。


 展示なら展示エリアで合同発表。

 屋台は1店舗につき教師2人をつけた安全対策をしつつ、一部店舗を除いて運動場。

 そして演劇は言わずもがな体育館な。 これも一部を除いてになる。


 

 ーー……うん、分かるぞ。 屋台と演劇の『一部を除いて』とはどういうことかと思ったよな。


 それはそうだ。 オレだって最初これを見たときは『どういうことだ?』ってなったんだから。

 まぁその一部はというと、例えば演劇でいうとお化け屋敷で、屋台でいうと……



 開始時間まではまだ時間がある。

 教室でオレがボーッと時計の針を眺めていると、廊下の方がやけに騒がしいことに気がついた。


 それは別に喧嘩とかそういう荒々しいものではなく、もっとハッピーに満ち溢れた歓声。

 耳を澄ませてみると、その歓声の中心にいるであろう者たちの声が聞こえてくる。



「やるからには花ちゃん、負けないからねー」


「あら、それは楽しみね。 でも勝つのはエマ。 負けても泣くのはナシよ?」


「私だって負けないよ?」


「うわー、水島さんもエマも西園寺さんも……3人ともバチバチじゃん。 あ、でもテーマ的にも私が有利そうだし、ワンチャンス勝っちゃうかも?」



 そう、そこに集まっていたのは水島・エマ・西園寺・小畑のマドンナ四天王。


 誰が先にやると言い始めたのかは分からないのだが……4人がやるのは喫茶店的なもの。 しかもそれは合同ではなく各チームで運営するようで、一番集客できてかつ人気投票の多かったチームの代表が新・マドンナとして君臨するというルールらしい。

 それであの4人それぞれの店名は……なんだったかな。

  

 オレは前日に配られたパンフレットを開いて各店名を確認。

 すると……あぁ、そうだったな。 そこには個性豊かな店名が記されていた。



・マドンナ花ちゃんの、ゆるゆるメイド喫茶


・プリンセスエマ城・謁見の間


・西園寺邸・契りの儀


・伝説のセンター美波ちゃん☆ファンミーティング!



「これはまたユニークな……」



 4人のネーミングセンスに感銘を受けつつ茜とメールのやりとりをしていると、気づけば合同文化祭開始時間。

 ちなみにオレら実行委員は見回りという名目上、本人の希望がない以外は演劇や屋台などどこにも属さなくても大丈夫とのことだったのでオレは展示にも演劇にも屋台にも属さず。



【受信・茜】着いたよー。 正面玄関前にいるね。



 うっしゃあああああああ!!!!



 オレは全速力で教室から飛び出すと、まっすぐ正面玄関へと向かった。



 ◆◇◆◇



 階段を下りている途中、血気盛んな男子どもとすれ違う。



「うおおおおお!!! 早く行こうぜ!! まずはよくオレらの学校にも来てた天使・花ちゃんのところな!!」


「あん!? 違うだろ先に行くのは美波ちゃんだろ!! 俺、メイプルドリーマーの妹グループ最終オーディションを動画で観てから美波ちゃんのファンだったんだ……だから俺は美波ちゃんのところへ行く!!」


「ちょっと待て、僕はエマちゃんのところに行くぞ!? お姉ちゃんが買ってた雑誌に載ってて一目惚れしたんだ!! これだけは譲れない!!」


「待てーーい!! 行くべきは西園寺邸だろ!! 俺、喧嘩強くなるために柔道教室通い出したんだけど、あの美しさの前では手合わせする前にノックダウンだったぜ!!」



 まさか全員が全員推しが違うとは。 つーかそこまで本気になるなんてどこまでお前らの学校には美人がいないんだよ。

 そんなことを心の中で突っ込んでいると目的地へと到着。

 オレの姿にいち早く気づいた茜が手を振りながら駆け寄ってきた。



「ダイきちくーん!!」



 あぁ……この満面の笑みで近寄ってくる感じ、好き。

 オレは平然を装い茜に「おう、じゃあ……行くか」とは言ってはいるが、それとは裏腹に心臓はもうドキドキのバクバク。



「うんっ! じゃあ……行こっ」



 ズッキューーーン!!!!



 こうしてオレたちは見回りという名目上での文化祭を満喫することに。

 まずはどこを回ろうかと話をしていると、茜が「ここがいいなー」と指差した。



「ん? 運動場の屋台か」


「うん。 今年の夏に久しぶりに家族で夏祭りに行ったんだけど、そこで食べたたこ焼きが美味しかったんだー。 だからたこ焼き食べたいな」


「いいけど……まだ朝だぞ」


「いいの! 私は楽しみでお腹ペコペコなんだから。 ほーら、全部食べるつもりで行こー!!」



 どわああああああ!!! 忘れてたああああああ!!!!

 茜の胃袋……割と無尽蔵なんだったああああああああああああ!!!!!



 茜に引っ張られ運動場へと向かっていると、茜だけを見ていたからなのだろうか。

 周囲を見ていなかった影響からか一人のおじいさんと軽くぶつかる。


 とっさのことでパッと見ではあったのだが、まるで神社の神主さんのような格好。

 それと隣にいるのはお孫さんなのだろうか。 深く帽子をかぶったピンク髪の女の子が「おー、本当に実体化してるのや」などと呟いている。



「あー! すみません大丈夫ですか?」


「いやいや、構わんよ。 わしも急いどったでな」


「そうですか、よかったです」



 なんか妙に聞き覚えのあるような声だったのだが気のせいだろう。


 この文化祭、家族だけでなく親戚までなら参加自由とのことなので、おそらくあの2人は誰かの家族。

 後に思えば神主さんみたいな服装だったりピンク髪の幼女だったりとツッコミどころが満載だったのだが、この時のオレは茜へのドキドキでそんな余裕はあらず。

 2人に会釈をすると、そのまま屋台……オレの胃袋にとっての試練の時間が幕を開けたのだった。

 


 ◆◇◆◇



「そういやダイきちくんってまだ陽奈ちゃんと連絡とか取ってるの?」



 たこ焼きからのクレープからのお好み焼きを食べている茜が何気ない表情で話を振ってくる。

 あれだけ食べて苦しい顔1つしてないなんて……分かってたけど流石だぜ。



「え……あー。 まぁちょいちょいかなー。 うっぷ」


「そうなんだ。 また陽奈ちゃんと話したいなー」


「あーそうだな。 むぐぐ……、陽奈は茜の記憶、消えてるんだもんな。 うぇっぷ……」


「うん。 もし良かったらだけど、今度機会あったら紹介してほしいな」


「あ、はい」


「3人でスイーツバイキングとか行ったら絶対に楽しいよね」


「ーー……」



 なんてやつ……満腹中枢が刺激されまくってるこの状況でスイーツバイキングの話題。 そんなこと提案されても今のオレには素直に「うん」と答えられるような精神的強さなんて持ち合わせていないぞ。



 オレがお腹をさすりながら黙り込んでいると茜がトントンと肩を叩いてくる。



「な、なんだ?」


「それ終わったらさ、プリンセスエマ城行ってみない?」


「え」


「さっき通りがかった人が話してたのを聞いたんだけど、ちょうど今そこにエマさんって子にそっくりなリトルプリンセスもいるんだって」



 あー、エルシィちゃんのことだな。

 エルシィちゃんも癒しの天使だしなー。 一目見て癒されたい気持ちもあるんだが、でもエマの店が出してる食べ物は確か……



「なぁ茜、リトルプリンセスもいいと思うけどさ、流石にこの胃の状況でホットケーキは無理だろ」


「え、ホットケーキなの? 行きたい!」


「Oh My God」



 それはオレの意思ではなく自然と口から出た……おそらくは胃から放たれた心のこもった台詞。


 こうなれば途中で茜の気を食べ物から逸らさなければならない。


 オレは残っていた焼きそばを白旗を上げていた胃に無理やり流し込むと、自分の話術・対応力を信じることに。

 茜とともに校舎の中へと入っていったのだった。



「ーー……茜、本当に楽しそうだよな。 前の食べっぷりを知ってるからまだ茜の胃が大丈夫なのは知ってるが……あんま無理すんなよ?」


「うん、ありがと。 でも大丈夫だよ、なんか今日は前よりも食べれそう。 これもダイきちくんと一緒だからかな」


「え」


「ダイきちくんといると楽しいし……親以外ではダイきちくんが唯一自分を出せる相手だから、はしゃいじゃう」



 ズッキュウウウウウウン!!!!!!



お読みいただきましてありがとうございます!!

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[良い点] 茜ちゃんとデート。 よきですな! 普通カップル感!
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