548 【茜編】成果!!!
五百四十八話 【茜編】成果!!!
気づけばもう11月後半。 あれから色々と文化祭の話し合いや準備も進み、本番まであと数日。
その間もオレは何度か水島に美香関連の話題を振ってみたのだが残念なことに水島は美香のことを一切思い出せず。 それについては悲しくもあり寂しかったのだが、こと茜に関しては逆だった。
放課後。 向こうの学校で製作された発表物などを運んできた際、運搬を手伝いにきていた茜から嬉しい報告を受けたのだ。
「えー! 茜ちゃん、イジメられなくなったんだぁー!!!」
茜から直接聞いた水島が「よかったねー」と喜びの声を上げる。
「うん。 これも水島さんやダイきちくんのおかげだよ。 ありがとう」
「そんなそんなー。 喜んでもらえて花ちゃんたちも嬉しいよぉー」
どうやら一番茜のことを根に持っていた女子も、色々あって茜への嫌がらせをしなくなったとのこと。
オレは美香がどんなドSな神罰を下したのかなと考えていたのだが……
「実はね、最後までその子……保田さんは私を敵視してたみたいなんだけど、少し前から何故かその保田さんが周りから無視され始めて……」
茜の話ではこうだ。
美香が最初の2人を粛清してからというもの、茜をイジメていた子たちの間では次々と謎の被害が多発。 中には『絶対にあそこにいたのは堀江だった!』と声を上げた者もいたらしいが、美香もそこらへんは計算してやっていたのだろうな……その全てに茜はアリバイを持っており、いじめっ子たちの声は誰にも届くことはなかったとのこと。
「こんな偶然ってあるんだね。 私を貶めようとしてた子たちが勝手に自滅していったの」
「そうなのか」
「うん。 あとこれは水島さんのおかげなのかな……イジメをやめて謝ってきた子たちからも『次は保田さんたち、こんなことしてきそうだから気をつけてね』とかアドバイスもらって上手く避けられたんだ」
おお、これが美香と水島……元飼い主と元奴隷ペットのコンビネーションか。
あえて例えるならば美香が先陣を切って特攻し、水島が裏で根回し等をしていた……という感じだな。
そんなこともあり茜をイジメる人数は減少。
茜の優しさに触れた子たちはそのほとんどが茜に仲良く接するようになり、最後に残ったのは保田という女子のみ。 同じヤンキー校出身だった彼女の仲間たちも周囲の目を恐れて保田から離れるようになったっという。
しかしそこは流石ヤンキー校出身……保田は止まらなかった。
なんでも孤立してしまった保田は後先考えられなくなったのか、教室内でオレたちの学校の6年生……ヤンキー校時代に学校の頭を張っていた男子に連絡。 茜や自分を裏切った者たちへの仕返しを電話越しで皆に聞こえるようにして頼んだらしいのだが……
ここでオレと水島は茜から聞いた内容に言葉を失った。
「私も教室でそのやり取り聞いててビックリしたんだけど……その男の子、保田さんの頼みを断ったんだよ」
「え」
「なんで?」
「それはえっと……なんて言ってたんだっけな。 確か『ごめん、俺今は西園寺組に入ってるから、西園寺さんの顔に泥を塗るようなことはしたくない』だったかな」
「「ーー……え」」
そこから味方を完全に失った保田はより一層周囲から冷たい目で見られるように。
しかしそれを見るに耐えなかった茜はなんとか解決……和解に向けて動いたりしたらしいのだが、結果は保田の意地の勝利。 保田は学校を休み、来なくなったとのことだった。
うん、まぁ一番ベストなのは仲直りしてみんな仲良しってことなんだと思うけど、茜に嫌な思いをさせてきたんだ……そのくらいは自業自得だろう。
それにおそらくこれは水島もオレと同じ気持ちなんだろうが……
まさか敵の最終手段を潰していたのが美香でも水島でもオレでもなく西園寺だったなんて。
◆◇◆◇
3人で話し込んでいると水島が担任に呼ばれたのでオレと茜の2人だけに。
今しかないか。
オレは茜に「ごめん」と頭を下げた。
「え……えええ!? どうしたのダイきちくん突然謝ってきたりして……頭あげてよ! 私、別にダイきちくんに謝られるようなことされてないよ!?」
あぁ茜……なんて優しいんだ。
茜は必死にオレの頭を上げさせようとしてくるがオレはなおも頭を下げ続ける。
「いや……オレは茜に謝らなければならん」
「なんで?」
「だってオレ……茜のために何もできてねーもん!!!」
そう、オレは茜のイジメの件について『どうにかしてやる』とは言ったものの、手を下していったのは言うまでもなく美香……神様であり、周囲を茜サイドに取り込んでいったのは紛れもなく水島。 そして敵の最終手段を潰したのは今回の件を何1つ知らなかった西園寺ときたもんで、何1つ茜の役に立てていなかったのだ。
「あんだけ啖呵切って『オレたちに任せろ』的なことを言ってたのに……恥ずかしい!! オレなんかいなくても水島や美香だけで余裕で解決出来ていたし、むしろオレがいなかったら2人はもっとスムーズに事を進められていたかもしれない。 足引っ張っちゃったようで本当にすまん!!」
穴があったら入りたい……こういう時に使うのだろう。
謝罪後もオレは茜に顔を向けることが出来ず下げたままをキープ。 先ほど呼ばれた水島が戻ってくるか、茜たちが撤収する間までそのままでいようと決めていたのだが……
「なに言ってるのダイきちくん。 そんなことないよ」
「!!」
なんて優しくも柔らかい声。
突然顔が上げられ目の前に何かが近づいたかと思うと、そこは茜の胸。 茜が優しくオレの頭を抱きしめる。
「茜……?」
「ごめんね、真っ平らで」
「ん、あ……いや。 でもなんで……」
「ダイきちくんはさっき『自分なんて役に立ってない』って言ってたけど、全然そんなことないよ」
え。
顔をあげ茜を見上げてみると、茜は慈愛に満ちた表情を浮かべながらオレを見つめている。
「え……、てことはオレは茜の役に立ったってことか?」
「うん」
「冗談言うなよ。 オレ実際に何も出来てねーよ」
「嘘じゃないよ、本当だよ」
なんて温かな笑顔なんだ。
そんなことを感じながらもしばらくの間見つめていたオレだったのだが、オレが落ち着きを取り戻した事を確認したのか茜は「あのね、ダイきちくん」と再び口を開けて続けた。
「そもそもダイきちくんが今回の文化祭の話し合いに来てくれなかったら私は今でもイジメられてた……違う?」
「ーー……うん」
「それにダイきちくんが水島さんとあそこまで仲良くなかったら、水島さんは私がイジメられてるであろうことにも気づかなかったよね」
「ーー……多分」
「美香さんに会わせようと動いてくれたのもダイきちくんだし、何よりダイきちくんが『大丈夫だ、任せろ』って言ってくれたから私もダイきちくんを信じて……安心して毎日を過ごせてたんだよ」
「!!!!!!!!」
茜は再びオレに「改めてありがとう」と言いながらオレの顔を抱きしめてくる。
オレの顔が押し付けられている箇所は確かに胸部なのだが真っ平ら。 本来ならこの状況……エルシィちゃん以外でドキドキすることなどなさそうなのだが、何故かオレの胸の高鳴りは最高潮に。
顔を真っ赤にしながら硬直していると、それに気づいた茜がそっと耳元で囁いた。
「あ、ダイきちくん赤くなってる。 えっちー」
「ーー……!! ちょ、いや、ちがっ……!!!」
オレは必死に言い訳をしようと試みたのだが、ドキドキで上手く口が回らなかったためそれは叶わず。
そうこうしているうちに茜たちも撤収する時間となったらしく、茜は「じゃあまた夜にメールするけど……またね、ダイきちくん」とオレの頭を数回撫でて帰っていく。
ちなみにオレはそれに対しても「あ、うん……また」としか返せなかったわけで、心の中では……
うわああああああああ!!!! やばい……やばいよおおおおお!!!! 可愛すぎて優しすぎて温かすぎてちょっともう……うひょおおおおおお語彙力がああああああああ!!!!
まさに初めて茜に惚れた時以上の大盛り上がり。
この高鳴りはそう簡単に消えるわけもなく、オレは家に帰るまで永遠に口元をニヤニヤさせていたのだった。
そして夜。
スマートフォンが震えたので確認してみると、茜からのメール受信通知。
【受信・茜】今度会うのは合同文化祭当日だね。 もしよかったら一緒に回らない?
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