546 【茜編】神罰!?
五百四十六話 【茜編】神罰!?
オレが茜の脱ぎたてホヤホヤパンツと引き換えに神様……美香にお願いしたこと。
それは……
◆◇◆◇
あれから数日後。
昼休みに茜から『聞いて欲しいの!』とメールが届いていたため、オレは茜の授業が終わったであろう時間を見計らって電話をかけることに。
トイレに向かいながら「どうした?」と尋ねると、茜は嬉しそうな声で『それがね、』と話を始めた。
『私も何があったのかはあんまり分からないんだけど、まったくイタズラされなくなったんだ』
「おー、そうか」
『うんっ! それに私をイジメる派だった中でも半分以上の子は私に謝ってきて……それからあんまりちょっかいも出してこなくなったの』
茜曰く陰湿なイジメはかなり減り、時折睨んでくるイジメ派は今やごく少数。
しかし茜がそいつらと目を合わせると、すぐに視線をそらしてどこかへ行ってしまうらしい。
くくくっ、作戦は成功のようだな。
オレにはまだ授業があるので「とりあえず休み時間短いからまたかけるわ」と伝えて通話を切る。 スマートフォンに表示されている時刻を確認すると休み時間はまだ後5分ある……オレは隣の個室から顔を覗かせていた美香に「安心しろ」と親指を立てた。
ーー……途中から視線を感じてたけど、やっぱり美香だったか。
「どうだった?」
オレのいる個室へと入ってきた美香が身体をソワソワさせながら尋ねてくる。
「あぁ。 茜、喜んでたぞ」
「そう、よかった」
美香は相変わらずの無表情……しかしほんの少し頬を赤らめながら視線を下へと落とした。
「何照れてんだよ」
「て、照れてなどおらんわ!!!!」
「素に戻ってんぞ。 てかここ男子トイレの個室なんだからあんま大きな声出すなよ? 男子トイレで女の子の声がしたらビックリするだろ」
「あー、すまぬ。 ワシとしたことが」
美香はコホンと咳払いをすると、今まで通りの美香へとチェンジ。
「ダイキ、神の感情を揺さぶるなんて……なんてバチ当たり」と抑揚のほとんどない声で頬を小さく膨らませた。
「ちなみに美香、茜をいじめてる奴らに何したんだ?」
「それは禁則事項。 詳しくは話せない」
「そこをなんとか」
「ーー……」
「よし、じゃあ追加で茜に靴下ももらおう」
そう提案すると美香はオレの言葉に反応。「むぅ……、それは仕方ない」とゆっくりと口を開いた。
「昨日美香が相手したのは2人。 1人は美香を茜と勘違いして公園で絡んできた子。 トイレで凄んできたからパンツ脱がせてスッポンポンでトイレから放り出した。 もう1人は片想いしているのであろう男の子と遊んでた子。 その子は寄った先の全部のトイレの個室の鍵を先回りして閉めて、結果その男の子の前で尿意を爆発させた」
美香がドヤッた視線をオレに向けてくる。
「な、なんともエグいな」
「全然エグくない。 もっとやってもよかったくらい」
「ーー……そうか」
それから美香は昨日制裁した1人目のその後のことを話してくれたのだが、どうやら茜と間違って絡んできた奴……そいつは美香の制裁を受けた後学校に『堀江さんに酷いことされた!』とチクりに行ったらしい。
しかしあいにく美香に餌食になっていた時間帯茜はまだ学校……担任や学年主任たちと文化祭の話をしていたというアリバイがあったため教師陣はまったく話を取り合わなかったとのことだった。
むしろ『変なことを言うな』と怒られてたんだってよ。
「美香、近くで見てたけどあれは傑作だった」
美香は口元に手を当てると、無表情のまま「ぷーくすくす」と口にする。
「前々から思ってたけどさ、美香って神様なのにやること容赦ねぇよな」
「それは当たり前。 茜に嫌な思いをさせるのは神罰」
「なるほどな」
「それに、あんな神がかったパンツをもらっては、美香も本気を出さないと茜に合わせる顔がない」
「今も履いてんの?」
「無理。 尊すぎて履けない」
そう答えた美香は「ずっとここに入れてる」とあのグレーの茜パンツをポケットから取り出しオレに見せてきた。
「おお……確かに履くには勿体ないか。 てことは常に嗅いでる感じか?」
「よく分かった。 そう、時間あるときはずっと匂ってる」
ぶっちゃけ羨ましくないと言ったら嘘になる。
でもあれから数日経ってるしそろそろ茜の匂いもしなくなってきた頃ではないのだろうか……そんなことを考えながら茜のパンツへと視線を向けていると、美香は無表情ながらも勝ち誇ったような顔でオレを見てきた。
「ーー……なんだよ美香」
「ダイキ、ダイキは今『もうこのパンツは茜の匂いしてないんじゃないか』そう思ってた」
「よく分かったな」
「はぁ……ダイキ、ダイキの考えはかなり浅はか。 変態行為を思いつく以外は一般人レベル」
美香が「やれやれ」と呟きながら首を左右に振る。
「ど、どう言う意味だよ」
「美香にそんな人間の常識は通用しない」
「?」
美香はオレの目の前でパンツを優しく広げていく。
そして次に放たれた言葉にオレは我が耳を疑ったのであった。
「このパンツは美香の特権で……これだけ時間経過を止めてある」
ーー……。
「え?」
「だから、いつでも脱ぎたてホヤホヤの茜の香りを堪能可能。 ーー……もちろん若干の湿り具合も」
「!!!!!!!!!!!!!」
なん……だと。
確かに今の発言は人間の常識の範囲外。 オレは背後に特大の雷が落下したような衝撃を覚える。
「マ……マジなのかそれ!」
「マジ」
「おお……おおおおおおおおお!!!!!!」
まさかそんな神がかった……まぁ実際に神様なんだがそんな羨ましい技を使っていたなんて。
その後オレが一度でいいから触らせてくれと頼むも美香はそれを拒否。 「これは約束を守った美香の戦利品」と口にしながらまるで見せつけるかのように鼻に当てていたのだった。
「ぐっぬぬ……、た、頼む! 1タッチ……1タッチでいいから!」
「いい香り」
「ぐぬああああああああああああああ!!!!!!!」
そうこうしていると休み時間終了のチャイムが鳴り響く。
オレは美香に「ま、待ってろ!! 何かしらの交換条件を思いついてやるからな!!」と言い残して教室へと走ったのだった。
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