545 【茜編】出す!?【挿絵有】
五百四十五話 【茜編】出す!?
茜から衝撃の電話を受けた翌日の放課後。
オレは茜と少し大きめの駅で待ち合わせをしてとある場所へと向かった。
「ダイきちくん、どこ行くの?」
電車を降りて向かっている途中、茜が周囲を見渡しながらオレの後ろをついてくる。
「ん? まぁもうすぐ着くはずだ。 昨日寝る前に場所は確認したからな」
「それはありがたいんだけど……この辺の景色、どこかで」
お、記憶力がいいな。
おそらくそこに茜が来たのは今までに何度かあるはずだ。
しかしその移動手段はおそらく車。 だからこうしてゆっくりと流れている景色だけではすぐには分からないんだろうな。
「ねぇダイきちくん」
「まーまー。 もうちょっとだから」
オレはあえて答えは言わずにそのまま歩みを進めていく。
すると茜も少しずつ見慣れた景色が多くなってきたのか「あ、もしかして……」と小さく呟いた。
「もしかして今向かってる場所って……あの神社?」
「おー、正解。 やっぱり途中で気付いちゃうか」
そう、オレが茜を連れて向かっていた場所はとある神社。
もちろん普通の神社ではないぞ? 勘が良かったり記憶力がいい人はなんとなく想像はついているかもしれないが、美香が……オレを転生させてくれた神様が祀られているかなりオレと茜にとってはご利益バリバリの神社なのだ!!!
ーー……前になんとなくで神社名聞いておいてよかったぜ。
「えっと……なんでここに? 私こっちに引っ越してきたときも家族でお参りとかしたよ?」
「うん、それは神様も喜んでただろうな。 でも今日は普通のお参りとはわけが違う」
「?」
神社の鳥居が見えたあたり。
オレはそこで足を止めると後ろをついてきていた茜の方を振り返った。
「ん? ダイきちくん?」
「なぁ茜」
「はい」
「ちょっと近くのコンビニか公園のトイレで今履いてるパンツ脱いできて」
「え……ええええええええ!?!?!?」
数分後。 コンビニから出てきた茜が顔を真っ赤にしながら小走りで外で待っていたオレのもとへ。
今あのスカートの中はワンダーランドなのかなどと考えていると、茜が頬をプクッと膨らませながらオレの袖を引っ張ってくる。
「どうした?」
「もぉ……そんなスカートばっかり見ないでよ」
「いいじゃねーか。 小学生男児は女の子のスカートとかその中身が好物なんだから」
「ーー……中身大人なくせに」
「まぁそうだな。 だからこそ余計に好きなんだ」
「えっち」
「別に代わりと言ってはなんだけど、オレのも見せてあげないこともないんだぞ?」
「いいよ別に。 だって昨日電話で聞こえてたけど、ダイきちくんってその……か、被ってるんでしょ? そんなのクラスの男の子が出してるところを何回か見たことあるもん」
グサァ!!!!!
◆◇◆◇
昨夜弱点に負った傷とは別に心にも深刻なダメージを受けたオレは若干フラつきながらも茜とともに神様が祀られている神社へ。
鳥居の下をくぐり敷地内へ入ると、まっすぐ本殿へは向かわずに周囲をぐるりと見渡した。
「なぁ茜」
「なに?」
「覚えてたらでいいんだけどさ、茜が小さい頃にここの茂みの奥でトイレしたって言ってたろ?」
オレの問いかけに茜は若干恥ずかしがりながらも「う、うん」と頷く。
「それが……どうしたの?」
「いやさ、そこに案内して欲しいなって思って」
「なんで? 本殿すぐそこだよ? お参り行かないの?」
「だから今日は普通のお参りじゃないって言ったろ」
オレは茜の後ろを歩きながら、茜の記憶を頼りに道を外れて茂みの奥へ。
そうして茜が「確かこの辺だったかなー」と口にしながら行き着いた先は、周囲を草木で覆われた……しかしそこだけ少し拓けている場所だった。
なるほどな、幼き日の茜はここで一人でオシッ……ゲフンゲフン。
「ダイきちくん、それでここで何するの?」
オレが脳内で当時の茜を想像しながら妄想に耽っていると、茜が股のあたりを押さえながらオレに視線を向けてくる。
「え」
「まさかとは思うけど、ここでおトイレするのはイヤだよ?」
「あーうん。 それは確かに見たいけど大丈夫」
オレは茜の肩をポンと叩くと、オレたち以外誰もいない空間に向かって声をかける。
「神様ー、頼む、お願い事があってきたんだ。 できれば姿を見せてくれないかー?」
ーー……。
うん、清々しいほどの無音。
そこから何度か声をかけてみたのだが、神様の姿は一向に現れず。 耐えきれなくなったのか茜が「ねぇダイきちくん、流石にもう出てこないよ。 今の私はオーラすらも視えないし、現世用の身体はこうして私がもらっちゃったんだもん」と少し寂しそうに首を横に振る。
「いや、でもオレ的には出てきてくれると思うんだよなー」
「おじいさんの姿で?」
「ううん、今の茜と同じような姿で」
「え?」
そうだ……そうでなくては示しがつかない。
以前優香はクヒヒさんを除霊されそうになったところで美香と名乗る人物に助けてもらったと言っていた。
身体的特徴もほとんどオレの知っている美香そのものだったし、いつもとは言わないがオレたちの知らないところで現世を楽しんでることは間違いないんだ。
それにここは神様が祀られている神社の敷地内。 惚れた女が来てることにあの神様が気づいてないわけがないだろう。
オレは最終手段に移ることに。
茜の方へと体を向けると、「仕方ない。 茜、あれ……出せるか?」と手を差し出す。
「だ、出すの? ここで?」
茜が目を大きく見開きながらオレに聞き返してくる。
「うん」
「えええ、流石にそれはムリ、恥ずかしいもん」
「そこをなんとか。 これも茜のためなんだ」
「私のためって言われても……でもここじゃなくても良くない?」
まったく、今更何を恥ずかしがる必要があるものか。
パンツを脱いだ時点でそうなるであろうことは茜も少なからず予想していただろうに。
オレは「ほら、カモンカモン」と言いながら茜に早く出すよう催促。
するとどうだろう……茜は再び顔を真っ赤にさせ、若干内股になりながらオレを上目遣いで見上げてきた。
「ご、ごめん。 やっぱりムリだよ……」
「なんで?」
「もちろん恥ずかしいのもあるけど、私学校終わってから何も飲んでないし……多分頑張ってもチョロっとしか出ない。 そんなところ見られたくないよ」
ーー……は?
「え、何言ってんの茜」
「え?」
オレの反応に驚いた茜が目を大きく見開きながら首をかしげる。
「なにってもちろん……」
「一応念のために聞くけどさ、茜はオレが何を出せって言ってると思ってんの?」
「そ、それはおしっ……」
「ちがあああああああう!!!!!!」
ちくしょう!!! 意思疎通って難しいな!!!
オレは誤解を解くため丁寧に茜に説明することに。 そんな尊くも神秘的なものを出すことではなく、パンツを出すことだと説明すると、茜は「え、パンツのことだったの!?」と驚きながらポケットに入れていたらしきグレーのパンツをそっと取り出した。
「さ、さきに言ってよ。 それでこのパンツをどうするの?」
ーー……うん、パンツを握りしめて尋ねてくるあたり、オレに渡す気はあまりないようだ。
そう悟ったオレが今からオレがしようとしていたことを代わりに茜にしてもらうことに。
「とりあえずそのパンツを目の前においてくれ」とお願いすると、茜は頭上にはてなマークを浮かばせながらもその通りに地面の上へとパンツを置く。
「お、おいたよ?」
「うし、じゃあちょっと待ってろ」
オレは置かれたパンツから視線を外すと再び誰もいない空間に声をかけることに。
「神様ー、あと5分待ちますー! 出てきてくれて、かつお願い事を聞いてくれたらこのパンツあげます! さっきまで茜が履いてた超レア物ですよー! もし出てこなかったら諦めてオレがもらって帰りますー」
するとどうだろう、『5分待つ』……そう言ったのだが。
突如としてかなりの強風がオレたちの周囲を駆け巡る。
流石に砂埃もあったためオレたちは目を開け続けることが出来ずに目を閉じてしまったのだが、それはほんの一瞬だった。
「あ」
「え!?」
オレと茜は本当に一瞬目を瞑っただけだというのに、気づけば目の前には絢爛豪華な羽織物を身にまとった美香の姿。
美香は茜のパンツを大切そうに握りしめながらオレたちをジッと見つめている。
「う、うそ……ほ、ほんとに神様ですか?」
「そう」
優香の話を聞いててよかったぜ。 やっぱり隠れて現世に来てたんだな。
美香の姿での再会は何ヶ月ぶりだろうか。
オレと茜がその姿に見惚れていると、美香はゆっくりと口を開いたのだった。
「むぅ……ダイキも茜もこれは卑怯。 出てくる予定はなかったけど、これは出て来ざるを得ない。 それで……お願いってなに?」
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