544 【茜編】オレに出来ること
五百四十四話 【茜編】オレに出来ること
平日の夜。 オレがそろそろナイトフィーバーを楽しもうと秘蔵のエロ漫画を取り出しベッドに横になったと同時。
突然スマートフォンが鳴り出して確認してみるとどうやら着信通知のようで、電話をかけてきていた相手は……
【着信通知・茜】
「え、茜?」
慌てて通話ボタンを押しスピーカーを耳に当ててみるも何故だろう……何も聞こえない。
「もしもし? おーい、茜ー」
『ーー……』
うむ、完全なる無音。
もしかして誤タッチ……ポケットの中に入れてたスマートフォンが茜の脚に触れて電話をかけてしまっただけなのかもしれない。
オレは「なんだよ、いきなりで焦ったわ」などと呟きながら目の前に放り出したエロ漫画を手に。
「うし、それじゃあお楽しみの時間だ」と口にしてズボンに手を掛けながら茜からの電話を切ろうとしたのだが……
『ーー……お楽しみの時間?』
「!!!!!!!!!!」
突然スピーカーから聞こえてくる茜の声。
もちろんオレがそれに動揺せずにいられるわけもなく……
「うわ……わわわわわわああああああーーー!!!!!!」
バランスを崩したオレはスマートフォンを肩と耳で挟んだ状態でベッドの下へと転倒。
その際片手に持っていたエロ漫画が先に落下し、その角の上に少しはみ出していたオレのとある箇所がグニィッとめり込む。
「ふんぬァ!?!?」
女子は分かってくれるだろうか。
いかにめり込んだ先が漫画の角……紙製とはいえど固形物は固形物。 そこにオレの全体重が乗っかかるもんだからその痛みは相当なもの。
メキィグニィイイイイ!!!!!
「ぎゃ……ぎゃあああああああああああああ!!!!!」
オレは茜との通話も忘れて大絶叫。
その後叫び声に驚いた優香が部屋に飛び込んできてオレのあられもない……そしてみっともない姿を見られてしまう。
「ちょ、ちょっとどうしたのダイキ……って、えええ!? なにがどうなったらそんな格好になってるの!?」
「いた……いたたたたたあああああああ!!!!」
「だ、大丈夫ダイキ!? とりあえずこっちおいで!」
オレは恥ずかしいものをはみ出したままの状態で優香にお姫様抱っこされ、リビングへと連れて行かれたのだった。
「ほら、ちょっとダイキ見せて」
「ーー……」
「うわぁ、おち……皮ちょっと切れて血が出てるよ。 これって軟膏でいいのかな。 でもよかったね、皮があっ……コホン、中身じゃなくて」
グサァ!!!!!
◆◇◆◇
優香に負傷した箇所へ軟膏を塗ってもらい、流石に萎えてフィーバーナイトを出来なくなったオレは茜に電話を掛け直す。
するとすぐに茜が電話に出てくれたので早速要件を聞くことにした。
「すまん茜、いろいろあって席外してた。 で、なんだったんだ?」
『ううん、ごめんね私こそ変なタイミングで電話かけちゃったみたいで。 それでその……ちょっと電話繋がったままだったから聞いちゃったんだけど、オチ……えっと、大丈夫だったの?』
「お願いしますそこはスルーしてください」
『そ、そうなの? うん、分かった。 じゃあ早速なんだけど……』
そこから茜は何故オレに電話をかけてきたのかの理由について話しだす。
そしてその内容はとんでもないものとなっていたのだった。
「ちょ、ええええええ!? いじめっ子同士で仲間割れ!? それで文化祭の日にうちの学校に転校してきたヤンキーに茜をボコらせるだってえええええええええええ!?!??!?」
なんて非道なことを考える4年生……まぁ聞く限りあの廃校になったヤンキー学校の出身らしいからまぁ分からなくもないが。
「えっと茜……その、大丈夫か?」
そう尋ねると茜は少しの間を置いてではあるが『うん、今の所は大丈夫だよ。 話を聞いちゃっただけだから』と返答。
しかし話している最中にも茜の声は僅かに震えていた……てことはその話を聞いたときは相当怖かったのだろう。
そしてこれをオレに話してきたということは、茜は直接とは言わないがオレに助けを求めてきているってことだよな。
ならオレが……なんとかするしかないだろう。
オレはそこから数分間は茜の気を紛らわせるために自虐を使った下ネタ交じりの雑談を開始。
その後また明日連絡すると伝えて通話を切り、この問題をどうするべきかを考えはじめたのだった。
ーー……流石にオレが数日間あっちの学校に行くとか茜がこっちの学校に来るってことは難しいだろ?
となれば水島に動いてもらって弱みを握った奴らに茜のボディーガードをやらせるという手もあるが……いやでもそれだといつそいつらが裏切るか分からない。
逆に学校を休ませるってなっても茜は実行委員だしってことで断りそうだしなぁ。
もっと他に強力で安全な何かーー……
「ダイキ、おち……あそこの痛み、どう?」
「え」
オレがベッドの上で唸っていると、心配していたのか優香が扉を控えめに開けながら顔を覗かせてくる。
「あーうん、痛みは引いたよ、ありがとうお姉ちゃん」
「そっか、ならよかった。 もう変な格好でしないようにねー」
「え、あ……え?」
オレが聞き返すと優香は口を滑らせてしまったのか『しまった!』と言った表情で顔を赤く染め「い、いやいや! そういう意味じゃないよ!?」と必死に言い訳をしてくる。
「えっと……うん、とりあえず分からないけど大丈夫だから」
「ダイキの怪我がそのくらいで済んだのもクヒヒさんのおかげなのかな」
「ソ……ソウダネ」
「じゃあお姉ちゃんお風呂入ってくるから、もしまた痛くなったら呼びにきてね」
「ハーイ」
こうして優香は夜の家事を終えたのか一旦自室に戻った後に浴室へ。
オレはそんな優香の足音等を聞きながら「クヒヒさんのおかげ……ねぇ」とボーッと天井を見上げていたのだが……
「ん? そういや優香、少し前に気になること言ってたよな。 確か……」
ーー……あ。
オレの脳がとある案を閃く。
もしこれがうまくいったとしたならば文化祭までの茜の無事は確実……茜をイジめてた奴が言っていた『こっちの学校のヤンキーにボコらせるって話』は文化祭当日までにオレと水島で対処しておけば済む話だもんな。
やってみるしかねーか。
気づけば時間はもうすぐ日付が変わる頃。
オレは迷惑を承知で茜にメールを送信。 明日の放課後空けることをお願いしたのであった。
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