543 【茜編】特別編・驚きの効果!?
五百四十三話 【茜編】特別編・驚きの効果!?
双方の学校・文化祭実行委員での話し合いをした日の夜。
自室のベッドで横になっていた茜は話し合いの休憩時間に福田ダイキの友達・水島花江が口にしていた言葉を思い出していた。
『4組の遠藤さんって女の子……昨日の火曜日から学校休んでるはずだよー』
自分をイジメている犯人を何かしらの方法で探し当てた花江。
茜はどうやって花江が犯人を見つけるに至ったのか知りたくなったため、一番話しやすい相手・ダイキにメールを送ることにしたのだが……
【受信・ダイきちくん】あー、これ言ってもいいものか分からないけど……水島独自の罠を張って見つけ出したらしいぞ。
ーー……罠?
【送信・ダイきちくん】それってどんなのか知ってる?
【受信・ダイきちくん】んー。 オレもちゃんと理解してないから……詳しく説明するのは難しいかな。 ただ茜、今週の月曜の朝、フェイクのラブレター入ってたろ? あれ水島作なんだ。 あれが色々と作用して犯人を見つけるに至ったっぽい。
「ーー……!!」
【フェイクのラブレター】
その単語を聞いた途端茜は2日前の月曜日の朝のことを思い出す。
確かにあの日登校して靴箱の中を見ると封筒が上履きの上に置かれており、中を開けるとそこには1枚のラブレター。 そしてもう1枚入っていたので目を通してみると、【茜ちゃんの味方】と名乗る人物から茜への今後の動きを指示する内容が書かれていた。
もちろんその紙は今も茜の手元……勉強机の引き出しにちゃんと保管してあるわけで……。
「あれ、水島さんがやってくれてたんだ。 あまり関わったことのない私のためにわざわざ……」
おそらくだけど、それだけ水島さんはダイきちくんのことを信頼している。 だからダイきちくんの知り合いというだけの私にもここまで手をかけてくれるし、初対面の時は『ワン』とか可愛く冗談なんか言ってくれたりして……あれはあれだ、2学年下の私を緊張させないようにという水島さんなりの気遣いだったのだろう。
「私……ほんと恵まれてるな。 神様、ダイきちくん、ありがとう」
この日茜はいつも寝る前に口にしている神様への感謝にダイキの名前を追加。
確かに自分は今陰湿なイジメを受けてはいるが、それ以上に自分の周りにはたくさんの味方がいる……そんな温もりを心で感じながら茜は眠りについたのだった。
◆◇◆◇
翌日・学校。
授業間の休み時間に茜がトイレに向かうと、何やら女子たち数人が言い争っている様子。
なかなかの口論なのか外まで声が漏れ出ていたのだが茜も尿意を抑えることは出来ず。 最近極めつつあったステルス機能……存在感を隠しながら空いている個室で用を足していると、話の内容がはっきりと聞こえてきた。
「もうさ、もう堀江さんイジめるのやめない?」
「は? もしかして昨日の夜届いたダイレクトメールにビビってんの?」
「そんなわけじゃないけど」
「いやいやめっちゃそれじゃん! てかなんで私らがやったってバレてるわけ!?」
「もしかしてノリコじゃない? 火曜から2日休んでるし」
「遠藤さん!? ちょっと後で聞いてみる!!」
「それは勝手にしてよ? とにかく私はもう抜けるから」
「はー!?」
それからも聞こえてくるのはもうイジメから抜ける組と続ける組との激しい言葉のぶつけ合い。
誰が話してるのかは分からないけど、流石にこの状況で扉を開けて出て行っては確実にバレてしまう。
茜は言い争いをしている数人がここから離れていくのをジッと待っていたのだが、その数分後……
「もういいじゃん! そんなムキになって堀江さんイジめても、室井くんはヤッスのことなんか振り向かないんだし!」
ヤッス……隣のクラスでそう呼ばれてる子を見たことがある。
名前は確か保田アンナ。 元々は近くの有名なヤンキー学校出身だったけど廃校になってこっちに流れてきたんだっけ。
まさか4組の遠藤さん以外にも他クラスから目をつけられていたなんて。
イジメって同じクラス内で起こるだけのものじゃないんだと茜がしみじみ実感していると、この声はおそらくその保田のものなのだろう。 「はー!? 今なんて言った!? 転校生に私が負けるわけないじゃん!」とかなりの怒声がトイレ内に響き渡った。
うわあああ、怖い。
今まで平和な病院育ちだった茜にとって先ほどまでの言い争いもまさに非日常。 こうしていきなり声を張り上げられると勝手に身体がビクついてしまう。
茜は自身に『落ち着け落ち着け』と自己暗示。
しかしその間にも激しい言い争いは続いているわけで……
「いやヤッス、自分だって1学期に転校してきたんじゃん」
「う、うるさい!!」
ドンッ
「!!」
聞こえてきたのは何かを殴ったのか鈍い音。
それと同時に女子数名の「きゃあああああ」という叫び声。
こ、これってもしかして……
嫌な予感がした茜は扉を少しだけ開けて確認してみることに。
すると……やはりだ、そこにいたのは5人の女子。 1人が倒れてもう1人……保田アンナがそれを見下ろしている。
残りの3人は若干後ずさりをしながらも2人を囲っていたのだった。
まさかこんなことになるとは。
こういう時倒れた相手を助けた方がいいのだろうが、茜にとってこんな暴力沙汰を目にしたのは生まれて初めて。
あまりの恐怖で腰が抜けた茜は手を震わせながらも扉をそっと閉めて鍵をかけ、騒動が落ち着くのを待った。
「あー、そうだ。 いいこと思いついた」
声を漏らさぬようその場でジッとしていると、保田の声が聞こえてくる。
「な、なにアンナ」
「今度の文化祭って私がいた学校の受け入れ先のところとやるんだよね」
「ーー……そうらしいね」
「てことは前の学校で最強って言われてた今6年の先輩とかそこにいるわけだし……代わりに堀江、ボコってもらおっか。 室井くんの前で」
え。
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