表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
538/733

538 【茜編】全てはご主人様のため!?


 五百三十八話  【茜編】全てはご主人様のため!?



 茜の姿に神様……美香の面影を魂で感じた水島が衝撃の奴隷精神を披露し飛び出してからしばらく。

 


「ーー……ったく水島のやつ、どこ行ったんだよ」



 水島がどこに走り去ったのか見当もつかなかったオレが適当な場所を小走りで探し回っていると、確かここは……2階だな。

【美術室】と書かれた教室の前を通りかかったとき、中からとてつもなく嬉しそうな叫び声が聞こえてきた。



「きゃあああああ!!! あなたどこの子!? ちょっとデッサンさせてもらえないかしら!!!」



 ーー……ん? なんだなんだ?



 先ほど聞こえてきた声『あなたどこの子』に反応したオレは水島ではなかろうかと中を覗いてみることに。

 扉をゆっくりスライドさせて見てみると、やはり思った通りだ……そこには水島がいて、それを舐めるように観察しながら素早い筆さばきでデッサンをしている女教師の姿があった。



「私は今度ここの学校と一緒に文化祭をするにあたって、挨拶にきた○◯小の水島です」


「◯◯小!? そういえば今年はそことすることになったとか教頭先生が言ってたわね……! それにしてもなんてこと!? こんな美少女があちらさんの学校にはいるものなの!?」



 見た感じからするとあの女教師は美術専門なのだろうか。

 女教師の目は本気そのもので、水島の受け答えにキャーキャー言いながら製作を進めていく。

 確かに水島の見た目はまさに美少女……それを分かる美術教師に少なからず好感を持ったオレは少しの時間くらいならこのままにさせてあげようとでも思ったのだが……



「そういえば先生は美術の先生なんですか?」



 水島が熱い視線を送ってきている女教師に質問をする。



「ううん、違うよ。 こうして絵を描いてるけどそれは趣味。 私は教師になりたくてここに教育実習に来てる大学生なの」


「そうなんですか。 どのくらいですか?」


「うーん、今で2週間くらいかなぁ」


 

 一体なんでそんなことを。

 もしかしたら相手を飽きさせないようにするための水島なりの気遣いなのかもしれない。

 そう考え感心していたオレだったのだが、次に水島がした質問の内容にオレは耳を疑った。



「突然なんですけど、先生は4年生の堀江茜さんって知ってます?」



 え、なんでここで茜の名前を?

 今の水島の問いかけに実習生は「ううん、私は3年生の担当だから……」と首を横に振りながら水島に「ごめんね」と頭を下げる。



「じゃあこれ描き終わってからでもいいので、4年の先生に会わせてもらうことって出来ますか?」


「うん、いいけど……なんで?」


「さっきちょっとだけお会いして話してたんですけど、気になることがあったんですよね」


「気になること?」


「はい、まぁ先生は教育実習生だと仰ってましたし、これから私が言うことを隠すことはしないと思うので話しますが……スカートでギリギリ見えない膝上の太もも寄りのあたり……偶然できたとは考えられないようなアザがあるのを見つけたんです。 それに髪の毛も若干乱れてたような気もしましたし、もしかしたら……と思いまして」



「え」



 え。



 それからの実習生の行動は早かった。

 大学生……そこが良かったのだろう。 教師という職業に夢と希望・情熱を持っていた実習生はすぐにデッサンを中断。

「えっと……花江ちゃんだったよね。 じゃあ行くよ」と腕を引っ張り、オレがちょうど覗いていた扉の方へ。



「え? 君は」

「あ、ごしゅ……福田くん」



 先ほどの水島の発言で固まっていたオレは扉を開けた女教師&水島と鉢合わせ。

 水島はオレがあの言葉を聞いていたと悟ったのだろうな。 「福田くんも一緒に行こ」と3人で職員室へ……4年生・茜の担任のもとへと向かった……のだが。

 


 ◆◇◆◇



「いやいやあり得ないでしょう。 堀江さんは最近転校してきたとはいえクラスでも学級委員に推薦されるほどの人望厚い人物……いじめられているなんて絶対にないですよ」



 茜の担任……ましてや隣のクラスの担任たちも「それはあり得ない」と全否定。

 たまにそういうイジメがあるかもしれないと校内を見回っていたりしているらしいのだが、確かにたまにイジメを目撃することはあるが茜がそれに巻き込まれているところを見たことがないと声を揃える。

 むしろイジメられていた子にも優しく接している良い子だと。


 教師サイドの声に水島も「そうですか……なら良いんですけど」ととりあえず頷く。

 ここで変に食い下がっても意味のないことを水島は理解しているんだろうな。 教師サイドの声に頷いてはいるものの顔は全く納得していない。



「まぁでも気にしてくれたことはありがとうね。 今後私たちも堀江さんに注意は向けておくから安心してほしいわ」


「わかりました。 すみません、別の学校の私がこんなこと言っちゃって」



 水島が丁寧に頭を下げると、いつの間に来ていたのだろう。 水島の後ろにはうちの担任の姿。

「いやーすみませんね、うちの生徒が変な心配させてしまいまして」とヘラヘラ笑いながら水島を後ろに下げ、教師たちに頭を下げ始める。



「いえいえ良いんです。 我々といたしましてもそういう報告はありがたいですからね。 四六時中生徒たちを見張ってるわけにも行きませんから」


「ただこの水島、かなり見る目はあるので気にはしてやってください」


「わかりました。 ありがとうね、水島さん」



 さすが大人が入ると話の進み具合が一気に変わるな。

 最初こそ真っ向否定していた教師たちも、うちの担任が話に入ってきただけで少しではあるが信じ始めたのか今後の方針を話し始める。

 そしてこの結果には水島も驚いていたようで「せ、先生?」と自らの前に立つ担任に小さく声をかけていたのだった。



「ったく水島も福田も、俺が部屋に戻ったら誰もいなくて焦ったんだからな。 んじゃ帰るぞー」



 こうしてオレたちは茜サイドの教師たちにも挨拶をして担任の車へ。

 中に入ると水島は唇を尖らせながら「なんで大人って子供の話をちゃんと聞こうとしないのー?」とブーブー愚痴りだす。



「あ、やっぱガチだったんだ」


「そうだよー! 花ちゃんが見間違えるわけないじゃん」



 そうオレと話していると運転席に座った担任が「ていうか水島、よくそんなところ気づいたな。 スカートで見えない場所だったみたいだし、どうやって見つけたんだ」と尋ねてきた。



「それは花ちゃんがちんち……」

「うわあああああ!! なんかオレがスマホを落としたんですけど、それを水島さんが拾ってくれようとして体を屈ませた時に偶然見えたらしいんですー!!!」



 オレは即座に水島の声を遮ってフォロー。

 その後担任は茜の件についてはあまり触れてこず、オレや水島に「あー俺今からまた学校戻って残業だわー」などと愚痴りながら各家まで送ってくれたのだった。



 ◆◇◆◇



 家についてスマートフォンを取り出すと水島からメールが届いていることに気づく。



【受信・水島】ご主人さま、今日はワンとか変なこと言って気を遣わせちゃってごめんね。



 いや本当にな。 確かに最初こそ焦ったけどそれがきっかけとなって茜の脚にあるアザにも気づいてもらえたんだし、オレ的には感謝してるくらいだぜ。



【送信・水島】構わん。 黙っててやるから安心しろ。


【受信・水島】それでなんだけど、近いうちに2人だけでまたあの学校行かない? 


【送信・水島】え、なんで?


【受信・水島】今日が初めましてだったはずなんだけど、なんか花ちゃん、茜ちゃんをイジメてる奴ら許せない。 絶対に証拠つかんで見せるから、手伝ってほしいんだ。



 なるほどな。

 オレが『あっちの先生が対処してくれてると思うぞ?』と聞いてみるも、水島からの返事は『むり、花ちゃん信じてない』。

 これも主人を想うが故の行動……仕方のないものなのかもしれないな。


 オレの返事はもちろん『イェス』。 早速明日水島とともに話し合いという名目で潜入することに決まったのだった。



【送信・水島】でもそれって大丈夫なのか? 不法侵入とか……。


【受信・水島】だいじょーぶだよー。 今日花ちゃんを描いてた教育実習生のおねーさんから『もしもの時はフォローしたげる』って連絡きたから。



 ちゃっかりしてやがる……。

 さすがはマドンナ、侮れねぇな。



お読みいただきましてありがとうございます!!

下の方に星マークがありますので評価していってもらえると励みになります嬉しいです!!

感想やブクマ・レビュー等お待ちしております!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 茜ちゃんが痛い目にあってるだと! 許さん!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ