535 【茜編】連絡が来なかった理由!
五百三十五話 【茜編】連絡が来なかった理由!
まさか茜が近隣の小学校に通っていたなんて。
オレは胸の高鳴りを感じながらも茜に「ひ、久しぶりだな」と挨拶。 すると茜も「うん」と若干頬を赤らめながら小さく頷いた。
「えっと……ここに1人で来たのか?」
そう尋ねると茜は首を左右に振る。
「ううん、先生と一緒にだよ。 先生はここの先生方とお話ししてるんじゃないかな。 なんか大人がいると子供に強制させちゃうような気もするからって、生徒同士の話し合いにはあまり入りたくないんだって」
「なるほど良い先生だな。 だったらチャチャっと終わらせるか」
「そうだね。 じゃあ早速本題に入るんだけど、今回の文化祭、ダイきちくんの学校と何か……」
「任せろ」
「え」
言葉を遮ってのオレの了承に茜は目を丸くする。
「えっと……まだ私詳細を言ってないんだけど」
「構わん。 さっき担任が言ってたんだけど、今ここには実行委員オレしかいないんだ。 ということはオレに全決定権がある……ゆえに任せろ」
「え、えええ……他の先生に相談なんかは?」
「そこも構わん。 ていうか先生サイドが別にOKだったから招き入れたわけだろ? それにもしNGだったらそもそも招き入れてないはずだし、そうでなくともオレに『何としても断れ』って言ってくるはずだしな」
「た、確かに……」
「よし、じゃあ本題は終わったわけだし茜のとこの先生が帰ってくるまでお話しようぜ!」
こうしてオレたちは茜サイドの教師が戻ってくるまでの間、お互いに今までどんなことがあったのかを簡単に話すことに。
その際にどうしてオレに連絡をくれなかったのかを尋ねてみることにしたのだが……
「いや、私引っ越ししてきたときに、もしかしたらこれから通う予定の学校にダイきちくんいるかもって思って電話かけたことあったんだよ?」
「え、そうなのか?」
「うん。 でも電話越しから『クヒヒ』って人じゃないような声が聞こえてきたから、もしかしたら番号変わっちゃったのかなーって思って消しちゃったんだよね」
「な……なんだってえええええええええ!?!?!?!?!?」
茜が引っ越してきた時期を考えると大体オレが病院の階段で足を踏み外して天界に行ってた頃だよな。
ちくしょうクヒヒ野郎め、余計なことしやがって!!!
オレは改めて茜に連絡先を教えると、茜は嬉しそうにそれを受け取り「早速今夜メールするね」とオレに微笑みかけてくる。
「お、おう」
「何時くらいなら迷惑にならない?」
「あのなぁ茜、小学生が相手の……しかも同級生の時間の都合なんか気にしてんじゃねぇよ」
「あはは、そうだね」
「それに相手はオレだぞ? 前の茜のときなんか夜中までメールしてた仲じゃないか」
「うん……じゃあそうする。 あ、でももしダイきちくん寝ちゃってて私のメールで起こしちゃったらごめんね」
「構わん構わん」
「ありがと。 私の大好きなダイきちくんのままで安心した」
「!!!!!!」
大好きな……だと!?
オレの脳内で先ほどの茜の言葉……『大好きなダイきちくん』がリピートを開始。
どうしよう、可愛すぎるぞ!! それにそんなこと言われたら病室でキスされたことも思い出して……うわああああああああああああ!!!!
それからの会話内容はあまり頭に入って来ず。
気づけばオレがここに入室してから10分以上が経っており、茜の学校の教師が部屋に入ってきたタイミングで話し合いはお開きになったのであった。
「じゃあダイきちくん、またね。 会えて嬉しかったよ」
あちらの教師の乗ってきた車に向かいながら茜が小さく手を振ってくる。
「あぁ、車で来たんだな」
「まぁね。 でもこれから病院に寄ってもらうんだ」
「え、そうなのか!?」
「うん。 まぁ親が心配してるから健康診断するだけなんだけどね。 あれからめちゃくちゃ身体は元気だよ」
「そ、そうか。 なら良かった」
オレは茜の乗った車が見えなくなるまでその場に立ち尽くし見送ることに。
そしてその姿が見えなくなった頃だろうか。 いつの間にか背後に立っていた担任がポツリと呟いたのだった。
「いや福田、合同文化祭了承したんかーい」
「え」
「これで話し合いのためにこっちが出向くってなったら俺も同行しないといけなくなったやないかーい」
担任は絶望のようなため息をつきながら「まぁとりあえず、お疲れさん」と小学生は好まなさそうな缶コーヒーをオレに渡してくる。
ーー……口にしてみるとやはり苦い。
「もしかして先生……オレが拒否るの期待してました?」
「まぁな。 でも仕方ないか、あの子……福田が好きそうな儚げで可愛らしい子だったもんな。 結城みたいな」
「ブフーーーーーーーッ!!!!」
い、いきなりなんてことを言い出すんだこの担任は!!!
オレが噴き出したコーヒーを腕で拭いながら担任を見上げると、担任はとりあえずオレを弄りたかったのだろうな。 盛大に噴き出したオレをみて「あはははは!! やっぱりそうだったか図星か!」とオレの背中を叩きながら自身の持っていた缶コーヒーをグビグビと飲み干していく。
「ちょ、ちが……何言ってんですか先生!」
「恥ずかしがるな恥ずかしがるな!! いいじゃないか青春!! これがきっかけで付き合えたら先生に何かお礼でもしてくれよ!?」
「そうですね。 じゃあその時は一週間くらい先生用のお弁当でも持参してきましょうか」
「お、それは楽しみだな! 一体どんな……」
「ーー……もちろんお姉ちゃん作の」
「ブフーーーーーーッ!!!!」
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