532 【共通】特別編・除霊成功!?【挿絵有】
五百三十二話 【共通】特別編・除霊成功!?
住職の除霊を中断させるべく飛びかかった優香たち。
しかしあと少しのところでそれは間に合わず、女の霊を包み込んでいた渦は対象を全て飲み込みきった後に消えてしまう。
「え」
「マジ」
渦が消えるとそこには誰もいない普通の空間。
そんな状況を信じられないような目で見ていた優香たちに向かって住職は満足気な笑みを浮かべながら口を開いた。
「これにて除霊は終了……それでは仏様にお礼の祝詞をあげますので、どうぞ私の後ろで正座して手を合わせてください」
住職は美咲が法衣を掴んでいた手を優しく払いのけると優香にゆっくりと視線を向けてくる。
「えっ……除霊、終わったんですか」
「はい終わりましたよ。 その証拠にほら、もう先ほどの霊の姿は見えないでしょう?」
「そ、そんな……」
「お二方に付けられていたマーキングのようなものもじきに薄れて消えていくはず……安心してくれて大丈夫ですよ」
結局のところ、あの霊が本当に良いものだったのか悪いものだったのかなんてことは優香や美咲には分からない。
もしかしたらあの女の霊が良い人だと感じてしまっていたのは本当に自分や美咲が霊にそう思わされていただけで、実際は住職の言っていた通り、今後悪い存在に化けるものだったのかも。
なんとも後味の悪い終わり方だったのだが優香たちは住職に言われた通り渋々後ろで正座することに。
その後住職は仏像の前に座ると再び優香や美咲には聞き取れない謎の念仏を唱え出した……のだが。
『なにが御力をお貸しいただき有難うございますじゃ。 本質を見極めんで行なった其方の先ほどの愚行……力を貸した仏も大層怒っておるぞ』
「「「ーー……!?!?」」」
突然部屋中に響き渡る古臭いながらも何故か幼さの残る女の子の声。
それと同時に呼び出しの儀を始めているわけでもないのに再び足下にあの霧のようなモヤが立ち込めだす。
「な、なんだ!? 今の声は一体何者……新たな悪知恵働く悪霊か!!!」
状況が理解できずに固まっている優香と美咲の目の前で住職が声を荒げながら立ち上がる。
するとそれに応えるかのように住職の目の前で急に渦が発生……その中から2人の姿が出てきたのであった。
一体何が起こっているのかはさっぱり分からない。
しかし今優香たちの視界に映っているのは鮮やかな朱色の衣の下に巫女服のようなものを身に纏った少女とその奥にもう1人……
「えっ……」
「ねぇゆーちゃん! あれってさっきの……!」
そう、豪華な衣服を纏った少女の奥には先ほどいた女の霊の姿。
女の霊は優香たちの視線に気づいたのか彼女も視線を優香たちの方へ。 その後少女のアイコンタクトを受けて柔らかく微笑むと、そっとその姿を消した。
「え、てことはさゆーちゃん、あの幽霊無事だったってことだよね」
「うん、そうだと思う」
優香と美咲は女の霊が無事だったことに安心すると互いに手を取り「とりあえず……よかったー!」と抱きしめ合う。
ーー……目の前の住職のことなど忘れながら。
「お前は……一体何のつもり……。 あいつは地獄に堕としたはず……なのに連れ戻してきたとでもいうのか!」
住職は持っていた数珠をバチンと床に叩きつけると少女に歩み寄りながら「さっきの霊をもう一度地獄に堕とすからここに呼びなさい! そうすればお前は許してやる!!」と子供相手(?)に勢いよく怒鳴りつける。
しかし少女は一切動じず。 まっすぐな瞳で住職を見上げていた。
◆◇◆◇
あれからどのくらい経っただろう。
住職が少女に詰め寄りだしてから数分。 流石に人間ではなさそうではあるが……子供相手にみっともないと感じた優香が住職を止めようと手を伸ばすと、少女が小さくため息をつきながらようやく口を開いた。
『むぅ、うるさい。 そろそろ黙った方がいい』
「何を生意気な……! 悪霊の分際で私に命令するなど……それ以前に仏様の目の前だぞ! まずはそこから立ち退きなさい……!!」
『だからうるさい。 美香、顔もそうだけど、怒鳴るおじさんのみっともない声が一番嫌い。 それ以上言ったら君の過去の辱め……みんなに見せる』
そう言って少女が手にしたのは胸元に下げていた丸い手鏡。
それを住職の方に向けてかざすと、少女はほんの僅かにだが口角を上げる。
「い、一体何をするつもりだ!! それよりも早くこの神聖な場所から……!!!!」
『いいから見る。 優香ちゃんも美咲ちゃんも見たらいい』
え、どうして自分たちの名前を……?
優香は美咲に視線を移すも美咲もあの少女のことは身に覚えのないようでフルフルと首を左右に降る。
ただなんだろう……あの見た目や声、話し方は完全に初めましてのはずなのだが、少女の周囲に漂う雰囲気とでもいうのだろうか。 あの温かくて全てを包み込んでくれるような感じ……どこかで。
『なにしてる。 2人もさっさと見る』
「え、あ、はい!」
「りょです!」
こうして優香と美咲は住職の後ろから覗き込むように少女のかざした手鏡を見ることに。
するとどうだろう……まるで魔法のアイテム。 先ほどまで自分たちの姿が反射し映っていた鏡面は薄白く光ったかと思うと、次の瞬間にこれは……どう反応すればいいのだろうか。
映し出されている場所はおそらく廃墟。 机やら何やらが散乱している日の光も届いていないような室内で、赤いワンピースを着た真っ白な肌の女に跨られて好き放題されている住職の姿が映しだされていたのであった。
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