530 【共通】特別編・呼び出しの儀!?
五百三十話 【共通】特別編・呼び出しの儀!?
放課後・同級生寺田の親が住職をしているお寺。
寺田により本堂に案内された2人が緊張しながらもそこで待機していると、しばらくしていかにもな格好をしたお坊さんが登場……おそらくはこの人が寺田の父なのだろう。
寺田の父は2人の姿を見るなり開口一番、こう言い放ったのだった。
「うん、憑いてますな」
「「ガーーーーン!!!!!」」
◆◇◆◇
詳しく話を聞いてみると、正確には今憑いているというわけではなくその形跡があるとのこと。
それは言い換ればマーキング……いかに離れたところにいたとしても瞬時にその場に移動できるポータルのようなものらしい。
「え、それってどこにいても私たち狙われるってことですか?」
優香の問いかけに住職は「そうですな」と静かに頷く。
「あー、アタシの人生オワタわ」
「いやいや美咲、それをこれからどうすればいいのかを相談しにきたんでしょ」
優香は隣で絶望に打ちひしがれた美咲を介抱しながら助けを求めるよう住職を見上げる。
するとどうだろう……住職は眉間にシワを寄せた表情で優香たちを見つめ、首を傾げていた。
「じゅ、住職さん?」
もしかしてかなり危険な存在……悪霊とかそういう類なのだろうか。
不安に駆られた優香が声を震わせながら声をかけると、住職がゆっくりと口を開く。
「いや、不安にさせてしまって申し訳ない。 ただ少し……分からないことがありましてね」
「分からないこと……ですか?」
「はい。 確かにお二方は強い想いを抱かれているモノに憑かれている……しかしそこに恨み嫉みといった黒い感情が全くと言っていいほど感じられないのです。 それにむしろ狙われてるというよりは守られてる……なのにソレは身近な親類とか親友だったとかそういう関係性でもなさそうで……」
住職もこういう状況は初めてとのことで、それから数分間は優香と美咲の顔をジーッと交互に見比べる。
「別にお二方は姉妹や従姉妹とか……そういった関係ではないんですよね?」
「はい」
「全然違います」
「となれば何故……どうしてここまでにお二方を守ろうとする意思が強いのか」
考えても結局分からなかったのか住職は強行手段……その女の霊をこの場に呼ぶことを提案。
もちろん2人は「えええ!?!?」と恐怖に慄いていたのだが、それを安心させるよう住職は数珠を腕に通しながら柔らかく微笑んだのだった。
「大丈夫、どのようなことがあろうとその存在はあなた方を襲うことはありませんよ。 むしろもし危険が迫る可能性があるのは私くらい……でしょうかね、ハッハッハ」
それから住職は女の霊を呼び出すための準備に取り掛かることに。
本堂奥に鎮座していた中位の大きさの仏像に向かいお経のようなものを唱えると、女の霊を閉じ込めるためなのだろうか……部屋の四隅をしめ縄のようなもので囲い、何が起こってもこの縄の外へは逃げ出さないよう2人に念を入れる。
「あの、もしその霊が出てきたとして、私たちは座ったままでいいんですか」
「そうですね。 お二方はそこにいるだけでいい」
「住職さんはその霊に何を?」
「まぁ簡単に言えば浄霊ですかね。 言うことを聞いてくれない場合は除霊という強行に出ることもやぶさかではありません」
どうやら今は2人を守ろうとしているらしいのだが、所詮は縁もゆかりもない幽霊……いつその効果が逆のものになるとも分からないらしい。
「え、そうなんですか!?」
「はい。 以前にも似たようなケースがありましてね。 その男性の場合は狐の霊だったんですが……」
住職曰く、その狐の霊は最初の頃男性に驚くほどの幸運を振りまいていたとのこと。 しかし男性が喜んでいる姿に飽きたのかある日を境に態度を一変。 以前とは比べものにならないほどの不幸を振りまいていったらしい。
「ーー……そんなことが」
「そうなんです。 親類や友人だった者ならまだ分かる。 しかし何の関係も持たないモノはいつそうなるかも分かったものではないので早々に手を打つべきなのです」
「なるほど」
こうして厳格な空気の中、扉という扉を全て締め切った空間で住職は女の霊の呼び出しを開始。
何やら念仏のようなものを唱え出すとどこからともなく霧のような靄が足下に充満していく。
「ゆ、ゆーちゃん」
「う、うん」
2人は何があっても1人で逃げ出さないよう手を握りあうことに。
一体どこから出てくるのだろう……そんなことを考えながら優香と美咲が周囲を見渡していると、念仏を唱え終えた住職はカッと目を見開き、先ほどの優しそうな印象とは程遠い張りのある声で周囲にいるのであろう何者かに声をかけた。
「この者たち……福田優香と星美咲に取り憑いている者よ!! そこはお前のいるところではない……まずは話を聞かせてほしいところだが、それを拒むようなら早々に立ち去るがいい!!!」
何とも迫力のある発声。
しかしどこを見渡しても女の霊の姿は見当たらない。
「もう1度言う!! この者たち……福田優香と星美咲に取り憑いている者よ……!!!」
その後何度住職が呼び掛けても女の霊は一切姿を現さず。
そしてそれが住職をより本気にさせたのだろう。 住職は「なるほど、ここまで知恵があるのも珍しい。 それならば……」と呟くと、足下に置いてあった長い木の棒のようなものを拾い上げそのまま優香たちのもとへ。
それを高く振り上げると、再びどこかに隠れて姿を見せていないのであろう女の霊に向かって挑発的に言い放ったのだった。
「もし出てこないというならお前が強く守ろうとしているこの2人……今からこの棒で叩いても文句はないな!!!」
「「え」」
まさか……冗談ですよね?
様子を窺うように住職を見上げると住職の顔は真剣そのもの。
優香の隣で美咲が「え、マジすか?」と尋ねるも、住職は「すまないがもしかしたら痛みに耐えてもらうかもしれない」とあっさり答えた。
「ちょ、えええええええええ!?!? 住職さんー!?!?」
「寺田くんのお父さんーー!?!?」
2人の冗談であってほしいと言う望みも虚しく住職の振り上げた棒が勢いよく2人のもとへ振り下ろされる。
「「!!!!」」
このままでは本当に痛い思いを……アザとかも出来てしまうかもしれない。
2人は痛みに耐えるため反射的に目を瞑ったのだがそれとほぼ同時……聞き覚えのあるあの声が部屋中に響き渡ったのだった。
『クヒヒ』
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