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529 【共通】特別編・ずっと起きてた結果


 五百二十九話  【共通】特別編・ずっと起きてた結果



 翌朝・優香の部屋。

 昨日のダイキによる『ちなみにお姉ちゃんたちはさ、1度も見たことないの? 黒い髪で白い服着た「クヒヒ」って笑う女の人』の発言によりあまりの恐怖から一睡も出来ず。



 ーー……絶対に以前2人でお化け屋敷リベンジした時に背後にいたアレだ。



 心当たり満載の2人はダイキを間に挟み、まるで抱き枕のように抱きしめながら気づけば朝を迎えていた。



「あー……ダメだ、アタシ全然眠れんかった。 学校行きたくねー」



 カーテンを開けた美咲が朝の日差しに照らされながらポツリと呟く。



「奇遇だね美咲。 私も全然眠れなかった」


「ゆーちゃんもかー。 とりあえず今日はあんま喋った記憶……ってか顔を見たことすらないけど寺田くんってとこ行くべ?」


「うん、そうしよ」


「おけ、んじゃ準備するぜー」


「うん。 じゃあ私は美咲が用意してる間にぱぱっと朝ごはん先に作ってくるよ」



 こうして優香は先にベッドから降りてキッチンへ。

 美咲も未だベッドの上で固まったままのダイキに「ダイキは眠れた? ……わけないか。 ごめんなーアタシらのせいでこんなにさせちゃってー」ととある箇所を指でピンと弾いて洗面所へと向かい、準備を済ませていったのだった。



 もちろんダイキがその後ベッドで朝から大興奮していたことなど朝の2人は知らない。



 ◆◇◆◇



 学校へと到着した2人は早速今まであまり面識のなかった、別クラスの寺田という男子のもとへ。

 共通の友人に頼み呼んできてもらうと、そのなんとも想像とはかけ離れていた見た目に優香と美咲は言葉を詰まらせた。



「えっと……キミが寺田くん?」



 優香の問いかけに教室から出てきた男子……寺田は「そうだよ」と頷く。



「え、なんで? どうしたの福田さんも星さんも。 そんなキョトンとして」


「いや、なんというか……ねぇ美咲」


「うん。 寺の息子くんって聞いてたから絶対髪型ボウズじゃんとか思ってたのにさ、めっさ茶髪やん」



 2人の前に現れた寺田の見た目。 それはあの誠実そうな手紙やお寺の息子といったイメージからはかけ離れた……いわゆる少しチャラチャラ系をした外見だったのだ。



「そんなに驚くことかな」


「うん。 めちゃくちゃギャップあるよ。 なんで茶髪……お寺の息子さんでも許されるんだね」


「まぁね。 だって僕お寺の出身ってだけでお坊さんじゃないし」



「「たしかに」」



 とはいえこの寺田、思っていたよりも話しやすそうな雰囲気……これもお寺出身ということで落ち着きがあるということなのだろうか。

 1時間目の授業まであまり時間もなかったため2人はすぐに昨日の手紙の話題へ。

 とりあえず昨夜ダイキに言われた見た目……【黒い髪で白い服を着た人】なのかを尋ねることにしたのだが……



「そうだよ。 よく分かったね。 え、福田さんたちって知り合いに視える人いるの?」



「「!!!!!」」



 寺田の反応・返答を聞いた優香と美咲は同じタイミングで顔を合わせる。



「み、美咲ぃ……」


「だべ、やっぱダイキの言ってたこと本当だったんだ」


「え、てことはダイキってもしかして視える子だったってこと?」


「あー、あるかもしれないね。 だってさ、よく聞かない? 臨死体験した人ってそういうのに目覚めることあるって」


「でもだったら私だって臨死体験したんだけど……」


「うん。 ゆーちゃんは選ばれなかった人間だったってことだねぇ」


「ーー……美咲、なんかそれちょっと悲しくなる」



 その後大した話は聞けずにチャイムが鳴り、優香と美咲は一旦寺田のクラスからは退散。

 解散時に連絡先だけ教えておいたので休み時間にスマートフォンを確認すると、先ほどの寺田からのメールが届いていた。



【受信・寺田くん】朝はあまり話せなかったけど、僕に分かることって実際ほとんどないんだ。 だからお父さんに話した方が色々知ったり解決するには一番手っ取り早いよ。 もし今日来れるなら話通しておくけどどうする?



 優香はこの届いたメールの内容をすぐに美咲に報告。

 話し合った結果、もしヤバめな幽霊だったら早急に対処した方がいいとのことで本日お邪魔することを寺田にメールを送信をしたのだった。



 ◆◇◆◇



 しかし昼休み。



「ーー……ねぇゆーちゃん、やっぱ別日に変更とか無理かな」



 一体どうしたというのだろうか。 今まで行く気満々だった美咲が急に体をモゾモゾとさせながら優香の席へ。 優香の隣にしゃがみ込むと、腕を引っ張りながら上目遣いで見上げてくる。



「ええ? でももう行くってメール送っちゃったし……予定でもあった?」


「うんにゃ、そういうことじゃないんだけどさ……」



 美咲はおもむろに腕を組むと、「ンーー、どうしたものか」と唸っている。



 もしかしてあれだろうか……よくお祓いとかしてもらう日に限って、中に入っている幽霊が抵抗して本人に行く気にさせないようにしているとかそういうものなのだろうか。

 だとしたら無理やり引っ張ってでも連れて行かなければならない。 でも今朝、寺田くんには『今もいるよ』的なことは言われなかったはずなんだけどなぁ……。



 そんなことを思いながらも優香は「とりあえずお寺の住所は寺田くんから教えてもらってるし、放課後一緒に行くよ」と美咲を説得。

 すると美咲は「ちょっとゆーちゃん、耳かして」と優香の耳に顔を近づけ、ゆっくりと口を開いた。



「あのさ、寺田くんのお父さん、視えるしそういう力を持ってる人って言ってたじゃん?」


「そうだね。 だからこそ相談しに……」



「てことはさ、透視……とか、できるんかな」



 ーー……。



「は?」



 まさに想像の斜め上。 優香は頭上にはてなマークを浮かばせながらも一体何を言っているんだという表情を美咲に向ける。

 そしてどうしてそんなことが気になるのかを尋ねてみたのだが……



「ここ教室だしあんまおっきな声で言えないんだけどさ、アタシ今、ノーブラノーパンなんよ。 だから透視なんかされちゃったらアタシ……そりゃあもうスッポンポンなわけ。 これヤバいよな」


「ーー……え、えええええええええ!?!?!!?」



 優香はすぐに美咲の上着……胸元に視線を向ける。


 確かにあまり気に留めてなかったのだが、言われてみれば本来若干透けて見えているはずのブラジャーのシルエットが見当たらない。 それに注意深く見つめていると、何かはわからないが膨らみの中心に小さな突起も。



「え、美咲……マジじゃん」


「そーだよ。 だから言ったべ」



 美咲は「ほら、分かる?」胸を張り始める。



「いやいや、そこまでしなくても分かるから! てか近くに男子いるんだしやめなー!?」



 優香は焦りつつも普通を装いながら周囲を見渡すことに。

 幸い誰にも聞かれていないっぽい……安心した優香はホッとため息をつくと、改めて美咲の方に視線を向けた。



「ていうか美咲、着けてないし履いてないのは分かったからさ、じゃあその座り方も危険じゃない? 角度によっては見えるんじゃ……」


「んー、大丈夫っしょ脚開かなければ。 てか思ったんだけどさ、やっぱ夏でもノーパンでイスに座るときはヒンヤリすんね。 それに立つときは変に捲れてないかとかドキドキするわ」


「今はそういう問題じゃないよね!?」



 しかしやはりと言うべきか、流石は三大欲求の一つでもある性欲……いや、下ネタの力。 その話題性は効果絶大のようで、2人はしばらくの間幽霊の恐怖など忘れて下着の話に。

 お寺行く前に下着を買って着けてから行くことになったのだが、どんな柄・見た目にしようかという話で盛り上がっていたのだった。



「ーー……でもさ美咲、なんで履いてないの? 昨日の夜洗濯して干してたし……乾いてたよね?」


「だってあれダイキにあげたもん」


「え……えええええ!?!? なんで!?!?」


「だってアタシらのせいでダイキ、昨日の夜はずっと起きてたんだべ? そのくらいのお礼してもいいでしょうよ」


「まぁ……確かにね。 それなら仕方のないこと……」


「だべ?」


「ていうか美咲、さっきの『ダイキが夜ずっと起きてた』って……どっちが?」



 そう尋ねるとどうだろう、美咲は目をまん丸にしながら優香に「え、どゆことゆーちゃん」と逆に尋ね返してくる。



「え? ーー……あ、そういうことか。 ご、ごめんね美咲、今の忘れて」


「んん?」



 2人の周りを流れる静寂。

 しかしその意味をやっと理解したのか美咲は口元に手を当てながらニヤニヤとした顔で優香を見つめだした。



「やーん!! ゆーちゃんのえっちぃー!!!」


「美咲ーー!!!!!」

 



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[良い点] まさかの……第二のエマちゃんか!? ダイキもらいすぎだぜ!! さて、寺田くんはどんな人なのだろうなぁ。
[一言] 両方に決まってるんだよなぁ。 このむったりJK
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