528 【共通】特別編・放課後の手紙
五百二十八話 【共通】特別編・放課後の手紙
2学期が始まってしばらく。
放課後、高校2年生になった優香が家に帰ろうと上履きを脱ぎながら靴箱に入れていた革靴手をかけると、中からなにやら白い封筒が顔を覗かせていた。
「え」
少し鼓動を乱しながらもそれを手に取る優香。
おもて面には明らかに男の子が書いたのであろう筆跡・筆圧で『福田さんへ』と書かれている。
これはもしかして……いや、もしかしなくても絶対にあれだろう。 そう確信した優香はすぐに周囲を見渡して誰も見ていないことを確認。 すぐにそれをポケットにしまい込んだ。
一体誰だろう。
本当は今すぐにでも中身を読みたいところなのだが、あいにく今は絶賛下校タイム。
ここで堂々と開けて目を通していては確実にバレてしまう。
優香は高鳴る気持ちを抑えながらも若干駆け足で学校をあとに。 その後帰り道で知ってる人がいないことを確認していざ中身を開けてみたのだが……
===
福田優香さんへ
突然のお手紙すみません。
僕は寺田といいます。
単刀直入に言いますと、僕の家は代々お寺の住職をやっていて少なからず霊感を持ち合わせているんですが、たまにですが福田さんの後ろに女の人の影が見えることがあります。
悪い気は感じないので害は今の所ないとは思いますが、僕のお父さんは僕よりも力を持っているため早めに相談しにきたほうがいいと思いこの手紙を書かせてもらいました。
ちなみにその霊は星美咲さんに憑いてる時もあるので一応同じ手紙を送ってます。
もしこれを読んで怖い思いをさせてしまったらすみません。
いつでも相談お待ちしております。
寺田
===
「ええええええええええええええ!?!???!」
◆◇◆◇
その日の夜。
もちろん同じ手紙を送られていた友人が泊まりに来ているわけで……
「ゆーちゃん、あれからアタシ、ずっと誰かに見られてる気配して怖すぎるんダヨ」
恐怖でガタガタと震えた友人・星美咲が同じ食卓を囲みながら優香の隣にぴったりとくっつく。
「美咲も? 私も実はそう……あれ読んでからずっと監視されてる感じしててさ。 さっきご飯作ってた時も熱い視線感じてたもん」
そう話すとなぜだろう……向かいに座っていた弟のダイキがガタンと体を反応させる。
「ん? どうしたのダイキ」
「え、あ……いや」
ダイキの様子がおかしい。
その違和感は美咲も気づいたようで、「え、ダイキ、何か知ってんの?」と優香よりも先に尋ねだした。
「いや、別にオレは何も……」
「そういやご飯食べながらアタシとゆーちゃんオバケの話してたのにさ、ダイキってば全然怖がってなかったよね」
「うん、まぁ……」
「なんで?」
「いや、それはオレもなんとも……」
「仕方ないな、教えてくれたら一緒にお風呂入ったる」
「はい。 とりあえず言えることなんですが、お姉ちゃんの料理中に熱い視線送ってたのオレです」
ダイキがまるで土下座をするかのように頭を下げ、机におでこをくっつける。
「「え」」
「お姉ちゃんの襟元からブラジャーの紐が見えてたので興奮してずっと見ておりましたすみません」
ーー……!!
慌てて襟元を確認すると確かに本日のブラジャー……ピンク色の肩紐がズレて右から僅かにはみ出ている。
「え、ダイキ……それだけで? 確かにお姉ちゃんちょっとは恥ずかしいけど……紐が出てただけだよ? パンツじゃないんだよ?」
「はい。 それでも見れたら嬉しいです」
男の子ってほんとどこで興奮するのか分からない生き物だなぁ。
そんなことを考えながらもひとまずは自分の感じた視線が弟のものであったことに優香は一安心。
「もしかしたら美咲も誰かに憧れの視線を向けられてただけじゃない?」とその場は笑いに変えなんとか乗り切ったのだが……
結局はオバケに関する証言ではなかったためダイキは1人でお風呂に入ることに。
「じゃあごめんだけど先に入ってくる」とダイキが少し残念そうに背中で語りながらリビングを出ていく。
「うん、お湯熱かったら水で冷ましていいからね」
「ダイキー、いてらー」
それから優香と美咲は後片付けを開始。
「やっぱりあの寺田くんからの手紙、私たちを驚かすためだったのかなー」などと話しながらお皿をキッチンへと運んでいると、リビングの扉からダイキが顔を覗かせて「あのさ……」と声をかけてくる。
「うん? なにダイキ」
「お風呂一緒はおあずけだベー?」
おそらくは「一緒に入りたい」もしくは「シャンプーが切れてる」。 そんなものだろうと思っていた優香だったのだが、ダイキの口から発せられた言葉に優香と美咲……2人は言葉を失ったのだった。
「ちなみにお姉ちゃんたちはさ、1度も見たことないの?」
「え」
「なにをー?」
「黒い髪で白い服着た『クヒヒ』って笑う女の人』
「「!?!?!?!??!?」」
それを聞いた途端、2人は以前お化け屋敷リベンジした際に背後に感じた何かがいたことを脳裏に思い浮かべる。
「ゆ、ゆーちゃん。 クヒヒってまさか」
「う、うん。 多分美咲が言いたいこと……私も思ってる」
そんなことを聞いてしまってはもはや後片付けどころではない。
2人は素早くダイキのもとへ駆け寄るとその手を引っ張りながら脱衣所へ……3人揃ってお風呂に入ることにしたのだった。
お読みいただきましてありがとうございます!!毎度おなじみの共通ルートいきます!!
そういや優香視点ってやったことなかったですね 笑
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